11月は祭日が2日あったわりには、新作・シリーズもの、いろんなジャンルの本をバランス良く読めたように思いますが、終わってみると先月よりも積読が増えていて、実感としてはあまり読めた気はしませんでした(苦笑)「東京すみっこごはん」の完結は感慨深ったです。
11月の読書メーター
読んだ本の数:70
読んだページ数:20556
ナイス数:4195
問題発見力を鍛える (講談社現代新書)の感想
もはや何が起こるかわからない今までの常識が通じない時代。これに立ち向かうためにが必要不可欠な自分の頭で考えて、問題・課題を発見する「問題発見力」を切り口に様々な思考法を解説した一冊。これまでの与えられた問題を解決する「問題解決力」から、何が問題なのか主体的に見つける「問題発見力」が求められるようになっていて、現状に疑問を持つこと、そこからさらに一歩進んで「こうなればもっとよくなるのに」という観点から考えることなど、受け身でなくポジティブに自分から関わってゆく意識はこれからもっと大事になっていきそうですね。
読了日:11月01日 著者:細谷 功
捨てられる宗教 葬式・戒名・墓を捨てた日本人の末路 (SB新書)の感想
仏教徒が平成の30年で2000万人激減、行事・しきたりの形骸化、終活さえもめんどくさいと感じる高齢者…人類史上、初の事態に直面する日本で、これからいかに生と死に向き合っていけばよいかを考える一冊。平均寿命が伸びてきたことで定年後の時間がやたら長くなったこと、様々なものがスケジュールに組み込まれる時代には死生観も変わり、終活とかわりとどうでも良くなったり、宗教に救いを求めることがなくなっていくのはなんか分かるような気がしました…自分の世代がもっと上になった時にどうなっているのか、正直想像もつきません(苦笑)
読了日:11月02日 著者:島田裕巳
死神のノルマ 二つの水風船とひとりぼっちの祈り (集英社オレンジ文庫)の感想
死神の下請けと名乗る少年ケイと出会った女子大生の響希。死神のノルマを達成するには未練を解消させ自ら成仏させるが必要だと知った二人が奮闘する第二弾。初連載の最終回を見届けられなかった漫画家、振袖を受け取れなかったアパートの大家、そして恋人の幸せを願うことができない高校生。様々な未練を残す死者たちとの出会いがあって、響希と闘病時代の友人の再会もあったりで、苦しむ気持ちにきちんと向き合う難しさを痛感しましたけど、どうすべきかひとつひとつ悩みながらもしっかり寄り添おうとする響希たちの優しさが印象に残る物語ですね。
読了日:11月02日 著者:宮田 光
小麦の法廷の感想
ケータイ弁護士として日々奔走する新人女性弁護士・杉浦小麦、25歳。国選弁護士として1日で公判が終わるはずだった仲間内の傷害事件が、やがて世間を震撼させる大事件へと変貌してしまう法曹ミステリ。一転して注目を集めることになってしまった被告人の事情。傷害事件はアリバイ作りなのか、警察と検察のメンツや思惑も絡む複雑な状況に振り回される新人弁護士という構図でしたけど、真正面から向き合って奔走する小麦を支えてくれる人たちもいて、新人なりに不器用ながらも信じるもののために戦った彼女の物語をまた読んでみたいと思いました。
読了日:11月02日 著者:木内 一裕
暁花薬殿物語 第四巻 (富士見L文庫)の感想
戌子誘拐事件も無事解決した千古。しかし新たな暁上姫・明子が千古の真似ごとを始めるようになり、新たな帝の后候補を「鬼の都」から呼び寄せるという噂が流れ始まる第四弾。千古が少しずつ積もっていった想いを自覚するようになったからこそ、後宮内の人間関係に心揺さぶられたら動揺もするし、何やら帝との間に過去に曰くありげな新たな后候補が現れたら、複雑な想いを抱くのもそれは仕方ないですよね。だからこそ不穏な状況が続く中で、密かに支えてくれていた秋長を襲った悲劇には言葉もないというか、これから先の展開が気になるところです…。
読了日:11月03日 著者:佐々木 禎子
フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)の感想
何となく唐突に読みたくなって再読。フリーターとしても中途半端だった誠治が、母の鬱病をきっかけに一念発起。お金を貯めるために続けていた土方バイト先で社員に登用され、IT導入から社内整備、人材登用にまで奮闘するストーリーで、お母さんの鬱発病からの家庭崩壊はなかなかしんどいものがありますけど、それ以上に会社での千葉ちゃんとの不器用でガチな距離感が読みたかったんですよ(苦笑)巻末の豊川視点の後日談がまたじわじわと効いてくる感じでした。こういうの読むと有川さんの描く恋のありかたが好きなんだなってしみじみ思いますね。
読了日:11月03日 著者:有川 浩
紙屋ふじさき記念館 物語ペーパー (角川文庫)の感想
名古屋で行われた紙こもの市への出店を手伝った百花と莉子。終了後、そのまま美濃和紙の産地に立ち寄る一成に付いていくことになる第二弾。和紙すき体験や職人たちの歴史を学ぶことで、和紙への想いを新たにしてゆく百花たち。藤崎産業の現社長の息子・浩介の存在と一成の確執。優しい登場う人物が多い中で浩介のような存在は異質でしたけど、記念館存続も必ずしも安泰ではないことを実感する状況で、様々な人と出会いながら和紙の奥深さを知り、刺激を受けて百花が成長してゆく姿が印象的でした。これからどんなアイデアが出てくるのか楽しみです。
読了日:11月04日 著者:ほしお さなえ
ゴーストハント3 乙女ノ祈リ (角川文庫)の感想
湯浅高校で怪現象が立て続けに起こり、次々と舞い込むSPRへの調査依頼。数々の事故や病気の聞き込み調査を進めるうち、超能力を持った少女の存在・笠井千秋が浮上する第三弾。とあるクラスの呪われた席や陸上部のぶ室での現象、駅での事故などの解決のため、高校に乗り込んだいつもの霊能者軍団。けれど各々問題解決に動き出すものの空回りする展開はもはやお約束のような感じになりつつありますが、そんな解決の糸口を見つけるのが素人のはずの麻衣という構図は面白いですけど、まあこれだけ続くと偶然ということもないですよね。続巻にも期待。
読了日:11月05日 著者:小野 不由美
さよならの言い方なんて知らない。4 (新潮文庫)の感想
