今回は7月のMF文庫J・オーバーラップ文庫・ダッシュエックス文庫・角川文庫・メディアワークス文庫新刊感想まとめです。内訳はMF文庫Jが新作1点、続巻3点、OVL文庫の新作2点、続巻1点、DX文庫が新作2点、角川文庫が新作2点、続刊1点、MW文庫が新作1点、続巻1点の計14点になります。気になる作品があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。
※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。
魍魎探偵今宵も騙らず (MF文庫J)
魍魎探偵今宵も騙らず(1)
posted with ヨメレバ
綾里 けいし/モンブラン KADOKAWA 2023年07月25日
常世とこの世が完全に繋がって十年。幽霊も妖怪も幻獣も精霊も、あらゆる怪異が人間の隣人と化した世界。魍魎探偵の皆崎トヲルが助手のユミとともに妖に関する事件に対峙する怪奇ミステリ。魑魅魍魎があちこちに現れて混沌と化す世の中。後を絶たたない妖怪絡みの犯罪解決を生業とする皆崎トヲルとユミ。彼らのもとに届く助けを求める人魚の手紙と旧家の家族たちの因縁、殺された死なない件、出没する鬼と近辺で人死にが多すぎる村、迷い家の主人、ユミに憧れる狐のあやかし。そもそもの物語の起点となる、なぜ常世とこの世が繋がったのか。事件の捜査を通じて掘り下げられてゆく二人の因縁があって、そんな彼らが育んできたかけがえのない絆が印象的な物語でした。
聖剣学院の魔剣使い13 (MF文庫J)
もう一人の不死者の魔王が待ち受ける次元城へ突貫するレオニス率いる魔王連合。一方、エルフィーネを救出したリーセリアは、脱出の最中に使徒ネファケスの襲撃を受けてしまう第十三弾。竜王ヴェイラの圧倒的火力でヴォイドを殲滅し、不死者の魔王に対峙するレオニス。使徒ネファケス相手に苦戦する中で謎の声に導かれ、千年の時を遡るリーセリアの魂。同時展開される総力戦で物語としても大きく動いて、レギーナやエルフィーネ、シャーリ、咲耶たちヒロインにもそれぞれ見せ場があって、こんな状況でもマイペースなシャーリが見せた覚悟の結果は気になりましたけど、様々な事情や遡った過去もしっかりとストーリーとしてひとつに繋がって、物語としてもいろいろ盛り上がってきましたね。
神は遊戯に飢えている。7 (MF文庫J)
神は遊戯に飢えている。7
posted with ヨメレバ
細音 啓/智瀬 といろ KADOKAWA 2023年07月25日
ケイオスとの極限の読み合いの後に語られた事実から、「神々の遊び」の真実の姿にまた一歩近づいたフェイたち。そんな彼らに興味を持った世界最強チームの一員・超獣ニーヴェルンが「神々の遊び」を仕掛けてくる第七弾。今回の遊戯は村長が殺された架空の村が舞台のマーダーミステリ。ケイオスやミランダらもメンバーに参加して、それぞれに職業と秘密と目標が与えられ、お互い疑心暗鬼となりながら各々に与えられた役割をこなしていくフェイたち。一見クリア困難に思える条件に対してどうすればゲームクリアとなるのか。参加者の心理を逆手に取った狡猾な企みもあったりで、その正解に至るのはちょっと難易度高いな…と苦笑いでしたけど、その腹のさぐりあいのような駆け引きはなかなか面白かったです。
記憶喪失の俺には、三人カノジョがいるらしい2 (MF文庫J)
記憶喪失の俺には、三人カノジョがいるらしい2
posted with ヨメレバ
御宮 ゆう/たん旦 KADOKAWA 2023年07月25日
明日香、紗季、ひな。三人の彼女と「三股」をかけていることが、期せずして学校中に知れ渡ってしまった真田勇紀。未だに居心地の悪い空気の中、訓練合宿が始まる第二弾。最悪な空気の中でクラスで合唱に取り組むことになり、伴奏を担当する紗季とともに指揮者となった勇紀。一方、彼自身も記憶を失う前と今の違いがどんどん気になり始めて、その過去の記憶へのこだわりに対してヒロインがそれぞれに違うスタンスであることがひとつのポイントになっていて、今回はわりと近い距離にいることが多かった紗季の思いもいろいろ明らかになり、彼女の様々な一面も垣間見えましたけど、ヒロインたちとの関係は思わぬ形で均衡が崩れそうで、また物語が大きく動きそうな今後の展開が楽しみになってきました。
【第8回オーバーラップWEB小説大賞 後期<銀賞>】
幼馴染たちが人気アイドルになった 1 ~甘々な彼女たちは俺に貢いでくれている~ (オーバーラップ文庫)
幼馴染たちが人気アイドルになった 1 ~甘々な彼女たちは俺に貢いでくれている~
posted with ヨメレバ
くろねこどらごん/ものと オーバーラップ 2023年07月22日
