廃棄物焼却におけるストロンチウムの挙動と溶出特性
掲載誌 : 環境放射能除染学会誌, Journal of the Society for Remediation of Radioactive Contamination in the Environment, 12(3):79-90 (2024)
国立環境研究所は、2011年の東日本大震災の直後から、津波被害に伴う災害廃棄物の処理や、福島第一原発事故に伴う放射性物質の動態解明や汚染廃棄物の処理といった課題に取り組んだほか、比較的早い時期から、被災地の復興まちづくりを支援する研究も進めてきました。
こうした研究をさらに進めるため、当研究所は、2016年4月、福島県三春町の環境創造センター内に初めての地方組織として福島支部を開設し、同センターに拠点を置く、福島県環境創造センター、日本原子力研究開発機構(JAEA)と連携し、調査研究を行ってまいりました。そして、2021年4月に、福島支部を「福島地域協働研究拠点」(以下、「福島拠点」という。)と改称しました。
福島拠点では、「災害環境研究」を、つくば本部とも連携しつつ進めています。具体的には、放射性物質に汚染された廃棄物の管理・処理に関する研究、環境中の放射性物質のモニタリング・環境動態・生物生態系への影響に関する研究、被災地における環境に配慮した復興まちづくりに関する研究、東日本大震災等のこれまでの災害の経験に基づき将来の災害に環境面から備えるための研究などに取り組んでいます。
また、環境創造センターに拠点を置く3機関は、未来志向の環境施策を進め、福島の復興・創生の礎となる研究課題に取り組むため、連携強化を進めています。
福島拠点では、開設以来、汚染廃棄物の適正処理などの環境回復に向けた取組への貢献、地元自治体と連携した復興まちづくりの支援など、研究成果に基づく社会実装、社会貢献の面でも、大きな成果を上げてきました。今後は、地域のステークホルダーの皆様との連携・協働を一層進め、被災地の環境回復と地域環境の創生を支援するとともに、将来起こりうる災害に備えた地域づくりにも貢献してまいります。引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。
国立環境研究所では、長年にわたり培ってきた環境研究の蓄積をもとに、2011年3月の東日本大震災の発生直後から国や地方自治体と連携・協働して、様々な被災地支援の災害環境研究を行ってきました。このような災害環境研究を、被災地に根ざして力強く継続的に進めるため、2016年4月に、福島県三春町に整備された福島県環境創造センターの研究棟内に福島支部を開設し、地域の拠点として、福島県や日本原子力研究開発機構をはじめとする関連機関、様々な関係者と力を合わせて、被災地の環境回復と環境創生に向けた災害環境研究に取り組んできました。第5期中長期計画では、「地域協働」をキーワードとした研究活動をさらに進めていきます。福島をフィールドとした主な研究の取組として、災害環境研究プログラムにおいて、これまでに取り組んできた放射能汚染からの環境の回復や環境の創生に関する研究をさらに進展かつ融合させ、避難指示解除区域を中心とした地域の生活環境リスクの軽減や環境に配慮した復興に資する成果を生み出すことを目指します。さらに、阿武隈川水系を対象に、気候変動により頻発化の恐れがある水土砂災害に対する生態系機能を活用した適応策の構築や、人口減少が著しい中山間地域である奥会津地方を対象に、地域資源の利活用に基づいた地域循環共生圏の構築に向けた研究を展開していきます。我々は、これら取組や成果を地域の多様なステークホルダーに向けて発信するだけでなく、彼らが集う対話の場を創出し、そこから新たな協働研究を展開させていきます。さらには、その成果も活用しながら、様々な地域の環境問題の克服に向けたステークホルダー間の目標の共有化とその解決に向けた具体的な取組の実施に対する支援を行っていきます。それら取組を通じて、今後、地域との連携した活動の強化を目指す国立環境研究所において、先導的な役割を担っていきたいと考えています。