せっかく「ジャーナリスト自身が運営する404 Mediaにみる「オルタナメディア」の可能性」で取り上げたんだから、404 Media の記事を取り上げておきましょう。
Four Thieves Vinegar Collective というグループの Mixæl Swan Laufer という人を取り上げた記事なのだが、このグループはこの記事のタイトルになっている「Right to Repair for Your Body」というスローガンを掲げている。
「あなたの身体の修理する権利」とは何か?
彼らは、高価な医薬品をほんのわずかのコストで DIY 自作する方法を教えているアナーキスト集団なんですね。
例えば、C型肝炎を治療するソフォスブビル(ソバルディ)は1錠1000ドルするが、それを3ドル57セントでの自作を目指している(これはまだ成功していない)。
なんでそんなに薬の値段が高いかというと特許の存在があるのは間違いない。このグループはそれを DIY で乗り越えようとする。
ここが重要だが、他の医療自由団体と異なり、Four Thieves はイベルメクチンで COVID を治療するのを人々に勧めているのではないし、適当なサプリメントを売り込んでいるのでもないし、商業部門も持ってはいない。そうでなく彼らは、前駆体の成分を採取し、化学反応を起こして薬を作ることで、実証済みの医薬品と同等の海賊版を自作する手助けを行っているのだ。
実は彼らのことを Motherboard(404 Media の創業者は皆ここで働いていた)が2018年に記事にしており、そこではハッカーのカンファレンスで Laufer が、満員の観衆に数千ドル相当の薬を投げ込むという派手な場面が描かれているが、手法は当時と変わっていない。
しかし、前述の通り、特許で保護されているものを自作し、それを公開するのは違法の可能性が高い。
Four Thieves Vinegar Collective の活動がこの記事の著者であるジェイソン・コーブラーに響くのは、嚢胞性線維症だった彼の親友が、当時承認されたばかりの Kalydeco という薬が年間31万ドル以上もしたため使用できず、25歳で死んでしまった経験があるからだ。
その話を聞くと、Laufer は Four Thieves のツールを使って Kalydeco の DIY 版を作れると請け合うのだが、マジかよ。ともかく、この集団は口だけでなく、実際に需要の高い高価な薬の自作にいくつか成功しており、そのためのツールを公開している。
特許制度自体を悪とワタシは言わないし、特許で守られた利益があるからこそ製薬メーカーは新薬の発明を行えるんだという意見ももちろんある。ただ COVID のときも明らかになったように、誰しもかかった病気の薬価の問題にいきなり直面する可能性があるのだ。
「何か薬が会話に出てくれば、誰もが『替わりになるものを 3D プリントすればいいか』と言えるくらい DIY 医療という概念が一般的になって、我々の存在が必要でなくなることが我々の究極の望みだ」と Laufer は言う。自宅で薬を 3D プリントする時代が来るかねぇ。