多機能の複合施設
質量分析計、標準ガス較正室、加速器質量分析設備、有害化学物質関係実験室、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の観測データを処理し、データの保存・解析・提供を行うための計算機施設、気象衛星NOAA管理・受信関連施設、ミリ波解析関連施設、GRID情報解析室、太陽電池、太陽熱給湯装置など多様な機能を有しています。
大気の光化学反応
大気中に放出された窒素酸化物、炭化水素などさまざまなガス状汚染物質が太陽光の作用を受けて光化学反応を起こして変化する過程を調べます。例えば、光化学スモッグに伴ってオキシダントが生成する機構、フロンやハロンが成層圏オゾンを破壊する機構などの研究に用いられます。
成層圏オゾンの観測
1988年に導入されたオゾンレーザーレーダーは、レーザーと望遠鏡を用いて、高度15km~45kmまでの成層圏オゾン濃度の鉛直分布を測定する装置です。成層圏変化検出のための国際的な観測ネットワークの一環として、北極、ヨーロッパ、アメリカ、ニュージーランド、南極などにある各国のレーダーと協力し、地球規模のモニタリングを行っています。
環境保全と遺伝
生物の生存は周囲の環境からの情報と自分自身の遺伝子の働きのバランスによって調節されています。遺伝子の構造や働きを調べると、 私たち人を含めて周囲の環境から受けている影響に関する情報を得ることができます。遺伝子を調べたり利用することによって、環境保全に役立つ 情報を得たり、環境保全に有効な生物を作り出すことが出来ます。
水質改善手法等を開発する目的で大量培養装置・水処理実験装置が設置され、有害汚染物質が水生生物へ与える影響およびその評価手法を研究する目的で毒性試験装置が設置されています。さらに、水生生物の飼育・培養、系統保存が行える人工環境室、培養室が設けられています。
健康への影響
大気や水や食品等に含まれる環境汚染物質が人体に与える影響を調べるため、実験動物を使った研究が行われています。環境中に存在する汚染物質が、人間に起きているような病気を現実に引き起こすのかどうか、またそのリスクはどうか等について、動物個体から組織や培養細胞を使う手法で実験しています。
汚染物質の土壌影響
重金属や有害な化学物質は、土壌にも大きな影響を与えます。図のようなライシメータと呼ばれる施設に自然の土壌環境を再現し、土壌に浸透した汚染物質が、土壌中でどのような動きをするか、また土壌生態系にどのような影響を与えるかを研究しています。
植物の機能と環境
中国や東南アジアには、色々な面白い機能をもった植物が生育しています。これらの植物がどのような機能をもち、地球環境の変化に対してどのような影響を受けるかについて調べています。また、バイオテクノロジーを駆使し、環境の指標となる植物や、環境の改善に役に立つ植物についての研究も行っています。
環境の健康科学研究
生理実験室や脳波計やポリグラフと呼ばれる人の心理生理測定機器を備え、騒音、電磁界、光・温度環境等による影響研究、環境ストレスとその睡眠への影響あるいは環境の快適さの評価に関する神経・生理・内分泌系機能の検査法の開発等を行っているほか、それらを用いた各種疫学調査を行っています。
植物種の保存
熱帯林の消失や北米、ヨーロッパにおける酸性雨による森林の枯損が地球環境問題として重視されています。日本においても酸性雨による森林被害が発生しているとの報告も出てきています。このような研究を行うには、数多くの植物種を保存して、必要な時に供給できる態勢をとっておくことが必要です。生態系研究フィールドでは、このような目的のために、様々な植物種を栽培し保存しています。
地球温暖化防止京都会議で合意された削減目標を実質的に達成するために、その評価手法等を科学的に検証することが求められています。研究所内に新たに設置した地球温暖化研究棟においては、二酸化炭素のシンク、吸収・排出源の解明と評価、地球環境研究のさらなる強化、低公害車の評価について最新の研究設備を導入し、これを中心とした研究業務並びにセンター機能を強化していきます。 写真:地球温暖化研究棟
大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会から、天然資源の消費が少なく、環境への負荷が小さい循環型社会への転換を図ることが、21世紀を生きる私たちに課せられた重要な課題となっています。2002年3月に竣工した循環・廃棄物研究棟では、循環型社会への転換を支援するために、最新のプラント実験設備や分析機器等を導入し、循環型社会の評価手法や基盤システムの整備、廃棄物の資源化・処理処分技術やシステムの開発、有害物質によるリスクの総合的な制御手法などに関する研究を推進しています。
自動車から排出される粒子状物質に起因する大気汚染が都市部を中心に依然厳しい状況にあります。特にディーゼル車の排ガスに含まれる超微小粒子(いわゆるナノ粒子)による健康影響が懸念されており、この分野の影響研究をさらに進める必要があります。ナノ粒子健康影響実験施設は、最新の曝露装置を備えた最高レベルの動物実験施設として従来の動物実験棟の一部を撤去し新設しました。
環境汚染物質の長期的トレンドを調べたり、新たな汚染が明らかになった際に過去の検証を行うなどのために、環境研究を進めていく上で、環境試料や生物標本といった知的研究基盤の戦略的、体系的な整備が必要とされています。このため、環境試料を保存する中核施設として環境試料タイムカプセル棟を設置して、土壌や大気粉塵などの環境試料や絶滅のおそれのある野生生物の細胞及び遺伝子を長期的に保存し、環境研究知的基盤を整備していきます。
富栄養化などの環境問題、環境改善、環境保全に関連した微生物に関する研究をさらに進めるために、環境微生物の凍結保存、稀少藻類種の系統保存、分類学的研究、機能評価、情報ネットワークの構築に関する研究等を行います。また、従来、微生物系統保存棟で行っていた環境微生物の系統保存と提供事業を統合し、研究所内外の研究者に培養株やデータの提供を行います。