殺し合いを是とする架見崎を変えるため、キネマ倶楽部のリーダーに就いた香屋歩。同じタイミングでPORTを脱退した王者ユーリイが動き出したことで、事態は混迷を極めてゆく第四弾。香屋歩が打ったいくつかの布石、中小を飲み込もうと動き出したユーリィ、それに対応するトーマの思惑。頻繁に視点が切り替わるため若干読みづらさもありましたが、ギリギリの駆け引きが続く中で秋穂がキーマンとして動き、香屋とトーマの邂逅したことで大きな転機を迎えそうですけど、勢力図が大きく変わりそうな状況で架見崎の事情にも踏み込んでいくんですかね。
読了日:11月05日 著者:河野 裕
殺人事件が起きたので謎解き配信してみました (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)の感想
人気動画配信者・ソウスケが視聴者からの贈り物大食いチャレンジ動画の生配信中にカメラの前で突然死亡し、配信を見ていた友人「謎解き」動画配信者カイが、その死の謎に迫る動画配信ミステリ。恩義ある彼の死に報いるためにも、その死の謎に迫ろうと決意する構図で、動画配信者の視聴者に対する配慮は大変だなあと感じつつ、情報を得る手段も乏しい素人による犯人探しの限界はそれをォローする人材をうまく配したり、密かに動画配信している刑事・田井中の視点も交えたりして、謎解きを絡めながら解決に繋げてゆく展開はなかなか面白かったですね。
読了日:11月06日 著者:越尾 圭
家族のトリセツ (NHK出版新書)の感想
親子関係から兄弟、夫婦関係まで、イライラやすれ違いの具体例を挙げながら、家族のメカニズムを解説する一冊。「娘のトリセツ」なども読んでいて、その流れで読んでみた一冊ですが、日頃の妻の想いを考察しつつ、夫や息子といった男の脳の個性との違いを明らかにして、「失敗」「弱点」「欠点」といったことに寛容になって失敗を責めないこと、やってはいけないことを意識して気を付けつつ、過去の失敗にこだわり過ぎずに、優しい気持ちで「志は高く結果に無頓着」で行けば案外うまくいくのでは?という結論には確かに一理あるのかなと感じました。
読了日:11月06日 著者:黒川 伊保子
約束のネバーランド ~戦友たちのレコード~ (JUMP j BOOKS)の感想
GP編のキーパーソンとなったユウゴとルーカス、エマと死線をともにし鬼と戦ったナイジェルとジリアン、鬼側の存在として重要な役割を担ったムジカとソンジュの過去を描くノベライズ。ユウゴの淡い初恋や仲間との日々、ナイジェルとジリアンの辛い過去、そしてムジカとソンジュの邂逅と当時の状況など、本編では描かれていなかったそれぞれの過去でしたけど、それが今のあり方にも繋がっているのが感じられる貴重なエピソードで、物語の世界観にも奥行きを加えていると思いました。なかなか面白かったので、他キャラの過去エピも読んでみたいです。
読了日:11月06日 著者:白井 カイウ,出水 ぽすか,七緒
憂国のモリアーティ 虹を視る少女 (JUMP j BOOKS)の感想
ルイスやアルバートたちに、日頃の感謝の気持ちをこめてプレゼントを贈ろうと。ロンドンにあるデパートを訪れていたウィリアムが襲撃事件に巻き込まれるノベライズ。デパートで出会った少女ヘレナと協力して襲撃犯を制圧しようとするウィリアム、モリアーティ家主催で行われた犯罪卿一味のキャラや対抗心がよく現れていたサバイバルゲーム大会、シャーロックの密室事件を調査など、それぞれがなかなかに面白いエピソードでしたけど、一見関係なさそうなそれらが全て繋がっていて、いい感じにまとめあげてみせた結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:11月07日 著者:竹内 良輔,三好 輝,埼田 要介
俺の妹がこんなに可愛いわけがない(15) 黒猫if 上 (電撃文庫)の感想
高校3年の6月。ゲーム研究会の部長から夏休みの取材合宿を提案された京介たち。最初は参加するつもりのなかった黒猫が父や妹からの後押しを受け参加を決める黒猫ifルート。桐乃が留学で不在の中、ゲーム研究会の面々+赤城兄と向かった夏休み取材合宿。そこで出会った不思議な少女・槇島悠。どこか不安定な二人の関係は繊細だなと感じましたけど、生温かい感じに見守る周囲や悠との絡みもあって、オチも含めてエピソードとしていい感じにまとめ上げていたと思えました。それだけに下巻でここからどう展開するのか気になるところではあります。
読了日:11月07日 著者:伏見 つかさ
辻宮朔の心裏と真理 (幻冬舎文庫)の感想
遠野が米国の吸血種関連問題対策室に勤めて早五年。再び日本で被害者全員が吸血種という不可解な連続殺人が発生し、遠野と朱里が来日する第二弾。簡単に死なないはずの吸血種が殺された理由と方法。そこに見え隠れする七年前に忽然と姿を消したカリスマ吸血種・ユエの存在。吸血種となってから朱里と同じ対策室に勤務して隣の部屋に住むようになって、何事も朱里のこと優先で物事を考える遠野の発想が凄まじいというかヤバいなあと感心してしまいましたが、事件の構図自体は意外とシンプルで、出番は少なかった朔も思わぬ一面が見れて良かったです。
読了日:11月08日 著者:織守 きょうや
面倒くさい人のトリセツ: 職場の“ストレス源"に翻弄されない知恵 (KAWADE夢新書)の感想
どこの職場にもいる「面倒くさい人」。そんな相手に対応しているフリを演じつつも、肩すかしのような「対人術」で自分を防衛する知恵と方法を解説する一冊。「対抗心を燃やす人」「自己アピールしたがる人」「責任逃ればかり考えている人」「杓子定規で融通がきかない人」「小さなことで大騒ぎする人」など12のタイプの傾向と対策を解説。読んでいて複合的な人も結構いたりするのかなとも感じつつ、つまるところ結論としては無理に相手を変えようとしない、分かり合おうとしない、相手の心理メカニズムを知って冷静に対応するあたりなんですかね。
読了日:11月08日 著者:榎本博明
たとえあなたが骨になっても 死せる探偵と祝福の日 (集英社オレンジ文庫)の感想
殺されても謎解きをやめない凛々花先輩。死者の声が聞こえる探偵部の朝戸雄一は彼女の頭蓋骨を密かに抱え、謎に飢えた彼女の好奇心を満たすため、自分だけが聞こえる凛々花の声を頼りに次々起こる事件を追うミステリ。死を呼ぶ先輩と死者の声を聞ける主人公が近くで起きる路上で発見された小指、バレンタインの変死体、奇妙な脅迫状、学校の屋上からの墜落死の真相。その関係には何とも危うさも感じさせますけど、二人で事件を解決してゆく展開はテンポも良くて、彼女の兄の登場で浮上してきた先輩の実家・後光院家との因縁も気になるところですね。
