アドベントカレンダーに関するアレコレ、QiitaアドベントカレンダーとAdventarの中の人に聞きました。 - Qiita Zine

アドベントカレンダーに関するアレコレ、QiitaアドベントカレンダーとAdventarの中の人に聞きました。

アドベントカレンダーに関するアレコレ、QiitaアドベントカレンダーとAdventarの中の人に聞きました。
左から大和田氏、外村氏、東峰です。

IncrementsではQiitaアドベントカレンダー(以降 Qiita)というサービスを展開しています。このサービスは、アドベントカレンダーの習慣(※)にもとづいて、毎年12月1日から25日までの期間限定で展開されるもので、今年も12月からスタートします。始まったのは2011年でちょっとした歴史があるのですが、もうひとつAdventar(アドベンター)というサービスも同時期に始まっています。

今回は12月も間近ということで、QiitaとAdventarの運営に携わる3人をお招きして、いろいろと話をうかがいました。成り立ちやユニークなカレンダーの話、活用のコツなど、思った以上に面白いエピソードが披露されることになりました!

※:アドベントカレンダーとは「クリスマスまでの期間に日数を数えるために使用されるカレンダーで、カレンダーの窓を毎日ひとつずつ開けていく」というクリスマス時期に行われる習慣のこと。詳しくはウィキペディアに掲載されています。QiitaのアドベントカレンダーとAdventarはその習慣をもとにしたWebサービスです。

文/Qiita Zine編集部


プロフィール

大和田 純
GMOペパボ所属のソフトウェアエンジニア。2013年、一時的にAdventarの開発に関わる。

外村 和仁
クックパッド所属。Adventarをはじめ、個人でWebサービスやアプリを作るのが好きなソフトウェアエンジニア。

東峰 裕之
2014年入社。Incrementsにてキータやキータチームのデザイナー兼コミュニティマネージャとして、コミュニティの活性化に従事。


ソフトウェアエンジニア最古のアドベントカレンダーは2000年? 日本では2008年?

perladvent.orgの2000年のPerlアドベントカレンダー

――編集部

今日はお集まりいただきありがとうございます。時期的にアドベントカレンダーの記事がいいかなと思いまして、取材をセッティングさせてもらいました。

――大和田

今しかありませんよね(笑)。逃すと来年のこの時期まで待たないといけません。

――編集部

はい(笑)。ぜひ、いろいろお話を聞かせてください。今回の取材にあたり事前に調べていただいている情報もあるみたいなので、そちらも参考にさせてください。

――大和田

早速なんですが、これ perladvent.org というサイトによる 2000年のPerlアドベントカレンダーです。僕が調べた限りでは、英語圏のPerlコミュニティの人たちが2000年に始めたこのカレンダーが、ソフトウェアエンジニア最古のアドベントカレンダーではないかと(笑)。

日本では2008年にJPerlのアドベントカレンダーが立ち上がっていて、同じ年か翌年の2009年から、ちょうどその頃流行りつつあったTwitterを介して、ブログを書く文化があったソフトウェアエンジニアを中心に、Perl以外のコミュニティにも広まっていったみたいです。2010年には技術評論社さんが、サイトでアドベントカレンダーの記事とATND(アテンド)のリンク集を公開しています。

――外村

Perlのエンジニアは発信することに慣れていたので、そこを中心にしてアドベントカレンダーの文化が作られた経緯があると思います。僕は以前の職場でPerlを書いてたこともあって興味を持っていたんですが、当時は本当にすごい著名なPerlのハッカーたちが25人集まって書くっていう豪勢な企画で。完全に読者として楽しんでいました(笑)。

――編集部

ちなみにAdventar(アドベンター)ができたのはいつですか?

――外村

2012年ですね。Qiitaも同じ年でしたっけ?

