TLCのドキュメンタリーを見た。
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そもそも、私が彼女たちのことを知ったのは、浦川翔平さんがTLCの名曲Waterfallsを紹介していたからだ。
THE RAMPAGE内の派生グループ、MA55IVE THE RAMPAGEのメンバーが行っていた「RAMPAGE DOPE STATION」略して"ランドプ"というラジオ番組内でこの曲をレコメンドした彼は、最後に「大切なことを歌っているので、歌詞にも注目してみてください」とリスナーに向けてメッセージを発信した。(※録音しているわけではないので発言内容が正確じゃないかも)
一聴してすぐWaterfallsの音楽的な面を気に入った私は、さっそくその場で「TLC Waterfalls」と検索し、この曲がドラッグの危険やHIVについて啓蒙するために作られた楽曲であることを知った。
私は「政治的なもの」に魅力を感じる節が強く、この時点でTLCのことが大好きになった。
他の楽曲を聴いてみると「自分より格下の男なんてお断り」と言っていたりなど、フェミニズムの影響を受けている作品ばかりだった。
そして思春期に見て絶大な影響を受けたドラマgleeにて歌われている曲「unpretty」がTLCの楽曲であることも知った。
歌の主人公と同じように世界のあれこれに憤ったりしながらも、「こういうこと真面目に歌っている世界的に有名なアーティストが90年代から存在してたなんて!」と嬉しい気持ちになった。
それからというもの、TLCの楽曲は私の定番プレイリストに常に入っている。
今回、TLCのドキュメンタリーを観ようと思ったのは「ヒマだし何か観るか」とUNEXTを漁っていたら偶然見かけたから、というしょうもない理由である。
それでも、見終えた頃にはこのドキュメンタリーを見て本当に良かったと感じた。
TLCのメンバーがお互いに「sister」「family」と呼び合う姿に胸が熱くなったし、それぞれの楽曲に込められたメッセージを理解できたし、今は亡きレフトアイの思想や活動について知ることもできた。
なりより、一曲一曲の理解がより深まったように感じた。
たとえばunpretty。以前までただルッキズムの曲だと認識していた。
しかし、unprettyは「ただルッキズムの曲」ではなく、世界的に白人女性が美のスタンダードとされるなかで黒人女性が感じるルッキズムのプレッシャーについて歌われている。
unprettyは、インターセクショナリティの視点で歌われた楽曲なのだ。
(そもそも私がきちんとMVを見ていればインターセクショナリティの視点で歌われた楽曲であるのは気がつけたことなんだろうけど……)
未だにこの世界では「健康で肉体にも精神にも障害がない白人女性」が美のスタンダードとされていて、黒人女性がそうした美の基準に寄り添う努力をしていないとみなされる外見をしていると、ギャングか何かのように見られたり、他の人よりも低く扱われたり、最悪の場合には殺される可能性まである。
ナチュラルなヘアをしていたりブラックヘアをしていたり、自身のルーツに沿った服装をしていたりすると人々がそのことを酷評、あまつさえ差別発言まで行うのを、私はこれまで何度も見かけてきた。
たとえばゼンデイヤがドレッドヘアでレッドカーペットに現れたとき、彼女のことを「パチョリか大麻の匂いがする」と評した人までいたのはまだ記憶に新しい。(参考 https://front-row.jp/_ct/17438675)
TLCは1990年代に全盛期を迎えていたアーティストだが、歌っている内容は全く古くない。
TLCが女性の性欲を歌ったりセーファーセックスを訴えかけたりすると、「下品」「過激」と評された。男性ラッパーがいくら過激なセックス描写をしても、むしろそれがカッコいいともてはやしさえするのに。
その時、レフトアイがそれは性のダブルスタンダードだとハッキリと切り捨てた姿を見て、私は同じことがCardi BとMegan Thee StallionのWAPでも起きていたと思い出した。(参考 https://front-row.jp/_ct/17420095)
また別の時には、いわゆる「B-BOY」のようなタボついた服装を「女性らしくない」と評されていて、それは少し前のBillie Eilishを思い出させた。
とにかく、TLCの曲は悲しいほどに古くならない。
いつか「なんでこんな当たり前のこと歌ってんの」「その時はこういう歌が必要だったんだな」と思われるような時代が来たらいい。多分もっとずっとあとになるだろうけど。
TLCが古くなるのはいつになるだろう。少なくとも私はもうしばらくTLCを聴き続ける。おばあちゃんになっても聴いてるかもしれない。
その時には周囲の人に「アンタまだそんなの聴いてるの!?」と言われるような新しい時代になっていたらいいな。
そしてなにより、私にTLCを教えてくれた浦川翔平さんに感謝している。浦川翔平さんがMary J. BligeからTLCからMegan Thee Stallionやらdoja catやらの曲を紹介していたこと、私は嬉しく受け止めている。
そうした豊かな音楽を多く知ることができたランドプに感謝の気持ちと、復活への願いを込めてこのブログを終える。