読了日:11月09日 著者:菱川 さかく,清原 紘
後宮の木蘭 (角川文庫)の感想
父と兄を謎の獣に殺され、後宮で姿を消した姉を探すために宮女になった名門武家の娘・黎木蘭。様々な恐ろしい噂が飛び交う中、黒い官服をまとう許婚・劉覇と11年ぶりに再会する中華風ファンタジー。西からきたとある怪物に支配されつつある後宮を舞台に、姉の行方を探し求める無鉄砲気味な木蘭と、冷たい態度を取りながら彼女を気にかける劉覇。わりとさくさく進んでいく展開の中で、うじゃうじゃ敵がいるのに突っ込もうとする木蘭はよく最後までたどり着けたなとも思いましたけど、この二人の結末は一応ハッピーエンドだったんでしょうか...。
読了日:11月09日 著者:朝田小夏
お探し物は図書室までの感想
仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。案内されたレファレンスコーナーで司書さんが一風変わった選書をしてくれる物語。婦人服販売に行き詰まりを感じる女性社員、雑貨店主を夢見る経理部員、子供を生んだ雑誌編集者の複雑な想い、夢破れ仕事も辞めたニート、そして定年退職した夫。無愛想なのに聞き上手なインパクト抜群の司書さんが、適切なオススメとちょっと変わった一冊とともに渡してくれる付録が印象的で、意外な本との出会いをきっかけに新しい道を見出してゆく、そんな著者さんらしさが詰まった物語でした。
読了日:11月09日 著者:青山 美智子
となりの彼女と夜ふかしごはん ~腹ペコJDとお疲れサラリーマンの半同棲生活~ (電撃文庫)の感想
仕事漬けの毎日にすっかり憔悴しきっていた大手スーパーの文具部門で新任マネージャー・筆塚ヒロト。深夜帰宅後につまみを作って酒を飲むことが趣味の筆塚が、お隣の腹ペコ女子大生・カンナと出会うお仕事小説。憧れの食品部門から異動して戦意喪失気味だった筆塚と、鍵を無くして部屋に入れない腹ペコ女子大生・カンナの運命的な邂逅。酔っ払ったカンナのギャップは興味深かったですが、絶望に直面していた二人が美味そうな深夜メシで意気投合してお互いに刺激を受ける中で、見落としていた大切なことに気づいていく展開はなかなか良かったですね。
読了日:11月10日 著者:猿渡 かざみ
日和ちゃんのお願いは絶対2 (電撃文庫)の感想
世界が崩壊しつつある中、絶対的なお願いの力で世界を救おうとする日和と普通の高校生・深春の恋。けれど深春の幼馴染・卜部の存在が日和の心に小さな影を落とす第二弾。大切な恋人の日和と幼馴染の卜部には仲良くなってほしいと願い、三人で一緒に自分が生まれ育った地元を案内することにした深春。それぞれの関係考えたら当然出てくるもやもやに直面して、目をそらさずにお互い本音をぶつけ合えるようになったのは良かったですけど、世界の絶望を救う使命を背負う日和と、一介の高校生でしかない深春の意識の差は思っていた以上に大きいですね…。
読了日:11月10日 著者:岬 鷺宮
三角の距離は限りないゼロ6 (電撃文庫)の感想
再び短くなっていく入れ替わりの時間。秋玻と春珂、二人といられるかけがえのない時間が終わる予感に包まれるなか、春珂が2年4組の解散会を提案する第六弾。矢野と一緒に実行委員になって健気にアピールする秋玻/春珂、そんな彼女たちに戸惑いつつ、どちらが好きなのかはっきりしなくて周囲に相談してみる矢野。矢野も秋玻/春珂も周囲との関わりが増えていって、解散会もまた三人の変化や成長を感じさせてくれてとても良かったですけど、クライマックスに向けてようやく矢野が見出した答えがどんな意味を持つのか、気になるところではあります。
読了日:11月10日 著者:岬 鷺宮
ちっちゃくてかわいい先輩が大好きなので一日三回照れさせたい2 (電撃文庫)の感想
龍之介と花梨が所属する放送部は、文化祭で後輩の星菜や、明るくてフレンドリーな先輩の真衣たちも加わり、猫耳&尻尾のメイド姿のニャンメイドカフェをやることになる第二弾。名前連呼とか凝視とか褒め返しとか龍之介に一日三回、時にはそれ以上照れさせられる花梨のチョロインっぷりには苦笑いでしたけど、流れ弾で周囲のヒロインたちまで被弾している気がするのはご愛嬌というか。でも彼はどこまでも一途で、勘違いやすれ違いはあってもきちんと向き合って乗り越えて、ゆっくりでも確実に絆を深めてゆく二人の両片想いっぷりが微笑ましいですね。
読了日:11月10日 著者:五十嵐 雄策
東京すみっこごはん レシピノートは永遠に (光文社文庫)の感想
高校三年の春。一人の少年の希望を守れなかったことを悔やみ、卒業後の進路にも悩む楓。さらにすみっこごはんの常連たちにも決意の時が近付いて、ずっと二人で暮らしてきたおじいちゃんの身にも異変が生じる第五弾。いつまでもあると思っていた自分の居場所に訪れた大きな変化。避けられないことではあってもさすがに喪失感も大きくて、大きく動揺してしまう楓でしたけど、それでも彼女を支えてくれる人がいて、彼女に生き方を示してくれる人がいて、みんながくれたたくさんの想いを胸に乗り越えようとする楓の姿にぐっと来るものがある結末でした。
読了日:11月11日 著者:成田 名璃子
天才王子の赤字国家再生術8 ~そうだ、売国しよう~ (GA文庫)の感想
大陸西側の有力者が一堂に会する選聖会議に、再び招待を受けたウェイン。実力者たちと前哨戦を繰り広げつつ古都ルシャンへと乗り込むも、選聖侯殺害の犯人という無実の罪を着せられる第八弾。コウモリ外交を全力で貫く覚悟で乗り込んだ選聖会議。そこからの急展開で殺人事件をきっかけにハメられ追い詰められていったはずが、いつの間にか状況をひっくり返しているウェインは流石でしたけど、毎度のことながら窮地を切り抜けはしたものの旨味が少ないですね(苦笑)フラーニャの成長っぷりや目を付けられたニニムが今後どうなるのか気になるところ。
読了日:11月11日 著者:鳥羽徹
やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく2 (GA文庫)の感想
告白したものの小雪が素直な気持ちを伝えられるようになるまで「保留」になった二人の関係。小雪と周囲の関係も変化しつつある中、クラスメイトにデートをそそのかされたり、思わぬ恋のライバルが登場する第二弾。相変わらず察しの良すぎる直哉に恥ずかしがる小雪は可愛かったですが、一方で少しずつ素直になってきたと思える部分もあって、周囲との関係に戸惑いながらも頑張ろうとする彼女だからこそ、思わぬ展開に直面してもいい感じにまとまったのかもしれないですね。でも微笑ましかったあの結末がどんな展開に発展するのか続巻も期待してます。