「働きたくない」と固く心に誓う高校生・葛原和真。そんな彼と一途で愛が重い幼馴染アイドルたちの貢がれ甘々の青春ラブコメディ。幼い頃に約束した和真を生涯養うため、大人気アイドルグループで活躍する小鳥遊雪菜と月城アリサ。彼女たちの筋金入りのファンで転校生のお嬢様・伊集院麗華が、二人に貢がせる和真に激怒してやめさせようとあれこれ画策するものの、逆に彼女のメイドすらそのクズっぷりで籠絡させてしまう和真。幼馴染の二人もある意味ヤバい一面を垣間見せていますけど、何より彼女たちを救いたい麗華の想いすら逆手に取る和真のどこまでもクズな発想が際立っていて、今後どうなるのかその続きが気になってしまう強烈なインパクトがありました。
異端審問官シャーロット・ホームズは推理しない (オーバーラップ文庫)
中島リュウ/キッカイキ オーバーラップ 2023年07月22日
人に化け人を喰う人狼が跋扈し、異端審問官が戦いを繰り広げるイギリス。日雇いで働くジョンが異端審問官の少女シャーロットと運命の出会いを果たす推理バトルファンタジー。「人狼って推理するより、全員吊るした方が早くない?」とか言い出す彼女の脳筋思考でいきなり殺されかけて、間一髪で本物の人狼を導き出した観察眼を買われて助手としてバディを組むことになったジョン。最強の審問官を目指すシャーロットの猪突猛進ぶりに振り回されながら、ジョンの病弱な妹や彼女の父に対する複雑な想いも絡めて、この世界の背景も掘り下げてゆくストーリーには思っていた以上に奥行きがあって、様々な葛藤を乗り越えて本当に大切なものを守るために、人狼の王の陰謀を阻止すべく熱い戦いを繰り広げる展開はなかなか良かったですね。
暗殺者は黄昏に笑う 3 (オーバーラップ文庫)
暗殺者は黄昏に笑う 3
posted with ヨメレバ
メグリくくる/岩崎美奈子 オーバーラップ 2023年07月22日
過去の因縁を殺したことで訪れたミルとのつかの間の平穏な生活。しかしそれは死者の声を聴くといわれる聖女エウラリアの登場によって一変してしまう第三弾。飯を食えず行き倒れになっていたところをうっかり救って、すっかり懐かれてしまった協会所属の修道女エレーナ。依頼から接触を避けていたはずのエウラリアと行動をともにする中で、ニーネやミルの秘密を守るために聖女を殺害しようと決意するチサト。並行して描かれるもうひとつのエピソードも重要な伏線になっていて、それぞれの真意が分かるとまた構図がガラリと変わってゆく、誰が味方で敵なのかなかなか奥が深い展開になっていましたが、彼らにも新たな可能性を感じさせてくれたその結末には救われる思いでした。
山本君の青春リベンジ! (ダッシュエックス文庫)
奇病『DeBS』により、130キロを超える体重を持つ高校生・山本流伽。大きな体に優しい心を持つ山本君の青春リベンジラブコメ。学校やバイト先、意地悪な親族たちにも見下され、虐められながら、それでも持ち前のタフさで明るく頑張っていた流伽。彼がクラスメイトの窮地を救ったことで、米国で治療を受けられる機会を得る展開で、渡米して美少女女医・柏木指導の過酷な治療を乗り越えた彼の変貌ぶりには驚かされましたけど、物語としてはむしろここからが本番で、もともと彼の本質を理解して好意を向けてくれていたヒロインたちも少なくなかっただけに、激変した彼と再会して周囲がどんな反応を見せるのか、今後の展開が今から楽しみです。
現代転生した元魔王は穏やかな陰キャライフを送りたい! 隣のクラスの美少女は俺を討伐した元勇者 (ダッシュエックス文庫)
現代転生した元魔王は穏やかな陰キャライフを送りたい! 〜隣のクラスの美少女は俺を討伐した元勇者〜
posted with ヨメレバ
右薙 光介/mmu 集英社 2023年07月25日
かつて女勇者との最終決戦で命を落とした魔王レグナ。平和な現代に青天目蒼真として転生し、女勇者の生まれ変わり日月昴と再会する青春ラブコメ。密かに高校デビューを飾ろうとした蒼真の目論見を、見事ぶち壊してみせた女勇者プレセアの生まれ変わりすばる。そんな二人が普通の高校生として青春を送るため、時には衝突したり協力しながら日々を送るようになってゆく展開で、最初は何かと魔王だった蒼真を目の敵にしてツンケンしていたのに、いつしか名前で呼びあうのが当たり前になって、素直に蒼真を頼るようになるすばるも可愛かったですね。蒼真もまたそんな彼女を放っておけない二人の距離感がなかなか良かったです。二人の夏休み編もとても楽しみにしています。
昨日星を探した言い訳 (角川文庫)
全寮制中高一貫校の制道院学園に進学した坂口孝文。中等部2年への進級の際、映画監督の清寺時生を養父にもつ茅森良子が転入してきて、坂口と運命の出会いを果たす青春小説。生徒会長を目指す真っ直ぐだけれど脇の甘い茅森を、影から支える坂口の密かな共犯関係。二人だけでたくさんの想いを語り合い、揺るぎない信頼と甘酸っぱい関係を積み上げてきたからこそ、思ってもみなかった急展開には驚かされましたけど、どこまでも頑固者で不器用で揺るぎない二人が、傷つきながらも大切なものを見出してゆく展開で、意外な転機と巡り合わせの末に辿り着いた結末には苦笑いでしたけどなかなか良かったですね。
いいからしばらく黙ってろ! (角川文庫)
いいからしばらく黙ってろ!
