化学物質生態影響評価モデル(A-TERAM)|データベース/ツール|国立環境研究所
ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

化学物質生態影響評価モデル(A-TERAM)

  ダウンロードページ

食物連鎖の生態学モデルを利用して化学物質の生態リスクを高精度化する

水系3栄養段階生態リスク評価モデル
Aquatic Tri-trophic Ecological Risk Assessment Model (A-TERAM)

 化学物質の生態系への影響は、藻類(植物プランクトン)、ミジンコ、魚(メダカなど)の3栄養段階の代表的な水生生物種を使った生態毒性試験で測られています。A-TERAMは、これらの生物種の野外における生活史、種間の相互作用等の生態学的な要因をモデルの中に取り入れることにより、生態系への影響をより正確に評価することを目指しています。

A-TERAM の特徴

生態学的な妥当性 ‐生物の種間の関係や生活史の違いを生態リスク評価に反映

 実際の自然生態系では、生物はそれぞれの役割を担いながら生きています。例えば湖や池などの水系の生態系では、藻類(植物プランクトン)は光合成による有機物の生産を、ミジンコなどの1次消費者は生産者を摂食し、自らは捕食者の餌となることによって生態系内の物質循環を支えます。このように栄養段階の違う生物は、生態系における役割が大きく異なり、それぞれの種の個体群に対する影響が同じでも、生態系全体に対する影響は異なると考えられます。
 また、これらの3栄養段階にある代表種は、藻類(植物)、節足動物甲殻類、脊椎動物硬骨魚類という生物の系統も大きく離れていることから、繁殖様式や成長速度、寿命などの生活史特性が大きく異なります。したがって、化学物質の生態毒性を繁殖阻害等の同じエンドポイントで評価したとしても、種の個体群に与える影響を同じ基準で評価していることにはなりません。A-TERAM は、このような生物の生活史の違いや生態系における役割の違いを考慮することによって、化学物質の生態影響の管理原則がどう再検討できるかを目的に開発されました。
 

実用性 -広範囲な化学物質の生態毒性データに適用可能

 A-TERAM は,淡水生態系を保護対象として定められたOECDテストガイドラインに準拠する生態毒性データの多くを利用することができます。その一方、3栄養段階(各栄養段階で1種)から得られた基礎的生態毒性データと曝露情報のみから生態影響を評価できます。A-TERAMに最低必要な生態毒性データは、魚類急性毒性(半数致死濃度LC50)、ミジンコ急性遊泳阻害(50%影響濃度EC50)、藻類増殖阻害(無影響濃度NOECもしくは50%影響濃度EC50)の3種類です。この他に、魚類成長阻害(NOEC)、魚類繁殖阻害(NOEC)、ミジンコ繁殖阻害(NOEC)の毒性値を入力することができます。
 入力可能な生態毒性情報は、次のOECDテストガイドライン(TG)に準拠した生態毒性試験の結果を含みます。魚類急性毒性:TG203、魚類成長阻害:TG210、魚類繁殖阻害:TG229、ミジンコ急性遊泳阻害:TG202、ミジンコ繁殖阻害:TG211、藻類増殖阻害:TG201。これらの生態毒性情報は、淡水生態系を対象とした一般的な生態毒性情報をほぼ網羅しています。