読了日:11月11日 著者:ふか田さめたろう
週4で部屋に遊びにくる小悪魔ガールはくびったけ! (GA文庫)の感想
両親の離婚で転校してきた無気力な高校生の比良坂聖也。マンションのお隣りに住む大人びた中学生・黒江美沙が彼のことを気に入り、彼の部屋に週4ペースでおしかけるラブコメディ。プロをも目指したバスケを諦め、無気力な『余生』を過ごす聖也と、そんな様々な顔を見せて彼をからかう小悪魔めいた魅力を持つ中学生・美沙。聖也には未だ消化しきれていないバスケへの想いがあって、美沙もまた何とも複雑な事情を抱えていて、そんな二人の邂逅を転機に聖也がこれからどうするのか、二人の関係がどう変わってゆくのかとても楽しみな新シリーズですね。
読了日:11月11日 著者:九曜
尽くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか? (GA文庫)の感想
学園一の美少女・花江りこに逆プロポーズされ、わけのわからないまま新婚生活を始めることになった高校生・新山湊人。尽くしてくれる嫁が可愛すぎて、契約結婚なのか分からなくなっていく新婚ラブコメディ。学校では男子生徒を拒絶気味なのに、家では家事もプロ級で極端に尽くし好きな可愛すぎる嫁・りこ。彼女の真意に突っ込めないがゆえの戸惑いはあるものの、こんな健気な子にがっつり尽くされたら湊人も惚れちゃいますよね(苦笑)両片想いな二人なので安心して甘い生活を楽しめますけど、ここから進展するかどうかは湊人の頑張り次第ですかね。
読了日:11月11日 著者:斧名田マニマニ
手のひらアストラル (創元推理文庫)の感想
福岡市内の高校に通う女子高生・泉と、Q大大学院生の飛木が身の回りで起きた謎を推理してゆく日常ミステリ第二弾。先輩の生徒手帳を他の人に渡すクラスメイトの秘密、選択外科目の試験を一人で受ける先輩の真意、手のひらを傷つける同級生、ロボット大会のリベンジに秘められた思い、黄色い駅を目印にした理由など、二人の謎解きはそれっぽい 解答に辿り着くものの、明確な答え合わせはないんですよね。最後に意外な事実が判明する飛木さんとの関係は相変わらずな感じで、だいぶのんびり屋さんな印象の泉は来年の受験大丈夫なんでしょうか(苦笑)
読了日:11月12日 著者:吉野 泉
ざんねんなオフィス図鑑の感想
「問題地図シリーズ」の沢渡あまねさんによる、アナログで非効率かつ前時代的なオフィスの“あるある"シーンをかるたのような46句の川柳にした一冊。オフィスの残念なワンシーンだったり、アナログゆえにどうしても必要なのになかなか掴まらない上司の決済だったり、それが本当に必要なのか謎のよくわからない思い込みだったり、そんな描かれてゆく様子にあるあると共感するための一冊なんですかね。問題解決へのアプローチが提案されていないので、そういう期待をしながら読むと当てが外れますけど、軽く読むにはいい本なのかもしれないですね。
読了日:11月12日 著者:沢渡 あまね,ワークフロー総研
おいしいベランダ。 あの家に行くまでの9ヶ月 (富士見L文庫)の感想
葉二と婚約者となったものの、大学卒業までまもりが関東で暮らす遠距離恋愛になった二人。両家の顔合わせをきっかけにまもりが多忙を極めてゆく第八弾。つくづく遠距離恋愛に向いてないことを早々に実感する二人。卒業・引っ越し・就職の準備だけでも大変なのに、親たちにまで振り回されて、なのに向こうはピンときてない、そばにいない、挙げ句に…はまもりがブチ切れるのも分かる。でもまもりの危機に葉二はちゃんと駆けつけるんですよね(カッコいい…)。でも思い入れを優先するあまり面倒なことになってしまうまもりについ笑ってしまいました。
読了日:11月12日 著者:竹岡 葉月
ジギタリスの女王に忠誠を 修道院の王位継承者 (富士見L文庫)の感想
二十年間の王位争いで国が荒れたリカー王国。やっと決まった王も急逝し、元修道女の一人娘マーガレットが後を継ぐヒストリカル・ファンタジー。孤立する王宮で味方は成り上がり騎士エドマンドだけ、正統な王の血を引く男ライオネルには見下される中で、国民のためにいい女王たるべく努力し続けるマーガレットが直面する反乱。なかなか厳しい状況でしたけど、それでも半ば意地で奮闘し続ける凛々しい彼女の姿は、見る人が見たら心動かされますよね。そんな彼女だからこそ迎えられた本来あるべきところに収まった結末にはぐっと来るものがありました。
読了日:11月12日 著者:仲村 つばき
メモ活の感想
著者の圧倒的なアウトプットの量・質を支えてきた毎日の「メモ活」。 その情報整理術を公開した一冊。 「段取りメモ」「要約メモ」「スピードメモ」「アイデアメモ」「素材メモ」など、その基本原則から始まって、どんなことを意識してメモするのか、議事録をメモするコツ、メモすべき大切なことなど、脳は忘れるものだということを前提にメモをどう活かすべきかということが書かれていて、これを真似できるかと言われたらちょっと難しい気もしましたけど、仕事にも活用できそうなアイデア、参考にしてみたいと思える部分は結構あったりしました。
読了日:11月13日 著者:上阪 徹
殺人依存症 (幻冬舎文庫)の感想
息子を六年前に亡くした捜査一課の浦杉。その現実から逃れるように仕事にのめり込む彼が連続殺人事件の担当となり、捜査線上に実行犯の男達を陰で操る一人の女の存在が浮かび上がるホラーミステリ。最悪の状況を脱した先に待っていた地獄。破綻した家族から逃れるように家を出て暮らす浦杉たちの調査で明らかになる、加担者たちの犯罪者意識のなさ、彼らを扇動し操って息をするように罪を重ねる女の壮絶な過去。どこまでも救いのない中で浦杉に突きつけられる衝撃の事実と極限の選択は業が深いと慄きましたが、このエピローグだと続きありますかね。
読了日:11月13日 著者:櫛木 理宇
1枚で動け どんなときも結果が出せる人のシンプルな習慣の感想
モヤモヤに素早く対処し、行動力を高めていけるメンタルがあるかどうかで成果は大きく変わる。それを解消する思考・行動習慣を作る「紙1枚に不安を書き出す」のススメを説いた一冊。悩みを書き出して整理する、相手に変わってくれることを期待せず、自分の行動で変えられることを変えていくスピード感と主体性が大事で、目先の目標に囚われすぎずに中長期的にどうすべきかを考える、不安の正体をはっきりさせる、他者からのストレスは消せなくても自分で消せるストレスは解決するなど、改めて自分からアクションしていく姿勢の重要さを感じました。