――東峰

うちは2011年が最初なんです。今日の取材のためにいろいろ社内のメンバーに聞いてみたんですけど、やはり外村さんと同じで海野も当時のPerl界隈からアドベントカレンダーに興味を持っていて、MVP(Minimum Viable Product:必要最小限の機能を持った製品)としてそれ専用の機能を作ったらどうか、とやってみることにしたんだそうです。

なので、カレンダーに登録するのも今みたいにユーザー側でURLを登録とかじゃなくて、海野に直接Twitterとかで連絡しなきゃいけないっていう(笑)。結果としては全然人が集まらなくて、海野と当時まだ学生だった高橋が書くことになったそうです。Backbone.js入門っていう投稿を8日連続で高橋が書いていたりするところに頑張りを感じますね(笑)。登録等の仕組みを実際に作り込んでいったのは翌年の2012年からだそうです。

――外村

本格的に始まったという意味では、2012年でAdventarと同じなんですね。2011年はATNDがよく使われていて、僕もそこでいくつかのアドベントカレンダーを実際に作ってみたんですよ。やってみると、やっぱりアドベントカレンダー専用のサービスがあると便利だなと思って、それで開発したのがAdventarです。

まあ当時は軽い気持ちで始めたというか、Railsを使ったことなかったんで、Railsの勉強も兼ねて開発してみたくらいの感じだったんですよね。そうしたらQiitaもアドベントカレンダーをリリースしたので、本当にたまたまですね。

僕は別にアドベントカレンダーのサイトを作って一発当ててやろうとかっていう気持ちは全然なくて、単純に便利にするために作ろうと思ったんです。Qiitaがアドベントカレンダーを出してくれるなら、僕はそれに乗っかって全然良かったんですけど、偶然にも一緒だったんで、現状、お互いのサービスが存在しているという感じです。

Qiitaアドベントカレンダー VS Adventar?

2012年からスタートしたAdventar。ボランティアで運営されている

――編集部

Adventarについては、それこそ無償でずっと運営し続けているっていうのは、理由があるんですか? 大変なこともあると思うんですが。

――外村

2012年に始めてみるとそれなりに使ってくれる人がいたので、来年もやろうと続けている、その繰り返しですね。大変さよりも、改善していきたいんですけど、やっぱり個人でやっているサービスなのでリソースが割けなくて、なかなか手が回らないのが悩ましいです。

最初の年は僕が一人で作っていたんですが、2013年に大和田さんと出会って、「僕も同じようなもの作りたいと思ってたんですよ」って意気投合して、一緒にやることになったんです。思い出した。2013年は「Qiitaに負けないぞ」っていう気持ちでやってて(笑)。

――大和田

そう言えば、やってた! 登録数を意識していたような。

――外村

改善については、例えばQiitaだと、カテゴリ別に分けて探しやすくなっていて、そういう機能も付けたいんですけど、Adventarはテーマがいろいろでカテゴライズも難しくて(笑)。

ただ今年はQiitaを参考に代理投稿の機能を取り入れようと思ってます。後はサーバーをAWSに乗り換えてhttpsに対応したり、ユーザーの目に見えないところを改善しています。おかげで表示速度的には5倍くらい速くなっているんじゃないでしょうか。

――東峰

我々も毎年改善はしてきているんですが、年一回なので毎年「去年は何を改善するって言ってたっけ…」みたいになるんですよね(笑)。今年の改善としては、Qiita Organizationと連携して使えるOrganizationカレンダーという機能を追加した他、分かりにくかった予約投稿の仕様を変更したりしています。

――外村

まあ2013年にはライバル心があったんですけど(笑)、もともとはQiitaに対抗する思想で設計したわけじゃないですし、技術的なテーマはQiitaに流れたので、それ以外のテーマでAdventarがあって、住み分けができたっていうのは結果的に良かったと思いますね。

――大和田

実は2014年に海野さん、高橋さんと僕たちで「全日本アドベントカレンダー協会」(笑)第1回目の会合が開かれることになり、お互いに協力しあいましょうという話をしたんですよね。2014年の6月に半年先のクリスマスの話をするという変な会だったんですが(笑)。

特にQiitaでは技術テーマから外れると掲載が難しくなるので、だったら最初から別のサービスを使ってもらうほうがいいというのがあって。

――東峰

Qiitaでは、例年11月ごろにオープンしてカレンダー作成期間を設けているんですが、テーマによっては「よかったらAdventarを使われてはどうですか?」というのをカレンダー作成者の方にメールでお伝えするようにしています。

――大和田

さすがに会社運営はちゃんとしてますね(笑)。個人じゃそれできないですよね。何でもウェルカムでやるしかない。

――東峰

でもお祭りとしてはそっちの方が面白いっていうのはありますよ。例年、このタイミングで結構幅の広い投稿がされるんですけど、僕らもそんなに厳しくしたいというつもりはなくて。Qiita外のURLを登録する機能はその辺もあって搭載していますね。全体としてアドベントカレンダーが盛り上がって、参加者も運営もハッピーに楽しめれば、というのが一番ですね。

幅広く、ディープに。日本のアドベントカレンダーはガラパゴス的に進化を遂げている!

