先日から講談社ラノベ文庫が9周年フェアということで、各種電子書籍ストアでセールを開始しているようです(セール期間は各オンライン書店によって違う模様)。
いい機会なので講談社ラノベ文庫の個人的おすすめを20作品セレクトして紹介したいと思います。そこまで長くないシリーズ既刊+最近の新刊おすすめの構成です。何か読んでみたいなとなった時の参考になれば幸いです。
1.生徒会探偵キリカ1 (講談社ラノベ文庫)
ふとしたきっかけから、巨大一貫校の莫大な予算を扱う生徒会に巻き込まれ、生徒会会計兼探偵のキリカと一緒に解決する探偵物的なお話なんでしょうかね。個人的にはミステリ部分よりもコメディ的な要素を期待して読んだので、生徒会の個性的で魅力的な面々や、ツッコミ役兼詐欺師のヒカゲらの掛け合いも面白かったですし、郁乃や朱鷺子といった脇役もいい味を出していて、このドタバタ加減が自分好みだなと感じました。全6巻。
関連シリーズ:生徒会探偵キリカS1 (講談社ラノベ文庫)
2.友達いらない同盟 (講談社ラノベ文庫)
妙なこだわりで高校で友達ができない新藤大輔に、存在感のないクラスメイト澄田が持ちかけてきた困ったときに助け合う「友達いらない同盟」そんな同盟から始まる二人の物語。それぞれが複雑な家庭事情を抱えてはいるけれど、一見同じようでいてまるで対照的な新藤と澄田。グループから浮いた城ヶ崎も加わって三人で楽しそうに見えたのに、なぜか澄田が距離を置くようになってゆく危機的状況でしたが、本音で引き留めようとする新藤の提案はかなり無茶苦茶でしたね(苦笑)このレーベルでたまに出てくる不思議な魅力のある物語ですね。全2巻。
3.公園で高校生達が遊ぶだけ (講談社ラノベ文庫)
昔からの幼馴染、瀬川エリカと吾妻千里。そんな二人とその友人たちを中心とした公園でのやりとりや日常が描かれる青春小説。お隣さんな二人の家の近くの公園で繰り広げられる仲間とダベったり野球をしたり、走り回ったり少し喧嘩したりのありふれた日常。でもそんな中にも幼馴染の二人が積み重ねてきた様々なことや、傍から見たら何で付き合っていないの?とついちょっかいを出したくなる二人の確かな絆があって、それでいて相手の知らないことに遭遇すると思わず動揺してしまう関係が微笑ましくて、何かじわじわとこみ上げてくるものがありました。
4.クロックワーク・プラネット (講談社ラノベ文庫)
いったん現代の地球が死に絶えて全てが時計・歯車で再構成された世界で、偶然出会った眠り姫のような毒舌ツンデレオートマタ・リューズと、凄まじい聴力の良さを活かして200年ぶりに彼女を復活させたナオト、そしてもう一人の天才技師マリーたちとの、2人の天才の出会いから始まるお話です。地球をまるごとオーバーホールして世界を救うという、テロリストにしては壮大過ぎる目標を掲げた彼らのいちいち可愛い言動と、スッキリとした世界観が自然な感じで溶け込んでいて、素晴らしいお話になっていたと思います。現在4巻まで刊行。
5.白翼のポラリス (講談社ラノベ文庫)
人々が陸地のほとんどを失い、いくつかの巨大な船に都市国家を作ってわずかな資源を争う世界。船国を行き来して荷物を運ぶスワローの少年・シエルが、無人島に流れ着いた謎の少女・ステラと巡り合うボーイミーツガール。空を飛ぶことにしか生きる意味を見出だせないシエル。理由を明かさないまま自分を荷物として運んで欲しいと依頼するステラ。その飛行は息苦しかった彼らにとって新鮮だけれど危険の連続でもあって、たびたび衝突しすれ違った彼らが力を合わせて乗り越えようと挑んだそのとても爽やかな結末は、次回作も期待したくなるものでした。現在2巻まで刊行。
6.魔法使い黎明期 劣等生と杖の魔女 (講談社ラノベ文庫)