読了日:11月14日 著者:伊藤 達馬
デルタの羊の感想
念願だった『アルカディアの翼』アニメ化に着手する製作プロデューサー・渡瀬智哉。前代未聞のアニメ参加を決意するフリーアニメーター・文月隼人。アニメに懸ける熱い人々の物語。業界の抱える「課題」が次々と浮き彫りとなり、波乱の状況下で窮地に追い込まれるアニメ作品。最初は次々と変わる構図に混乱しましたが、アニメ業界の問題を描きつつ全ての物語は一つに繋がって、原点に立ち返って厳しい状況の中にも可能性を見出して、熱い想いで人の心を動かし、夢を実現するまで何度でも諦めない往生際の悪い戦いっぷりはなかなか面白かったですね。
読了日:11月14日 著者:塩田 武士
滅びの前のシャングリラ (単行本)の感想
一ヶ月後、小惑星が地球に衝突する。滅亡を前に荒廃していく世界の中で、人生をうまく生きられなかった四人の最期の時を過ごす物語。貧しいながらも二人で懸命に生きてきた静香と友樹の親子、密かに周囲に言えない想いを抱えてきた藤森、静香に会いに来た信士。滅亡不可避となるとやはりこうなってしまうのかな…と考えてしまう殺伐とした展開でしたけど、それでも四人が一緒に過ごした残り少ない日々はかけがえのないもので、locoもまた見失いかけていた大切なものを見出すことができたのかな…幸せとは何かいろいろ考えさせられる物語でした。
読了日:11月15日 著者:凪良 ゆう
この気持ちもいつか忘れるの感想
退屈な日常に絶望する高校生のカヤ。彼の前に現れた爪と目しか見えない異世界の少女・チカと出会い、真夜中の邂逅を重ねてゆく青春小説。生きていることに希望を見いだせないカヤが偶然であった少女の存在。互いの世界に不思議なシンクロがあることに気づき実験を始める二人。かけがえのない日々で大切な存在だからこそ、どうしても許せないことがあって、それがあっさり失われてしまう恐ろしさを何度も突きつけられましたが、だからこそ忘れてしまおうとせずに手放さなくて良かった、そう思える時がいつか来ることを願わずにはいられませんでした。
読了日:11月16日 著者:住野 よる
またもや片想い探偵 追掛日菜子 (幻冬舎文庫)の感想
相変わらず日々「推しゴト」に大忙しの女子高生・日菜子。なぜか彼女の推しが次々と事件に巻き込まれ、妹思いの兄・翔平と共に事件の解決に動き出す第二弾。強盗の犯人として逮捕される特撮俳優、負傷した交番の警官、テレビ出演する大学生クイズ王のヤラセ疑惑、こだわりのラーメンを作る友人の父、弟子の作品横取り疑惑の人間国宝。いや何でそれ推すのよと突っ込みたく人もいましたが、今回も彼女のストーカーじみた執念深い行動力からの推理が冴えわたって、なのにわりと飽きっぽい日菜子に苦笑いでしたけど、追掛家の女はみんなこうなんですかw
読了日:11月17日 著者:辻堂 ゆめ
劇場版 鬼滅の刃 無限列車編 ノベライズ (JUMP j BOOKS)の感想
蝶屋敷での修業を終えた炭治郎たちが、《柱》のひとり、炎柱の煉獄杏寿郎と合流し、闇を往く《無限列車》の中で鬼に立ち向かう映画版ノベライズ。映画は未視聴ですが原作のストーリーをある程度踏襲しつつ、小説らしい肉付けをしながら、鬼との戦いの中で炭治郎たちや煉獄さんの過去エピを交えて展開されていく中、煉獄さんの天然っぷりや強烈なキャラのインパクトが凄まじいですが、その煉獄さんが炭治郎や乗客たちを鬼から見事守りきってみせる姿はカッコ良かったです。わりと読みやすい文章で構成されていて、これなら小学生でも読めそうですね。
読了日:11月17日 著者:吾峠 呼世晴,矢島 綾,ufotable
結婚が前提のラブコメ (3)の感想
牡丹と駿河野がすれ違いの末に別れてしまう原因となった、婚活における大きなジレンマ「仕事と結婚」問題。縁太郎が頭を抱える中、そんな彼のもとにも婚活話が持ち上がる第三弾。直感で仕事を優先してしまう牡丹の仕事と結婚。縁太郎に意識してもらおうとアプローチするカレンと結衣、お見合い話で自らもまた牡丹と同じ問題に直面する縁太郎。ヒロインたちを空回りさせる彼の鈍感ぶりには苦笑いするしかなかったですけど、仲人として奔走する彼の姿勢を思えばこれもまた必然の結末で、ヒロインたちの動向次第ではますます混戦模様になりそうですね。
読了日:11月17日 著者:栗ノ原 草介
ふたり、この夜と息をして (一般書)の感想
顔の痣を隠すため、祖母から教えてもらった化粧をしてひっそりと暮らす男子高校生・夕作まこと。バイトの新聞配達の帰りに、公園でタバコを吸うクラスメイトの女子生徒・槙野と出会う青春小説。何やらワケありのような槙野とお互い踏み込まないまま話す機会が増えてゆく夕作。槙野を通じて広がってゆく交友関係と、偶然知ってしまった彼女が抱えている苦悩。臆病だった夕作の背中を押してくれた槙野もまた誰にも言えなかった孤独を抱えていて、そんな彼女のために勇気を出して向き合おうとする夕作の不器用な優しさにはぐっと来るものがありました。
読了日:11月18日 著者:北原 一
親王殿下のパティシエール(3) 紫禁城のフランス人 (ハルキ文庫)の感想
男ばかりの厨房で疎まれ、ひとり別の場所でお菓子修業をすることになったマリー。それでも清の料理を学び腕を上げたい彼女は、厨房に戻るべくお妃様から認めてもらうため紫禁城で謁見する第三弾。永璘の兄と出会い、彼の父・乾隆帝のお妃様に出会う過程で徐々に明らかになってゆく清国とフランスとのマナーの違い、清国内におけるマリーの立ち位置、そして永璘が自由に絵を描けない理由。様々なことを見聞きして改めて自分の目指すべき道を模索し始めたマリーですけど、永璘との一言では言い表せない何とも複雑な関係の行方も気になるところですね。
読了日:11月18日 著者:篠原悠希
放課後の嘘つきたち (ハヤカワ文庫JA)の感想
幼馴染で同級生の白瀬麻琴に誘われ、部活連絡会を手伝うことになったボクシング部の寡黙なエース・蔵元修が、周囲で起きるトラブルを解決してゆく連作青春ミステリ。カンニング疑惑のある演劇部、陸上部の幽霊騒動や映画研究会の不可解な作品改竄など、皮肉屋なもうひとりの特待生・御堂慎司も加えて、時には衝突しながらタイプの違う修と御堂の二人をメインに謎解きに挑む展開で、同時に人に言えない苦い過去が、彼らのありようにもそれぞれ暗い影を落としますが、それらを癒やす何とも皮肉な構図がなかなか効いていて、とても印象的な物語でした。
