前人未到のWeb3領域。共に開拓し、挑戦し続ける「戦友」-株式会社Ginco
弁護士
長野 友法
弁護士、パブリック・アフェアーズ部門統括
官澤 康平
組織課題を解決するツールを提供し、イノベーションを起こしているBeatrust株式会社。創業1年目には、3億円の資金調達にも成功しました。法律事務所ZeLo・外国法共同事業では、LPOサービス(顧問弁護士:Legal Process Outsourcing Service)を通して、急成長する同社のスタートアップファイナンスや日常業務をサポートさせていただいています。今回は、同社代表取締役 CEOの原邦雄さんに、創業初期のリーガル支援のあり方や、今後目指す姿について伺いました。聞き手を務めるのは、同社を支援する島内洋人弁護士です。(写真左からBeatrust株式会社代表取締役 CEOの原邦雄さん、島内弁護士)
2017年東京大学法学部卒業、同年司法試験予備試験合格。2018年司法試験合格。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2020年法律事務所ZeLo参画。クロスボーダー取引を含むM&A、ストック・オプション、スタートアップ・ファイナンスなどコーポレート業務全般を手掛けるほか、訴訟/紛争案件も担当。また、AI、web3、フィンテックなどの先端技術分野への法的アドバイスを強みとする。主な論文に「ステーブルコイン・DeFiとCBDC」(金融・商事判例1611号、2021年)、「スタートアップの株主間契約における実務上の論点と対応指針」(NBL 1242(2023.5.15)号)など。
会社規模:スタートアップ企業
業界:IT・SaaS
従業員数:13名(2022年1月17日現在)
島内:あらためて、貴社の事業内容を教えてください。
原:私たちは、「人々の経験や強みを可視化して、自由に繋がり、協業・共創できる環境を作る」というミッションのもと、会社を自走型の組織に変えていくためのクラウド型タレントコラボレーションツールを提供しています。組織を可視化するエンジンを作り、自律的な協働を促しています。
島内:2020年3月に創業されましたよね。創業のきっかけは何だったのでしょうか。
原:以前、私は日本マイクロソフト株式会社、グーグル日本法人といった、外資系組織に在籍していました。外資系組織は、上司や部下などの役職はあっても、コミュニケーションが非常にオープンでした。アジェンダさえあれば、誰とでも繋がれるんです。そういうカルチャーと仕組みがあったからこそ、イノベーションが起こっていると思いました。
一方で、日本企業の場合、組織が細分化されていて、隣の部署が何をしているのかわからない状態に陥るケースが結構多いです。日本の企業にも、協働を促すインフラを提供する意義を感じ、起業しました。
島内:メインターゲットは、多くの社員同士の繋がりに改善の余地があるような、大企業が中心でしょうか。
原:そうですね、現在は大企業がメインターゲットです。特に、今まで大企業は、属人的な飲み会や、勉強会、会社のカフェ、喫煙所などでの立ち話で情報を得て、繋がりにくさを解決していました。しかしコロナ禍でそれらの手段が使えなくなり、当社のサービスを導入いただく企業も増えましたね。
とはいえ、300~500人規模の会社やスタートアップ企業でも、中途入社の社員が多く、同じような問題は眠っています。今後は様々な規模の組織に向けたソリューションも作っていきたいです。
島内:そもそもZeLoを知ったきっかけは何だったのでしょうか。
原:きっかけは、角田望さん(ZeLoの副代表弁護士 兼 株式会社LegalForce代表取締役CEO)とたまたまお会いしたことです。まだZeLoもLegalForceもできていない頃で、角田さんや小笠原匡隆さん(ZeLo代表弁護士 兼 株式会社LegalForce 代表取締役共同創業者)はリーガル領域を変革する構想をしていた段階でした。ちょうどその頃、私はグーグル日本法人で、スタートアップや起業家をサポートし、事業成長を促すアクセラレーターとして働いていて、角田さんや小笠原さんの相談に乗ったことが始まりです。
島内:創業期からの付き合いとは知りませんでした。
原:その後、今度は私自身が起業する側になり、ビジネスモデルの検討で小笠原さんに相談に乗ってもらいました。当社の現サービスは企業向けですが、事業の構想段階ではブロックチェーンを用いた個人向けサービスの可能性も模索していました。小笠原さんはブロックチェーンに詳しく、具体的な仕組みの相談をしていたんです。結局、タイミングや技術面に課題があり、現サービスの原型が生まれて、そちらに舵を切りました。
ZeLoと試行錯誤しながら、創業期に助け合う過程で、信頼関係が育まれていきました。今も当社をサポートいただいている理由は、根っこに信頼関係があるうえで、ZeLoが目指すビジョンへの感銘、提供サービスに関する満足があるからですね。