五百年に及ぶ教会と魔女の対立と数年前に成立した和平。ウェニアス王国王立魔法学校に通う落ちこぼれの生徒セービルが、アルバス学長の命で黎明の魔女ロー・クリスタスや仲間とともに大陸南部に特別実習として向かうファンタジー。目的地への道中で何度も襲われる一方で、明らかになってゆく同行する仲間たちの事情。いかにもなゼロたちの登場には思わずニヤリとしてしまいましたが、訳ありなセービル、魔女ロー・クリスタスやホルト、クドーといったキャラたちもよく動いていて、ここからどんな物語が展開してゆくのか楽しみな新シリーズですね。現在2巻まで刊行。
7.こんな僕が荒川さんに告白ろうなんて、おこがましくてできません。 (講談社ラノベ文庫)
こんな僕が荒川さんに告白ろうなんて、おこがましくてできません。
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清水 苺/シソ 講談社 2017年09月01日頃
成績優秀だがクズを自認する浅井悠馬が偶然クラス演劇主役を演じることになり、幼馴染の明日香とともにクラスの中心に君臨する荒川唯のグループに巻き込まれてゆく青春ラブコメディ。行動をともにする機会が増えてゆく唯の見た目とは全然違う純真さとひたむきさ。少しずつ惹かれてゆく悠馬が知ってしまった唯のらしくない秘密。何ともほろ苦い気持ちを抱えながら、それでも彼女のために奮闘する悠馬の姿は心に響きましたが、だからといって頑張れば報われるとは限らないのが現実で、そんな迷える彼らの行く末を続巻でまた読んでみたいと思いました。現在2巻まで刊行。
8.シンデレラは探さない。 (講談社ラノベ文庫)
お城のような五十階建てのタワーマンションにはお姫様が住んでいる。自分には関係のない存在と思っていた高校生の荒木陣が、その最上階に住む同級生・真堂礼と出会う青春小説。妹・舞の看病で学校を休んだ陣にプリントを届けに来たことで始まった礼との関係。無自覚系の陣相手にポンコツでチョロインになってしまう礼でしたけど、そんな彼女を応援する友人コンビもなかなか面白くて、陣を見続けてきた彼女だからこそ気づいた彼の想いがあって、不器用な彼女が陣の家族にも温かく迎えられ幸せになってゆく二人の関係をまた読んでみたいと思いました。
9.失恋後、険悪だった幼なじみが砂糖菓子みたいに甘い ~ビターのちシュガー~ (講談社ラノベ文庫)
失恋後、険悪だった幼なじみが砂糖菓子みたいに甘い 〜ビターのちシュガー〜
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七烏未 奏/うなさか 講談社 2020年10月02日頃
辛い失恋で体調を崩し、学校を休んでしまった高校生・沢渡悠。そんな彼のもとに理由もわからないまま険悪になっていた隣の部屋の幼馴染・白雪心愛が現れ、看病をきっかけに関係を再構築してゆく物語。再び悠を構うようになった心愛に首を傾げながらも、再び距離が近づいてゆく二人。彼女との触れ合いの中で傷付いた心を癒やされていく悠と、不器用な心愛の秘めていた想い。大きすぎる喪失感を簡単には切り替えられなくても、けれど彼女や周囲に支えられて積み重なってゆく想いがこれからどんな変化をもたらすのか、今後が楽しみな新シリーズですね。
10.それでも、好きだと言えない (講談社ラノベ文庫)
夏の終わりに事故に遭いかけた有馬悠人を救ってくれた記憶喪失の幽霊の少女・レイナ。彼女に取り憑かれた悠人が、成仏させるために記憶を取り戻す手助けをする青春小説。人付き合いが苦手な悠人が手がかりを探す過程で得た憧れの白浜美波との繋がり。レイナに支えられながら少しずつ自分を出せるようなって、周囲との関わりも変わってゆく悠人。意外なところから明らかになった過去でしたけど、レイナのために奔走する悠人の言葉にできない、彼女と積み重ねてきた想いが切なくて、残してくれた大切なものを胸に生きる悠人の姿が印象的な物語でした。
