「天使の傷 上下 サイラス&イーヴィ」マイケル・ロボサム:著 早川書房
ストーリー
彼は過去に担当した幼児連続殺人事件を独りで調べ直していた。
過去に傷を負った臨床心理士サイラスはウィットモア殺害事件の真相を追う内に、
事件の背後に渦巻く陰謀に接近し、命を狙われる。
「天使の顔(エンジェル・フェイス)」であるイーヴィにも犯人の手が伸び、複数の死者が出る。
サイラス自身が抱える問題、事件の真相解明、過去の因縁を清算することで、
果たしてイーヴィは本当の自由を手に入れることが出来るのか。
プラス情報
天使と嘘 2021
天使の傷 2022
読むネコポイント
前作「天使と嘘」が自分の中でスマッシュヒットだったので、今回はどんな感じでサイラス、イーヴィの関係が進むのか
すごく面倒くさく絡まった、二人の過去が作中どうやって紐解かれていくのかワクワクしながら読みました。
前作は、サイラス、イーヴィの過去が凄惨すぎて、
その重さにちょっと引いてしまったのですが、本作はライトな印象でした。
殺人事件の究明と、イーヴィの過去の清算が同時進行していきますが、
ごちゃつきもなくスッキリと読めました。
イーヴィの「嘘を見抜く」能力、というのがそれほど今回の内容には影響を及ぼさず、
大人になると共に、それを飲み込んで生きる覚悟が少しづつですが見られました。
読むにつけ、イーヴィの過去も明らかになっていきます。
確かに壮絶で過酷な少女期ではあるのですが、
テリーとの出会い、逃亡生活、心優しい彼の存在や、
救いの手を差し伸べてくれた、船上生活の自由人マーティとの触れ合い、
又イーヴィの反骨精神と強さなどが救いとなったおかげで
暗いムード漂う前作よりも、格段に読みやすかったではないかなと思います。
本作は、ウィットモア元刑事が過去に雑な仕事をした後悔の念から、
幼児虐待・誘拐・連続殺人犯のグリーンの事件を自力で再捜査したことから始まります。
陰謀が暴かれるのを阻止するべく、暗躍する大物が透けて見えてきます。
その大物こそがイーヴィの過去に関係しているらしいが、証拠がないわけです。
さて、サイラスは命を狙われるし、人はバンバン殺されていくし
イーヴィの言うことには誰も耳を貸さないしで、
結局今まで通り、大物が権力で全てを握りつぶしてしまうのか、、、
ネタバレになりますが、イーヴィは幼少時に南東ヨーロッパからイギリスに不正入国し、
その後「おじさま」による軟禁状態の囲われの身になるのですが、その間がまだ明らかになっていません。
今後、少しづつそこら辺も開示されていくのでしょう。
サイラスの精神病院にいる兄の起こした一家惨殺の理由も、今後進展していくのかもしれません。
サシャとサイラスの今後の明るい展開にも期待しつつ、更にさらにシリーズは続くようなので、
次作を楽しみに待つばかりです。