読了日:11月19日 著者:酒井田 寛太郎
ホテルクラシカル猫番館 横浜山手のパン職人 3 (集英社オレンジ文庫)の感想
秋冬の繁忙期を迎えようとするホテル猫番館。販売用の新作パンのアイディアを練っていた紗良の前に、ふさわしいほうをパン職人として採用ほしいというかつての同級生・秋葉が現れる第四弾。学校時代から紗良のライバル視する秋葉と同僚として働いたり、貴婦人たちのアフタヌーンティ、自信をなくした同業のお客様が選ぶホテルブレッド、12月の優しいまかないシュトレンなど、紗良や働くスタッフたち、ひいては猫番館の真摯なありようが、いい感じに影響を及ぼして行き詰まっていた顧客の転機に繋がっていく感じが個人的にとてもいいなと思います。
読了日:11月19日 著者:小湊 悠貴,井上 のきあ
公女殿下の家庭教師7 先導の聖女と北方決戦 (ファンタジア文庫)の感想
東都から始まった戦乱が王国全土へ広がりを見せる中、奮闘の末に囚われてしまったアレン。そんな状況で北都で残された教え子たちが奮闘する第七弾。囚われたアレンが出会った一人の少女、今自分ができることを一生懸命に考えて奮闘する教え子たち、そして兄を救うため西都に向かう妹・カレン。今回のそれぞれが力を発揮して、戦況を覆していく展開もなかなか華々しかったですけど、南の方で壮絶なことになっているアレン依存症の彼女はどうなってしまうのか...今の戦いを乗り越えて、またあの楽しい日々をみんな揃って迎えて欲しいところですね。
読了日:11月20日 著者:七野りく
幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら2 怖かった幼馴染が可愛い (ファンタジア文庫)の感想
妹の家庭教師をきっかけに、距離が近づいていく幼馴染の愛沙と康貴。壊れるのを恐れる想い、だけど抑えきれない好きという気持ちを抱え、二人は花火デートへ出かける第二弾。女子会に引っ張り出されたり、バーベキューやお墓参り、合宿や花火大会といった一緒にいる機会が増えていって、もどかしい二人をサポートしてくれるまなみの存在もあって、おっかなびっくりな感じだった不器用な二人も頑張って、どうにかこうにか関係を前に進められましたかね(苦笑)ここからどんな二人が距離感になっていくのか、新展開もありそうで次巻も期待しています。
読了日:11月20日 著者:すかいふぁーむ
幼馴染をフッたら180度キャラがズレた (ファンタジア文庫)の感想
かつて告白された大人しい幼馴染・月本六華を振ってしまった天本照彦。高校入学で再会し異様にハイテンションなキャラになっていた六華が、今度こそ惚れさせると宣言してくる青春ラブコメディ。久しぶりに再会した彼女の変貌ぶりと、ぐいぐい来られる展開に困惑する照彦。振った照彦もまた不甲斐ない自分を変えるべく中学時代頑張っていて、そんな二人のハイテンションラブコメかと思って読んでいたら、意外な真相が明らかになっていってじんわりと来ました。ツメの甘さが招いた急展開がどんな波乱を巻き起こすのか、続巻に期待の新シリーズですね。
読了日:11月20日 著者:はむばね
世界一かわいい俺の幼馴染が、今日も可愛い (ファンタジア文庫)の感想
幼馴染・浅倉凛に片想いしながらも、なかなか告白できずにいる高校生・米倉透。ネットから小説家を目指す彼が、SNSに思いを発信したひとつの想いから、クールな彼女態度が変わりはじめる青春ラブコメディ。お弁当を作ってくれるようになったり、映画を見に行ったり少しずつ変わる二人の関係。少しずつ積み上げてきた想いに応えたいがゆえの透の焦燥。かつて透にたびたび救われきた凛という過去が、頑張ろうとして空回りする彼を凛が見守って支える構図に繋がっていて、支え合って成長してきた二人が迎える結末にはぐっと来るものがありましたね。
読了日:11月21日 著者:青季 ふゆ
豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたい10 (ファンタジア文庫)の感想
シャーロットを想う気持ちを力に、学園や国の危機を何度も退けてみせたスロウ。そんな彼のもとに公爵家から新たな専属従者候補が送られてくる第十弾。一見ドジっ子に見えるミントがスロウのもとに送られてきた理由。これまで静観していた父・バルデロイとの再会。スロウの姉・サンサもなかなか楽しい存在で、単純ではない様々な思惑が交錯する公爵家を巡る闘争では、シャーロットも存在感を見せて熱い戦いや意外な展開もあったりする一方、公爵家のしたたかな一面も伺えてなかなか面白かったんですけど、最後のこれはちょっと残念でしたね…うーん。
読了日:11月21日 著者:合田拍子
神招きの庭 2 五色の矢は嵐つらぬく (集英社オレンジ文庫)の感想
兜坂国滅国の危機を救い、春宮となった二藍の妃となった綾芽。今度は隣の大国・玉央の神が兜坂国に凶作をもたらす神命を下す第二弾。災厄を回避するための策を模索する二藍たちの奔走。一方神ゆらぎの二藍を人に戻すため、人に戻る方法を探す綾芽。思わせぶりなライバルっぽいヒロインとか恋敵的存在が現れたり、思うところも伝わらないしでお互いにやきもきする展開でしたけど、国難とともにそれを乗り越えて、二人の距離感的にも一歩前進する展開にはぐっと来るものがありました。それにしてもやってきた祭官がまた波乱を呼び起こしそうですね…。
読了日:11月22日 著者:奥乃 桜子,宵マチ
高校事変IX (角川文庫)の感想
フェリーでの激闘から数日。公安の監視を受けながら学校生活を送る優莉結衣はストレスで高熱に倒れ、多くを失い手負いの獣と化した勇次は民家に潜伏し、復讐の機会を虎視眈々と狙う第九弾。もう全てを失った勇次がなりふりかまわなくなって、結衣も本調子でないままの戦いはさすがに厳しかった感もありましたけど、そんな状況でも窮地に活路を見出していく結衣は凄まじかったですね。あれ隠蔽しちゃうのもすごいですけど(苦笑)結衣の進路というか18歳になってどうなるのか、兄弟姉妹たちとの関係も気になりますし、長男との対決あるんですかね。
読了日:11月22日 著者:松岡 圭祐
マネジメントの文明史 ピラミッド建設からGAFAまでの感想