11.ヤンキーやめろ。メイドにしてやる (講談社ラノベ文庫)
代々執事の家系で日本有数の名家・鶴ヶ島家の次女麻白に仕える久世太一郎。麻白お嬢様から新たな専属メイドを探すよう申しつけを受けた彼が、買い出しに出かけた先で出会ったヤンキー少女ハナをメイドとして勧誘する物語。仕事をスマホで動画を撮って覚えるあたりがハナらしいですが、事あるごとに衝突するヤンキー気質のハナとお嬢様麻白の相性は最悪でも、テンポよく進むドタバタ展開の中でお互いいろいろ見えてくるものがあって、そんな二人が育んでゆく不器用な主従関係の結末はなかなか良かったですね。
12.あなたのことを、嫌いになるから。 (講談社ラノベ文庫)
感情が昂ぶると最悪死に至る病『感情性自己免疫疾患』。そう診断されて以来、感情を無価値なものだと思い生きてきた四東愛都が、笑顔を絶やさない元気なクラスメイト奈々川恵実と出会う青春小説。事情を知らないまま一緒に過ごす時間を増やしていく積極的な恵実、愛都を見守ってきたいとこの春乃と主治医の橙香。命を落とすかもしれないと知りつつも育まれてゆく感情と、大切な存在だからこそ分からなくなってゆく複雑な想いがあって、手放したくない共にありたいと葛藤し続けた二人の選択がとても印象的な物語でした。
13.中古(?)の水守さんと付き合ってみたら、やけに俺に構ってくる (講談社ラノベ文庫)
中古(?)の水守さんと付き合ってみたら、やけに俺に構ってくる
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弥生 志郎/吉田 ばな 講談社 2020年04月30日頃
女性不信で恋愛に消極的な高校生十神里久が、放課後に探し物をしていた水守結衣を助けたことをきっかけに、学校で有名なビッチとして噂されて孤立する彼女と付き合い始める青春ラブコメディ。水守の告白に恋愛感情はないけれど、彼女にもっと自分を大切にしてほしいからと付き合い始めた十神。二人の交際は十神の評判を気遣って学校では秘密で、そんな二人を応援する風紀委員長のような人もいて、そんな彼女の素顔を知っていった十神が、水守の窮地を救うために立ち上がる王道展開にはぐっと来るものがありました。続巻にも期待の新シリーズですね。20年12月末に2巻目が刊行。
14.真面目系クズくんと、真面目にクズやってるクズちゃん #クズ活 (講談社ラノベ文庫)
真面目系クズくんと、真面目にクズやってるクズちゃん #クズ活
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持崎 湯葉/いたち 講談社 2017年09月29日頃
クラスの立ち位置を気にする真面目系クズの八卜が、性格の悪い黒内に絶対見られたくない場面を見られ、それをネタに八卜の潜在的クズを開花させるべく一緒にクズ活することを強要される青春小説。二人がクズ活を続ける過程で関わってゆく聖人君子のような白庭さんと、幼馴染なのに学校では交流が断絶しているトップカーストの鈴堂。黒内によって次々と本性が暴かれてゆく一方、相反する複雑な想いや距離感に戸惑う心理描写は繊細で、らしさを自覚してゆく八卜と彼女たちの関係が描かれた今回も期待を裏切らない著者さんらしい怪作でした(褒め言葉)
15.スーサイド少女 (講談社ラノベ文庫)