posted with ヨメレバ
竹宮 ゆゆこ KADOKAWA 2023年07月21日
実家では上と下の双子に振り回される生活を送り、大学卒業直後には婚約者も就職先も住む場所さえなくなってしまった富士。ふとしたきっかけから弱小劇団の運営にのめり込んでゆく青春小説。大学卒業後に親の勧めでお見合い結婚する予定が白紙にされて、その傷心を友人だと思っていた同級生たちに全否定された富士。そこからお金も場所も伝手もない、どう考えても破綻寸前の弱小劇団に魅せられてのめり込んでゆく彼女が、ほんとにその選択でいいの?を何度も突き付けられながら、それでもハイテンションで最後まで駆け抜ける展開には著者さんらしさがよく出ていてなかなか良かったです。
蒼き太陽の詩3 アルヤ王国宮廷物語 (角川文庫)
蒼き太陽の詩3 アルヤ王国宮廷物語
posted with ヨメレバ
日崎 アユム KADOKAWA 2023年07月21日
帝国の総督ウマルが何者かに殺され、激震が走るアルヤ宮廷内。戦争は避けられず将軍たる十神剣の多くが戦地に赴く中、前線で窮地に陥ったユングウィをサヴァッシュが救う第三弾。不穏な情勢で国内が混乱する最中に起きた、宮中に助けを求める動きに対する、ソウェイルと弟フェイフューの見解の相違と対立。本調子には程遠いユングウィが抱えていた事情と覚悟、非常事態に直面して少しずつ変わってゆく十神剣間の関係、そしてなかなか見つからなかった十神剣内の裏切り者の正体。いろいろと対応が難しい問題にも直面しましたけど、いくつかのターニングポイントは今後に向けて確かな変化をもたらしそうで、最悪の状況からは逃れることができそうな二人の選択が気になるところではあります。
後宮食医の薬膳帖 廃姫は毒を喰らいて薬となす (メディアワークス文庫)
後宮食医の薬膳帖 廃姫は毒を喰らいて薬となす(1)
posted with ヨメレバ
夢見里 龍 KADOKAWA 2023年07月24日
暴虐な先帝の死後、処刑を免れる代わりに後宮食医として貴妃達の治療を命じられた先帝の廃姫・慧玲。先帝の呪いと恐れられ、典医さえも匙を投げる奇病を次々と治していく中華後宮ファンタジー。母に教えられたことで毒疫を唯一治療することができる、あらゆる毒を解す白澤一族最後の末裔でもある慧玲。皇后に救われて謎めいた美貌の風水師・鴆と出会い、解決を依頼される鱗が生える側妃、脚に梅の花が咲く妃嬪、青く燃える火を帯びる皇后、都の東部で起きた毒疫の調査。周囲から憎まれ蔑まれて、味方と思いたい相手にすら油断できず信じきれない状況の中で、それでも絶望に最後まで諦めずに真摯に向き合い、人々を救うことで認められてゆく慧玲の姿がとても印象的でした。
拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきますII〈下〉 (メディアワークス文庫)
拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきますII〈下〉(4)
posted with ヨメレバ
久川 航璃 KADOKAWA 2023年07月24日
スパイの疑いをかけられ、軍から離婚を言い渡されたバイレッタ。さっさと婚家を飛び出し、商売のために北の地へと向かったものの、軍の仕事で来ていたアナルドと偶然に出会ってしまう第四弾。軍からの突然の離婚通告。引き留めもしなかった元夫の想いがわからず、でもなぜか気になってしまい、彼から離れようとするバイレッタに対して、部下を使い密かにある任務を遂行させるアナルド。こういうことする上司はほんと最悪だなとか、アナルドそれは伝わらないよとか思いながら読んでいましたが、周囲に言われてもなかなか信じられず、最悪な状況から一周回ってようやく伝わったアナルドの溺愛っぷりに困惑する彼女が微笑ましかったです。