Hacker News で知ったブログエントリだが、ここでも何度も取り上げているプログラマ向け Q&A サイト Stack Overflow がポルトガル語版を開始していたのは知らなかった。このエントリは立ち上げの理由を解説したものだが、英語圏のプログラマの非英語圏に対する意識が分かって面白い。
Stack Overflow はできるだけ多くの開発者向け情報を一箇所に集約すること(曰く「情報のデフラグ」)を目指したものだったわけで、ポルトガル語版はそれに反するものともいえる。Stack Overflow もそれを心配したことを認めている。
しかし、当たり前の話だが、世界中のプログラマが全員英語を話すわけではない。世界のプログラマの10%が中国人だが、Stack Overflow の来訪者で中国人は1.4%に過ぎない。中国、日本、韓国をあわせても来訪者の4.8%でしかないのだ。
ここまでは分かるのだが、ここでちょっとヘンな話が挟まっていて、この文章の著者(Jay Hanlon)は英語を上手に喋れない有名プログラマを思いつかないというのだ。つまり、ググりでもしない限り、日本や中国やロシアの有名プログラマの名前なんか言えん、と。
著者は宮本茂のことを引き合いに出し、でも彼は(ゲーム)デザイナーだ。ジョン・カーマックやリチャード・ストールマンやグレース・ホッパーや DHH のようにはいかないと書く。
おいおい、少なくとも Ruby の作者のまつもとゆきひろ(Matz)がおるだろが! とワタシは読みながら突っ込んでしまったが(案の定コメント欄でも突っ込まれている)、Jay Hanlon が言いたいのは、その人が英語を話さなければ、自分にはその人には見えないも同然なのだ、ということらしい。
しかし、いくらプログラム言語が英語的な構文だからといって、非英語圏のプログラマが英語を話さなければならないというのは、自分がウニやハマチやアジを日本語で注文できるから、森本正治(「料理の鉄人」並びに「アイアン・シェフ・アメリカ」でアメリカでも有名)と酒を酌み交わして、日本語で包丁さばきの話ができると考えるようなものじゃないか、というのは笑ってしまった。どうやらこの人日本通らしい。
ここまで読めば、非英語圏版サービスを開始した理由はだいたい分かるだろう。たとえあらゆるプログラマが最終的に英語を修得しなければならないとしても(多分著者はそう思っている)、それを真っ先に要求するのは理屈に合わないというわけだ。
非英語圏向けサービスをやるなら、上で数字をあげている中国語版をやるべきだと思うのだが(著者は候補として、北京語、日本語、ポルトガル語、ロシア語、トルコ語、スペイン語を挙げている)、やはりあそこは検閲やいきなり接続できなく恐れがあるから見送ったのだろうな。ワタシなど「なんでポルトガル語?」と思ったクチだが、これはブラジル向けとのことで、実質的にはブラジル語版といったほうがよいのだろう。
Stack Overflow ポルトガル語版のスタートは大成功とのことである。