佐土原 聡 先生編(専門:都市環境工学/研究テーマ群: 横浜アーバニスト) - 教員紹介 - 先進実践学環 - 大学院 - 横浜国立大学

横浜国立大学大学院 先進実践学環

佐土原 聡 先生編(専門:都市環境工学/研究テーマ群: 横浜アーバニスト)

今回のインタビューは都市環境工学がご専門の佐土原聡先生にお伺いします。

Q. 佐土原先生のご専門である都市環境工学とはどのような分野でしょうか。

佐土原  建築には建築環境工学という分野がありますが、視野を建築の外に広げて、地域や都市の良い環境をどのようにしてつくりあげることができるか、ということを工学的にとりあげる分野です。この分野は、建築の室内の環境と屋外の環境の両方の関係をふまえて、地域全体で良い工夫をもっと広げていくことによって、地球環境問題のあり方を考えていくことにもつながっています。

Q. 研究でエキサイティングな点について教えていただけますか。

佐土原  研究分野によってはひとつの視点を掘り下げていくものもありますが、この研究は様々な視点から総合的に良い状態をつくりあげていく分野です。研究を進める過程で、いろんな分野と関わりながら、良い状態をどのように作り上げていくか、分野を超えてさまざまな人たちと協働して考えていくことがおもしろいと思っています。

Q. 先生の授業ではどのようなことを学べますか。

佐土原  私は「地域都市環境管理論」という授業を担当しています。環境管理という言葉は、公害が社会問題となったときに使われ始めた言葉です。この講義では、環境管理の考え方を地域や地球環境の問題に当てはめて考えていこうとしています。

地球環境、自然環境、エネルギー問題、地震・水害などのリスクなどを広く見渡しながら、そしてsociety5.0、情報化が都市にもたらす影響や、情報を活かしたスマートシティなど都市のあり方といった最近のトピックを拾いつつ、自分の分野とも結びつけながら、みんなで分担して発表しディスカッションするような授業です。実際の都市地域、最新の実例・実践例をとりあげて、事例を通じたディスカッションで、断片的な理解に終わらずに理解を深めるようにしています。大学院の授業は、いろんな分野の学生が参加しているので、それぞれの専門分野を活かしながらお互いに共有していくことができます。

Q. このインタビューでは、「私の1冊」としてオススメの本を伺っております。先生からはどのような本をご紹介いただけますか。

佐土原  編集代表として携わった「都市科学事典」をご紹介します。都市科学という分野は、まだ固まっていない分野ですが、本学でその名を冠した都市科学部が発足してから昨年最初の卒業生を輩出することができました。これを記念してまとめたものです。都市科学という分野がこれから発展していくための、基盤をつくることを目的としてとりくみました。都市科学とは、人によって捉え方もさまざまですが、都市が抱える様々な課題を解決して、新しい価値やイノベーションを生むための科学、と考えています。都市が抱える課題を科学的にどのように解決するか、これに取り組むこのために何をしなければならないか、これらを解決するためには、ひとつの分野だけでは太刀打ちできず、違う分野の人たちとどのように連携していけるかが非常に重要です。分野を超えて連携していく、言い古された言葉ではありますが、実行するのは非常に難しいですよね。連携、協働するために、まず、他の分野が都市の課題にどう向き合っているかを知ること、興味を持つこと、が重要です。そのための道具を提供できないかと考えてこの本をまとめました。知識の基盤、文理融合、都市科学への入口として、文系、理系、それぞれの立場でそれぞれの著者に一項目2500字で表現してもらっています。

学部生向けにまとめたものですが、大学院生、学環生にとっても自治体の人たちや、NPOの人たちにも、一般の人にも読んでいただきたいです。幅広く読んでいただけるものになっていると思います。

読み方としては、まず興味のある項目・キーワードから読んでもらうと良いと思います。項目は500近くあり、それぞれ都市科学の分野で重要と考えられるものを集めました。項目は時代とともに変わっていくものではありますが、現在だけでなく、将来、ふりかえるときにも参照できるものになると思いますよ。

Q. 最後に志望する学生にメッセージをお願いします。

佐土原  先進実践学環はとても幅広く学ぶことのできる場所です。都市科学に興味がある方には、これからの都市や地域の課題解決につながる、実践的な学びにとりくんでもらいたいと思っています。それ以外の方にも、これまでの専門分野を深めつつ、いろいろな分野を幅広く見ていくことで、自分の立ち位置がより深く理解できると思います。専門を実践的に活かしていくすべを身につけた上で他の分野と積極的に結びつき、広く社会に貢献するような人に育って欲しいと思います。

(2023年3月退職教員) 佐土原 聡

横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院 教授。地域冷暖房、コージェネレーション、地理情報システム(GIS)、環境調和まちづくり、ヒートアイランド対策、危機管理情報システム、商店街活性化まちづくりなどの研究に従事。