【読書感想】『魍魎の匣』★★★★★ もっと早く読んでおけばよかったと後悔するほど面白かった。
京極夏彦作品は、ちょっと手を出すのをためらうような分厚いイメージと小難しそうなイメージがあり、今まで読もうとは思わなかった。
けれど以前同じ作者の「書楼弔堂シリーズ」を面白く読めたので「自分は京極夏彦の作品を読めるんだ!」と謎の自信(?)が湧き、有名な百鬼夜行シリーズを読んでみることにした。
本当はシリーズ第1作の「姑獲鳥の夏」から読んだ方が良かったかもしれないんだけど、アニメや映画のメディアミックスで名前だけ知っているこちらの作品から読んでみることにした。
読む前は本の分厚さに「こりゃあ読み終わるのに二週間ぐらいかかるかもしれん…」と自分の読書スピードを鑑みて危惧しながら読んだけど、事件の真相が気になりすぎて、3日ぐらいで読んでしまった。
一気読みしたいぐらい先が気になったけど、物語のボリュームが大きく一気読みできなかった。もどかしかった。そりゃこんな分厚くもなると納得。
いやあ…すごいものを読ませてもらった…。
読みにくいかな…と思っていたけど、私は意外と読めた。
びっくりしたのは、小難しいイメージとは別にキャラクターがみんな個性的だったということ。だからキャラクター小説としても面白かったのは意外だった。
もちろんキャラクターだけでなくて、作中起こった事件の連鎖具合は読んでいて「そうくるか~」と唸ったし、イメージ通り探偵役のもちろん探偵役の京極堂の説明、解釈、考察…などは一度に理解できず頭に「?」を飛ばしながら読んでいたところもあったけど、「なるほどな」と納得できるものもあった。特にどうして個人は犯罪を起こすのかの京極堂の解釈は興味深かった…。
第二次世界大戦が終わったあとの「戦争」がまだ色濃く残っていた時代。
思春期の危うい少女たち。あの時代の老いに対する恐怖。神秘的な少女が出てくる。彼女たちの会話にはオカルト用語が飛び交っている。
タイトルにも入っている「匣」はいろんな場面で出てくる。ものを入れる箱。箱のような建物。精神的な箱。などなど。マトリョーシカみたいに次から次へと箱が出てくる。
よくわからない魍魎。
バラバラになった手足が連続して見つかるという事件。
ラストはどこか90年代(この本が発行されたのが95年だからかもしれないけど)の雰囲気を感じてしまった。
何がとは言えないけれど、「全部乗せだ!コレ」と感じた。
私が高校生の時読んでいたら、間違いなく自分を高二病に叩き落とした一冊の中に加わっていただろう。もっと早く読んでおけばよかった。
そして今現在読んだ後も、ドハマリしそうな気配が漂っている。
鈍器になるような分厚さに、濃厚な物語に、いつの間にか話の中に入り込んでいて読み終わった後は放心状態になった。この分厚さは作中にぐっと入れるほどで、こういうところも人気の一つかもしれないと思った。他のシリーズ作品も気になります。