古代エジプトのピラミッド建設から近代のコロンブス、マゼラン、東インド会社を経て会社の誕生の軌跡、そして英国、ドイツ、米国といった各国の産業発展の歴史を追っていく経営読本。会社が設立以前の時代にはどのようなマネジメントが行われていたのかといった解説に始まって、当時の各国を取り巻く情勢や変化を取り上げてなぜそのような選択がなされたのか、海外へ進出していったスペインやポルトガル、オランダとそこから後発の英国が覇権を握った理由、また英国の産業革命からドイツやアメリカの違いなど、なかなか読みごたえのある一冊でした。
読了日:11月23日 著者:武藤 泰明
このライトノベルがすごい! 2021の感想
今年は文庫ランキング掲載のうち総合で32/40冊、新作で18/26冊は読んでました。自分は好みでないものはもう無理して手を出していないので、カバー率的にはこんなものですね(苦笑)今回はアンケート参加者がぐぐっと増えて協力者も新規参加の人たちが増えて、ランキングもだいたい納得の順位。上位はだいぶ入れ替わった感もありますが、この手の本では作品開拓に期待したいところでなので、作品の新陳代謝はあってもいいのかなと思いますし、ここ数年は試行錯誤が続いていましたが、これくらいの塩梅がちょうどいいのかもしれないですね。
読了日:11月24日 著者:
民主主義とは何か (講談社現代新書)の感想
ポピュリストや権威主義国家の台頭など、近年の世界の政治状況は、民主主義の根幹を揺るがす状況の中、民主主義とは、そもそもどのような制度なのかを正しく知るための一冊。古代ギリシアのアテナイにおける民主主義の誕生から西欧における議会制、アメリカの独立、フランス革命、代議制民主主義や様々な形を取り上げた上で、日本の民主主義のことも取り上げていて、民主主義そのものの可能性を考えつつ理想と現実のバランスをどう取っていくのか、民主主義を実現し続けることの難しさと同時に、個々の参加や責任の意識の重要性を改めて感じました。
読了日:11月24日 著者:宇野 重規
ぼくたちのリメイク8 橋場恭也 (MF文庫J)の感想
プラチナ世代と呼ばれるであろう皆が頭角を現し始め、自らの道を模索し始めた恭也。そこで加納先生の提案を受けて、とあるゲーム会社でバイトを始める第八弾。それぞれ新しい道を進み始めた貫之、ナナコ、シノアキたち。バイト先で出会ったポテンシャルの塊な後輩。新しい後輩キャラの立ち位置も気になるところですけど、恭也も試行錯誤しながら自分の新たな道を模索していく様子がなかなか興味深かったです。改めてプロデュースする仲間たちとの距離感や関係も、これから難しいものになりそうな予感も感じつつ、とりあえず次はシノアキ回ですかね。
読了日:11月24日 著者:木緒 なち
殺したガールと他殺志願者 (MF文庫J)の感想
『最愛の人に殺されたい』と願う高校生・淀川水面が、『最愛の人を殺したい』願望を持つ少女・浦見みぎりを紹介され、最高のデッドエンドを手に入れるべく協力関係を結ぶ物語。死神を名乗る女から紹介され、互いの望みを叶えるために動き出した二人。救いのない人生を生きてきて、未来に希望もなくて、けれどお互いを知ってゆくうちに自覚してしまう想い。心境の変化が垣間見えて、だからといって軌道修正できない不器用さには苦笑いでしたけど、遠回りしてようやく向き合った彼らがこれからの困難をどう乗り越えるのか、続巻に期待のシリーズです。
読了日:11月25日 著者:森林 梢
同い年の先輩が好きな俺は、同じクラスの後輩に懐かれています (MF文庫J)の感想
交通事故のせいで高校浪人を余儀なくされた高村颯太。かつての同級生・倉咲千春に告白すべく一年遅れで入学した高校で、陸上部の後輩だった藤本青海に再会する青春ラブコメディ。高校浪人であることを隠しながら、先輩となった倉咲さんに告白しようとして空回りする颯太と、そんな彼にグイグイ懐いてくる同級生・青海。そんなもどかしい状況に過去に事情を抱える周囲のヒロインたちも絡めながら、だんだんと物語の構図が見えてくる展開でしたけど、いろいろ捻れたり隠されている真相をこれからどう使ってくるのか、今後が楽しみな新シリーズですね。
読了日:11月25日 著者:凪乃 彼方
進路希望調査に『主夫希望』と書いたら、担任のバツイチ子持ち教師に拾われた件 (ダッシュエックス文庫)の感想
高校三年の春、進路希望調査に『主夫』と書いて提出し続ける少年・巽健斗。そんな健斗に対して担任のバツイチ子持ちな美人教師・黒羽遥香に将来的な結婚を提案する年の差ハートフルストーリー。家事万能で面倒見のいい健斗と、私生活がズボラな遥香の相性は抜群で、彼と遥香の娘・千鶴と仲良くほのぼの展開には癒やされましたが、一方で健斗も遥香も明らかになる過去はなかなか壮絶で、よく出会うまで破綻しなかったなとも感じましたけど、お互いの事情を理解しながら向き合って、二人と娘で少しずつ構築してゆく優しい関係が楽しみなシリーズですね
読了日:11月25日 著者:yui/サウスのサウス,なたーしゃ
沙漠と青のアルゴリズムの感想
悩める新米編集者・未歩が遭遇した首なし死体の謎。彼女がスランプに陥っていたセンセと共に、時空さらには虚実を行き来しながら真相を追うSFミステリ。2028年、滅亡の危機に瀕した日本人とノルウェーに避難した少年・ヒカル。現代の長期間スランプ状態のセンセと友人画家Kの因縁。漱石、ポオ、サン=テグジュペリ、AIも絡めて、最初はいくつもの視点が頻繁に切り替わってやや分かりづらい点もありましたけど、それぞれのストーリー、夢と現実もまただんだんひとつに繋がっていっていくことで見えてくる結末がなかなか濃厚な物語でした。
読了日:11月26日 著者:森 晶麿
十の輪をくぐるの感想
認知症を患う80歳の母・万津子を自宅介護しながら、スミダスポーツで働く泰介。万津子がテレビのオリンピック特集を見た時の意味深な呟きを聞き、知らなかった母の過去を調べ始める物語。選手として挫折し慣れない仕事をする中、介護で家族とギクシャクし、選手として注目される娘に複雑な想いを抱く泰介はあまりにも残念な存在でしたが、何も語らない母には過酷な過去を乗り越えた決意があって、これまで支えてくれた妻の存在があって、娘の勇気ある一言から泰介が新たな一歩を踏み出し、人生が変わってゆく展開にはぐっと来るものがありました。
読了日:11月26日 著者:辻堂 ゆめ
お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について (角川スニーカー文庫)の感想