立入禁止の屋上が主な生息地の高校生・因幡が、そこで出会った先輩の鈴鹿涼子。飛び降り自殺を止めた鈴鹿に興味を覚えた因幡が、いじめられっ子の後輩・小刑部智世とともに鈴鹿のストーキングを始める青春小説。死のうとしては無感動にやめる鈴鹿の背中を押したいと感じ、小刑部のストーキング技術を使って鈴鹿の心情に迫ってゆく因幡。それぞれが抱えるどうにも屈折した想いは複雑で、執着ゆえにその行動もどんどんエスカレートしていって、育まれてゆく奇妙な連帯感をぶち壊し本音でぶつかり合ってしまう不器用な彼らの結末は悪くなかったですね。
16.自殺するには向かない季節 (講談社ラノベ文庫)
ある朝、同級生の雨宮翼が列車へ飛び込み自殺を図るのに関与してしまった永瀬。その自殺が忘れられない彼が友人の深井から過去に戻れるカプセルを手渡され、やり直すために過去へ遡る物語。最初は彼女に関わらないと決意したはずなのに、逆に雨宮に関わる機会が増えてしまう永瀬。そんな彼に改めて突きつけられる「蝶は羽ばたかない」という事実。それでも当事者の変えようとする意志によって変わることもあって、多くの人にとってはさほど変わらない、けれど確実に変わったその結末に、一抹のほろ苦さを感じながらもどこか救われる思いがしました。
17.わんでいりぴーと! (講談社ラノベ文庫)
憧れの同級生小夜原さんに告白したものの「顔面がジャガイモみたいな人とは付き合えません」と振られた紙白九炉。しかし彼女とうまくやらないと同じ日を繰り返すループに巻き込まれる青春小説。秘密を抱えた面倒くさい残念美少女・小夜原さんと仲良くなってゆく日々に突如現れた、もう一人の繰り返す要因・繊月仄火の存在。違う意味で面倒な仄火にも振り回されるようになってからの急展開にはびっくりしましたが、大切なものを自覚した九炉の決意と何度失敗しても諦めずにチャレンジし続けてようやく引き寄せた結末にはぐっと来るものがありました。
18.二線級ラブストーリー (講談社ラノベ文庫)
生徒会副会長の松尾家之助が片思いする書記の月本紗姫は、親友で会長の一ノ瀬秋にぞっこん。しかし秋の秘密を知ったことから話がややこしいことになっていく物語。斜め上の展開が続くうちにそれぞれが相手に寄せる尋常ならぬ思いも明らかになっていって、自分本位に手段を選ばず突き進んで泥沼にもなりますが、自分の思いや向けられた想いにきちんと向き合うことで見えてくることもありますね。紆余曲折の末に収まるべきところに収まった奇妙な三角関係。あくまで思いを貫こうとする三人のありようが、とても印象的な物語でした。面白かったです。
19.未完結ラブコメと運命的な運命論 (講談社ラノベ文庫)
「もっと運命的な恋がしたいから」と彼女にフラれた高校生・砂川凍弥。そんな彼の前に謎の空飛ぶプリンが現れるラブコメディ。異なる世界線から来たラブコメのヒロインを攻略できなければ死ぬ?典型的なヒロイン・ミリカたちとベタな運命的出会いを果たし、ミッションに挑む中でヒロインたちと一緒に過ごし、その真摯な想い触れてゆく中で徐々に変わってゆく凍弥の心境。要所で登場するたびにその印象を変えてゆく元カノの存在も効いていて、突きつけられた究極のミッションに葛藤しながら向き合った結末には久しぶりにレーベルらしさを感じました。
20.→ぱすてるぴんく。 (講談社ラノベ文庫)
他人との関わりを避け、ぼっち高校生活を送っていた軒嶺緋色のネット恋愛の恋人スモモ。引きこもりだったはずの彼女が突如緋色の高校に入学してきて、リアルの彼女になってしまう青春小説。緋色の高校生活を一変させたスモモの存在と思い描くほど上手くいかないリアルな日常、そしてふとしたきっかけから対応を誤り炎上してしまう二人の関係。不用意な面もあったとはいえコミュ障には厳しい展開でしたが、ここで黒歴史だったはずの元カノの存在がなかなか効いてました。全2巻。
以上です。気になる本があったらぜひ読んでみて下さい。