大昔にテレビで一度だけ見たことがあったが、レンタル屋で DVD をみかけて懐かしくなり借りてみた。
既にオチは知っているわけだが、本作は推理劇というより何よりそのパロディなのでさして支障はない。もっとも「コメディの傑作!」と力むような映画ではなく、リラックスして緩く笑いながら観るのが合っている。各探偵役の元ネタを知っているとより楽しめるのだろうが、彼らの会話の妙を楽しめるよう吹き替え音声が用意されていてもよかったのではと思う。
出演者はかなり豪華で、ピーター・フォーク、アレック・ギネス、マギー・スミス、デヴィッド・ニーヴン、そして我らがピーター・セラーズというキラ星のような面々がバカ映画に分類されかねない本作で一堂に介しているのは、脚本がニール・サイモンだったからだろう。小説で言えば残り5ページになって突然真犯人が明かされる探偵劇のパロディである、何の脈路も伏線もなく次々と真犯人を言い当てる探偵達とそれをなじる犯人の場面の後、最後の最後に納得のいくもう一捻りを加えているのは彼なりの矜持のあらわれか。
まあ、当方にとっては、動くトルーマン・カポーティを見れる! というのが一番嬉しいわけだが。作家としては当時既に下り坂にあった彼だが、本作では見事な怪演を果たしており、『夜の樹』の諸作をはじめとする彼の短編小説を愛する人間にはありがたい映画に違いない。