お見合い話を持ってくる祖父に辟易した高校生・高瀬川由弦が「金髪碧眼色白巨乳美少女なら考える」と無理難題をつきつけたら、お見合いに同級生の雪城愛理沙がやってきてしまう偽装婚約ラブコメディ。十五歳から結婚できるようになった世界。雪城愛理沙もまた家の事情があって利害一致から始まった偽装婚約。家が資産家の由弦はいい感じに落ち着いて余裕もあって、彼をきっかけにいろいろ世界も広がっていって、最初はそんな気が全然なかった彼女も確実に変わりつつありますね…ここからお互いにどう変わってゆくのかとても楽しみな新シリーズです。
読了日:11月27日 著者:桜木桜
それでも、あなたは回すのか (新潮文庫)の感想
編集者になりたくて出版社を受けるも、就職活動がまったく上手くいかず、ソーシャルゲーム開発会社に入社した友利晴朝。そんな彼が同期の青塚凛子と「サ終(サービス終了)」と呼ばれる赤字チームに配属されるお仕事小説。拾い上げからから始まった社会人生活で待っていたのは自社のゲームプレイ。周囲の言葉も刺さって、少しずつやるべきことの理解を深めていった中で起きたチームの危機。今できることをやろうと奮闘した結果自体は及第点でも、自らは本当にこれだけしかできなかったのか。突きつけられた悔しさを乗り越えて頑張って欲しいですね。
読了日:11月27日 著者:紙木 織々
むすぶと本。 『嵐が丘』を継ぐ者 (ファミ通文庫)の感想
本の声が聞こえる少年・榎木むすぶが、学園のアトリエを訪れると泣いていた妖精。むすぶは悠人先輩から妹が本に罹患しているのではという深刻な相談をされる第二弾。万引される本たちの悲しみ、サッカー部・赤星に言い寄られ困るハナちゃん、悠人先輩の妹・蛍が抱える複雑な想い、赤星がひた隠すコンプレックス、そして夜長姫との出会いのエピソード。人の心の機微には疎いけれど、辛い思いをしている本や人のことを放っておけなくて、だからこそむすぶはみんなに愛されるんですよね。夜長姫の嫉妬も可愛いけど、ハナちゃんとの今後も気になります。
読了日:11月27日 著者:野村 美月
精霊幻想記 18.大地の獣 (HJ文庫)の感想
聖女を名乗る六人目の勇者エリカの手によって拉致されたリーゼロッテ。国王の承認を得て奪還に乗り出したリオは、彼女の筆頭侍女アリアと共に聖女の追跡を開始する第十八弾。囚われの身となって、神聖エリカ民主共和国の現状を目にするリーゼロッテ。国として機能していない状況を勇者の神装が引き起こす奇跡と盲信で塗り固める虚構は、それこそカリスマと狂信者たちの構図でしたけど、復讐に燃えるエリカの狂気と実力は厄介で、そんな相手と因縁を抱えてしまったことは今後の展開に影響しそうですね…監視していたレイスの打った手も気になります。
読了日:11月28日 著者:北山結莉
夢見る男子は現実主義者 3 (HJ文庫)の感想
夏休みなのに古本屋のバイトで働き詰めの渉。そんな中姉に頼まれて受験する中学生の学校案内をする風紀委員の手伝いに渉が駆り出される第三弾。風紀委員で裏方作業に奔走して先輩達に褒められたり、古本屋をきっかけに笹木さんや同級生の一ノ瀬さんとも話すようになる渉の充実感は印象的で、一方渉をきっかけに不器用な愛華の人間関係が構築されていたと自覚していく構図はそうだったのか…とやや意外でしたけど、まあ多少モテても渉自体は相変わらずブレずにベタぼれなので、今後の展開は愛華次第ですか…渉も頑張ってるしうまく行くといいですね。
読了日:11月28日 著者:おけまる
放課後の宇宙ラテ (新潮文庫)の感想
高校生になって超常現象なんか信じない平凡な青春を過ごすつもりだった圭太郎。しかし幼馴染の未想が持ってきた数理研の廃部室の鍵が、退屈な日々を一変させる青春SF小説。実質オカルト研だった数理研の部室で出会った自称超能力者の転校生・曖。彼女の消えた夏休みの記憶と怪しいの機械を自作しての人体実験。仲良くなってからはほんと楽しそうだなあと読んでいたら、後半は思ってもみなかった斜め上の展開が待っていて、いろいろツッコミを入れたくなりましたけど、それを何となくいい感じにまとめあげていった着地点はなかなか良かったですね。
読了日:11月29日 著者:中西 鼎
君と奏でるポコアポコ ――船橋市消防音楽隊と始まりの日 (新潮文庫)の感想
兄からの頼みで船橋市消防音楽隊の説明会に参加した女子高生・栗原優芽。幼馴染の笹木智子とともに参加を決めた優芽が、楽団の危機に仲間たちとともに奮闘する青春小説。市民隊員募集で出会った憧れのフルート奏者・近藤奈々子の存在、流れを変えようとする若手に不満をもつ存在、そして明らかになる楽団存続の危機。全体的にやや展開が早かった感もありましたけど、消防団の中にある音楽隊が存続する難しさやそれぞれの人間模様も描かれて、ぶつかり合いながら成長して、紆余曲折の末にまとまった楽団にもたらされた結末はなかなか良かったですね。
読了日:11月29日 著者:水生 欅
新米占い師はそこそこ当てる (集英社オレンジ文庫)の感想
英国人占い師を祖母に持ち、幼い頃から占いの才能があった萌香。占いのせいで周囲と上手くいかなくなった過去から占いを封印する彼女が、祖母の帰省中になりゆきから占うことになる物語。追い詰められた依頼人に同情し、チャレンジしてみることになった萌香。過去のトラウマから占いに自信がなかった萌香でしたけど、彼女を気にかけてくれる幼馴染・翼の的確なサポートや、依頼人の薫子さんたち大人がいい人だったこともあって、お友達の難しい依頼や過去にも向き合って何とか乗り越えられましたかね。幼馴染との関係も気になるので続刊に期待です。
読了日:11月30日 著者:きりしま 志帆,ヒコ
雪の名前はカレンシリーズ (講談社ラノベ文庫)の感想
冬時間から転生生物が襲来するオリガ戦没記念都市。過去に失敗し底辺を彷徨う四季オリガミが、心を代償にして迎撃する人工天使の赤朽葉カレンと運命的な出会う終末ファンタジー。心を取り戻したいカレンと付き合うことになったオリガミと、カレンと同じく人工天使としていずれ死ぬ定めにある幼馴染や義妹たちとの関係。彼女たちの想いと覚悟が垣間見えるからこそ、ネガティブなオリガミには共感するのが難しかったですが、絶望な状況でも希望を見出そうとした彼女たちの奮闘がもたらしたもうひとつの結末には、どこか救われた気持ちになりましたね。
読了日:11月30日 著者:鏡 征爾
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