島内:貴社の規模感や、法務の体制について教えてください。
原:正社員・業務委託合わせて20人程度の規模です。法務の専任は今はおらず、私や共同創業者が中心となって、法務関連の業務に対応しています。ただ私は他のCEO業務もあり、全業務の5%程度の時間のみ、法務に割いている状況です。
島内:普段は、法務のタスクがあったら、Slackで都度ご連絡いただいていますよね。
原:日々発生する法務タスクは、何でもZeLoに投げさせていただいています。
島内:タスクとしては、契約法務が中心ですよね。たとえば、秘密保持契約(NDA)、セキュリティ関連の契約書審査などを行っています。貴社が作る契約だけではなく、貴社が使う他社サービスの利用規約も確認させていただいています。
原:明らかに問題がない契約だとわかっていても、ZeLoに一応目を通していただいているおかげで安心できます。
島内:特に、貴社はクラウドサービスを提供していることから、利用規約が一番大切になりますよね。貴社の顧客と、利用規約の契約交渉を行う機会も多いです。
原:ZeLoには、顧客からのコメントを踏まえつつ、当社の立場に立って、一番良い文章案や打ち返し案をいただいていると感じます。
島内:日常業務以外にも、2020年8月には資金調達のサポートもさせていただきました。ビジネス展開の土台を作るシード期において、J-KISS型新株予約権の発行による総額約3億円の資金調達でした。
原:大規模な交渉も少なく、スピーディーに進みましたよね。
島内:通常、優先株式を用いたスタートアップの資金調達では、バリュエーションや、優先株式の設計、投資契約の契約交渉が必要になり、どうしても一定の時間がかかってしまいます。しかし、シード期において、できるだけシンプルに資金調達を行える手法が、J-KISSです。
J-KISSは、顧客が満足するサービスを作り、適切な市場に提供できる状態(プロダクトマーケットフィット)まで、素早くたどり着くことを目的に設計されていて、スピーディーに資金調達をすることが可能です。
原:ZeLoにスピード感をもってサポートいただけて助かりました。今回のような大がかりな案件も多く対応されているのでしょうか?
島内:契約書審査などの日常業務はもちろん、貴社の今回の資金調達のように機動力が必要な案件も多く対応しています。M&Aやデューデリジェンス(DD)、紛争など幅広くご利用いただいています。
島内:今後、ZeLoとともにやっていきたいことはありますか。
原:会社がより大きな組織になるからこそ、社内規程や体制を整えていきたいです。
現在は私たち創業者が、法務タスクを進められるサイズ感ですが、今後様々な社員がZeLoと協働していくようになると思います。契約書をZeLoに審査いただくフローなども整えて、共通言語を作り、効率的に運用できる仕組みが必要だと考えています。
島内:貴社の成長に合わせて、ZeLoとのシームレスな連携体制が作れるように、アドバイスをしてまいりますので、一緒に整えていきましょう。
原:当社の次の事業フェーズとしては、海外へのサービス提供も考えています。ただ、契約書や交渉の言語も外国語になったり、現地法対応も必要になったりします。そこも支援いただけたらうれしいです。
島内:ZeLoには、アメリカやインドネシアの弁護士資格を持つ弁護士も在籍し、国際的なリーガルサービスの提供ができますので、ぜひサポートできればと思います。
原:今後我々Beatrustとしては、グローバルにも通用するスタートアップのロールモデルになっていきたいです。
様々な日本のスタートアップや起業家を見てきて、スタートアップ・エコシステムはだいぶ発展し、若い優秀な人が起業したり、スタートアップでキャリアを歩んだりと、良い流れが来ているとは思います。しかし、まだグローバルに通用している企業が少ないのも事実です。誰かがブレークスルーしていかない限り、現在のスタートアップ・エコシステムは変わりません。Beatrustを日本のスタートアップの殻を破る存在にしていきたいですね。
島内:一つでも殻を破った存在が出てくると、全体の目線もあがりそうですよね。リーガルの観点からも、スタートアップファイナンスやストックオプションの仕組みは、まだまだ複雑な部分があると感じています。私もそれらの仕組みのアップデートに関わり、より良いスタートアップ・エコシステムの創造に寄与できたらと思っています。一緒に日本のスタートアップを盛り上げていきたいですね。
▼ZeLoの提供するLPOサービスの詳細はこちら。
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※掲載内容は取材当時のものです(取材日:2021年12月2日)
(写真:栃久保誠、文:高田侑子、編集:村上未萌)