どんぱす今日の御膳303 - DON'T PASS MUSIC BY

DON'T PASS MUSIC BY

"Fashist an di attack ,den wi countah-attack......"<Linton Kwesi Johnson>

どんぱす今日の御膳303

303

David Ragsdale「Bach Stabber」『DAVID & GOLIATH』(1997)

 ヴァイオリン入りのロックということなら、こんなのもこの頃聴きました。米国のプログレッシヴ・ロック・バンドKansasのメンバーDavid Ragsdale(Violin/Gt)の唯一のソロ・アルバムから。

 

 ハードなギターリフも入るヴァイオリン・メインのロック・インスト。ギターとヴァイオリンはDavid本人、ベースはJerry Peek、ドラムはTom Nordin。ここで「ほう?」と気付いたあなたは、鋭い。Jerry Peek氏は、今月最初の記事(Steve Morse「Tumeni Notes」)に登場した人でしたよね。そのせいかわかりませんが、この「Bach Stabber」はKansasっぽいというよりは、Dixie Dregsっぽいんですよね。あっちがジャズ・カントリー色強めなのに対してこっちはクラシック+ハードロック調ですけど。これは嬉しい誤算で、もっとおとなしいのかと思ってたらかなりロックしてる。(エレクトリック・ヴァイオリンを弾き倒したMark Wood『VOODOO VIOLINS』(1991)を思い出さなくもない。)

youtu.be

YouTubeにはオリジナルが出ていないようで、代わりにライヴ映像です〉

 

 他の曲もそうで、例えば「Hit & Run」なんてのはJerry Peekのバッキバキのベースをフィーチュアした疾走ナンバーだし、「Opus2 No.1」はSteve Morseっぽい作風の劇的楽曲だし。タイトル曲の「David & Goliath」はKansas組曲風の楽曲を思わせるメリハリの利いたプログレッシヴ・ナンバーでやはり素晴らしい。いや、アルバムトータルで見てもかなりの作品ではありますまいか?

youtu.be

 あと、曲名ですけど。「Bach Stabber」ってのは、たぶん「Back Stabber」(裏切り者)のもじりなんでしょうね。バッハ(っぽいフレーズ)をこんなにしちゃってごめんなさいね、ってところでしょうか?こういう“言葉遊び”のネタにバッハがなることって割にあるのかもしれないんですが、例えば英国60年代末のブルーズロッカーBakerloo――名ギタリストClem Clempsonが在籍――に「Drivin' Bachwards」(1969年の唯一作『BAKERLOO』所収)っていうのがありましたね。たぶんこれも「Drivin’ Backwards」(逆走ドライヴ?)のもじりなんでしょうが、メロディは完全にバッハの「Bourrée in E minor」ですね。同じモチーフをJethro Tullは「Bourée」としてセカンド・アルバム『STAND UP』(これまた1969)でやってましたから、ほんとにみんなバッハが好きだなあ。HM/HR界隈ではウリとかイングヴェイバッハおたくみたいなところがあるし、ジャズ系では超絶ベーシストJeff Berlinにズバリ「Bach」って曲があるし。そういった「バッハ・チルドレン」(?)の作物の一つにこのデイヴィッド・ラグズデールの曲もカウントできますね。

 

 デイヴィッドは1990年代から近年までカンサスにも貢献してますが、例えばアルバム『THE ABSENCE OF PRESENCE』(2020)の「Jets Overhead」のソロななんかもコンパクトで美しいし、ライヴでのプレイとしては『LEFTOVERTURE: Live and Beyond』(2017)での「Magnum Opus」あたりも勿論見事です。作品に触れやすいのはKansas関連でしょうかね。