- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1921CD010
- 開始/終了年度
- 2019~2021年
- キーワード(日本語)
- ストロンチウム同位体,カルシウム供給源,火山灰,植物,渓流水
- キーワード(英語)
- strontium isotopes,calcium sources,volcanic ash,plants,streamwaters
研究概要
本研究の目的は、火山灰の混入程度と地質が異なる複数の地域において、森林の植物のストロンチウム(Sr)同位体比を分析することにより、火山灰が植物へカルシウム(Ca)を供給する機能の重要性と普遍性を示すことである。そのために、火山灰起源Caの影響を強く受ける指標植物の選定、渓流水と植物のSr同位体比を比較して植物への火山灰寄与を評価する簡易推定法の開発、火山灰起源Ca指標植物の広域調査を実施する。その結果に基づいて、日本の森林土壌には数万年前に降下した火山灰が土壌に含まれており、火山灰からの栄養供給によって、どのような地質の地域でも豊かな森林が維持されている、という自然観を提示することを目指す。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
本研究では、火山灰が植物へCaを供給する機能の重要性と普遍性を明らかにするために、3つのサブテーマを実施する。
サブテーマ1)火山灰起源Ca指標植物の選定(2019〜2020年度)これまでの研究で、渓流水中Caへの火山灰寄与が、チャート集水域では強く、砂岩集水域では弱く現れることがわかっている栃木県雨巻山において、様々な植物のSr同位体比を分析し、植物に火山灰寄与が現れることを確かめる。日本国内に広く分布しており他の地域での研究に応用可能な植物、かつ根の深さが異なっている植物として、アオキ・ササ・スギ・ヒノキ・コナラなどを予定している。根の深さに注目するのは、土壌の表層(A層)に近いほど大気降下物の影響が強く、土壌の深部(C層)に近いほど基盤岩の影響が強く、ちょうどよい深度(B層)で火山灰の影響が強いと予想されるからである。それを確かめるために、土壌の深度別の試料も分析する。
サブテーマ2)火山灰寄与の簡易推定法の開発(2020年度)基盤岩と大気降下物のSr同位体比が未知の地域において植物への火山灰寄与を推定する手段として、渓流水と植物のSr同位体比を比較して植物への火山灰寄与を評価する簡易推定法を、雨巻山におけるデータを用いて開発する。植物が吸収している土壌溶液が火山灰・基盤岩・大気降下物に由来するCaを含んでおり、基盤岩と長期間接触した地下水が土壌溶液と混合したものが渓流水である、という前提が成立する場合、この手法は原理的に可能であると期待できる。少なくとも、Sr同位体比が基盤岩>大気降下物>渓流水>植物 ≥ 火山灰の場合、植物に火山灰の寄与があることは明らかであることを示す。
サブテーマ3)火山灰起源Ca指標植物の広域調査(2020〜2021年度)サブテーマ1と2で雨巻山のデータを用いて検討した、火山灰起源Ca指標植物と火山灰寄与の簡易推定法を用いて、赤城火山灰が降下した地域で広域調査を行う。具体的には、火山灰量と地質が異なる多地点で植物と渓流水を採取し、Sr同位体比を分析する。主な調査地は、これまでに申請者らが人家や事業所の排水などの直接影響がない地点を選んで土壌と渓流水の窒素循環観測を行ってきた栃木県鹿沼と茨城県筑波山を予定している。さらに、火山灰がより多い地域(赤城山と鹿沼の間)および、より少ない地域(雨巻山と日立の間)でも補足的な観測を実施する。
今年度の研究概要
2019年度は、サブテーマ1)火山灰起源Ca指標植物の選定に取り組む。これまでの研究で、渓流水中Caへの火山灰寄与が、チャート集水域では強く、砂岩集水域では弱く現れることがわかっている栃木県雨巻山において、様々な植物のSr同位体比を分析し、植物に火山灰寄与が現れることを確かめる。日本国内に広く分布しており他の地域での研究に応用可能な植物、かつ根の深さが異なっている植物として、アオキ・ササ・スギ・ヒノキ・コナラなどを予定している。根の深さに注目するのは、土壌の表層(A層)に近いほど大気降下物の影響が強く、土壌の深部(C層)に近いほど基盤岩の影響が強く、ちょうどよい深度(B層)で火山灰の影響が強いと予想されるからである。それを確かめるために、土壌の深度別の試料も分析する。
外部との連携
総合地球環境学研究所
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