「『日記やブログを書くのが好きな文化』が日本のアドベントカレンダーを普及していったのかもしれない」という考察も。

――編集部

今、面白さっていうのが出ていたんですが、「今年はこれに注目」とか「去年はこれが面白かった」などありますか?

――外村

年によって特徴が出るって言うことはあんまりなくて、最近は割と固定化されてきた感じがします。同窓会みたいになってる。毎年、盛況なのは「TKGアドベントカレンダー」というのがありまして、毎年、卵かけご飯について思い思いに書く(笑)。

――大和田

僕が気になっているのは「大都会岡山アドベントカレンダー」ですね。2012年から書かれてます(笑)。技術的なものでなくても、括りがよく分からないようなテーマが盛り上がる傾向にありますね。

――東峰

AdventarにはSecond Lifeのアドベントカレンダーもありますね(笑)2017年の今に……!これも2012年から続いているみたいです。本当に幅広いですよね。

――外村

幅広いですね。Adventarは割とがっつり技術的なブログをリレーするっていうのから始まったんで、そっちの使い方がメインではあるんですけど、もうちょっとライトに使ってもらえるようにしています。例えば1人で25日全部登録する使い方をされる人もいますね。

――大和田

1人でTwitterに投稿して、そのリンクを貼るみたいなのもあって、それでも全然面白いアドベントカレンダーになるんです。例えば「自分で読んで面白かった漫画アドベントカレンダー」みたいなもので、12月1日から1つずつツイートしていって、そのURLを貼る。自由で多様性があるのが面白いですね。

――外村

Qiitaだけだと多様性のあるアドベントカレンダー文化は育たなかったと思うので、謎の文化を育んできたという意味では(笑)、Adventarを作って良かったというのはあります。

――編集部

こういったアドベントカレンダーのWebサービスは、海外でもあるんですか?

――大和田

あるとは思いますが、認知度は低いと思います。海外の知り合いにAdventarやアドベントカレンダーについて話す機会があったんですけど、「それはなんぞや」というところから説明しました。日本独特の文化ではないでしょうか。

――外村

もともとはPerlのアドベントカレンダーから始まったはずですが、海外ではそのPerlのアドベントカレンダーくらいしか認知されていないので、日本のアドベントカレンダーは謎の進化をガラパゴス的に遂げているんです(笑)。だから海外の人にアドベントカレンダーのWebサービスと言っても多分通じないと思います。Perl界隈の人たちは通じるかもしれないですけど。

――編集部

日本独自なんですか! それは知りませんでした。なぜ日本で広まったんでしょうか?

――外村

作ったときにはもう定着してましたよね。

――東峰

すでに下地はあったんですよね。それをQiitaやAdventarがブーストしていったって感じでしょうか。日本人はもともと日記やブログを書くのが好きな印象はあるので、その文化が影響しているのかも。

アウトプットの場として、お祭り的に楽しむ場として、利用して欲しい

「お祭り感あるイベントなので、書いて、読んで、参加して楽しんでください!」とメッセージをいただきました!

――東峰

Qiita自体もそうなんですけど、何かを学習する手段としてアウトプットする人はやっぱりいて、特にアドベントカレンダーの時期だと、お祭り感を利用しながら自分を追い詰めて「やっていくぞ」みたいな使い方をする人もいるのかなあって思います。

――大和田

アウトプットのチャンスというのは確かにありますね。実績作りにもなりますし、書く内容が決まってなくても、内容を考えることそのものが学びになります。先ほどQiitaを企業で使うという話が出ていましたけど、僕の勤めている会社でも利用していて、今年は勢いのある若手が一気に登録してくれました。頼もしいです(笑)。若手が盛り上げてくれるっていうのはいいですよね。

余談なんですけど、クリスマスかクリスマスイブに登録していたエンジニアが「その日に僕の投稿があったら年内の恋愛は失敗したと思ってください。記事の更新がなかったらおめでとうと言って欲しい」って(笑)。若手でクリスマスがからむとそういった話もあって面白いですよ。

――東峰

そうやって一気に埋まるのは凄いですね。会社でやる場合、「登録したから書いてね」では、なかなか続かないんですよね。うまくいっているところは、書く人が決まったらそれを周りがサポートするような仕組みがあったり、文化として定着させようと努力されているところが多いイメージがあります。。

なので、年1回でこのタイミングだからやってみる、というきっかけになるのはいいみたいですね。こういう季節イベントのあるWebサービスって面白いなと思いますね。

――編集部

成り立ちやユニークなカレンダーの話、仕組みとして回すなど、思ったより幅広くて深い話が聞けてとても面白いです(笑)。そろそろお時間なので最後になりますが、これまでやってきての気付きとか、この記事を読んでアドベントカレンダーに興味を持っている方へのメッセージなどお願いします。

――東峰

ネットって「いつでも、どこでも利用できる」っていう便利さがあるんですけど、一方でテレビ見ながらTwitterに書き込みするというような、何かに乗っかって同期的に盛り上がる面白さもあるんですよね。アドベントカレンダーも「この時期にやるから書く」というところがあって、すごく社会を見ているようで興味深いです。

――大和田

純粋になくなって欲しくないですね。何年後かになくなったらすごく寂しいと思います。大都会岡山はずっと続いて欲しい(笑)。個人的な体験では、知り合いに高専の先生がいるので、高専ティーチャーズっていうアドベントカレンダーを作ってみたら、北海道から沖縄まで、全然つながりのない高専の先生たちから全国の高専生へメッセージをもらえて、先生方も面白いねって言って連絡くれる方もいて、とても嬉しかったです。アドベントカレンダーはコミュニティとの関係ってやっぱり大事です。

――外村

この記事見てやってみようと思った方は、ぜひ登録してください。気軽に書けるネタがありますよ。自分に何が書けるんだろうって考えるきっかけにもなりますし。

――東峰

Qiitaも一緒ですね。職業プログラマーだけじゃなくて、趣味でプログラミングしている方もいいですし、何か興味ありそうなものがあればぜひ。Qiitaに投稿してみたいけど、やっぱり書くことがないと尻込みしている人も、この機会に書いてみて欲しいです。もちろん、読む側にとっても楽しいのが良い企画なので、気になるカレンダーを購読するだけでも。

――大和田

「書いて初めて分かること」っていうのは確かにあって、自転車乗るみたいなものなんですよね。乗り方の本を読んでもその実際は分からないけど、やってみるとできるようになるみたいな。「とにかく1回やってみる」というのがお勧めです。

――東峰

この記事もそういう気持ちで企画したんですけど、お祭り感あるイベントなのでとにかくワイワイやっていきたいです。

――外村

ですよね。他の国でも広まるような逆輸入を仕掛けたいですね(笑)。dev.toで書けばいけるかもしれない。

――東峰

いいですね(笑)日本にはこういうイベントあるけどそっちはどう?みたいな。

――大和田

QiitaとAdventarでブログ文化に花を添えましょう!

――編集部

ありがとうございます。多くの方に興味を持って欲しいですね。この記事をご覧の方はぜひ、書いたり読んだりして楽しんでください!皆さん、本日はお忙しいところ、いろいろとお話を聞かせてもらってありがとうございました。

QiitaとAdventarではアドベントカレンダーを盛り上げてくれる皆さんの参加をお待ちしています。

アドベントカレンダーは読むだけでも楽しめます。いきなり記事を書くのはハードル高いけれど参加してみたいという方は、気になるカレンダーをチェックしておくといいですよ👍

もちろん、アドベントカレンダーを書いていただける方についてもまだまだ間に合います!アドベントカレンダーへの参加はコチラです。

Qiitaのアドベントカレンダーについては、募集のブログ記事がありますので、↓コチラも合わせて御覧ください。

qiita adventCalendar2017


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