腹痛

腹痛(胃痛)

腹部には多くの臓器があり、腹痛を来す疾患は多岐にわたりますが、ここでは日常臨床でよく見られる疾患を中心に説明させていただき、他には稀ですが見逃されがちな疾患についてもいくつか挙げております。

腹痛の原因としては、おおまかですが、

  1. 血管が詰まったり、腸や臓器がねじれたりするもの
  2. 炎症によるもの
  3. 消化管の蠕動異常などによるもの(機能性)・その他

などにわけられます。

1.血管が詰まったり、腸や臓器がねじれたりするもの

突然の腹痛や激痛で発症することが多いです。これらの疾患はすぐに受診して治療を受けないと重症化したり命にかかわるものもありますので、突然の強い腹痛の場合は我慢せずすぐに受診しましょう。

消化管穿孔(せんこう)

消化管に穴が開くという状態で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、虫垂炎や大腸憩室炎などが原因となります。穿孔が起こると消化管内の菌が消化管外の腹腔(ふくくう)という所へ漏れ出し、腹膜炎という強い炎症を起こしますので強い腹痛を来します。

腸管虚血

腸管を栄養する血管が血栓で閉塞したり、血栓がなくても何らかの原因で血流が悪くなることにより起きます。完全に血流が失われてしまうと腸管が壊死してしまうため、

虚血性腸炎

総胆管結石

胆石や、胆嚢につながっている総胆管に結石を持っている方に起きます。総胆管に石が詰まって胆汁の流れを塞いでしまうと、腹痛が起きます。また、胆汁の流れが悪くなることにより、黄疸がみられたり、胆管内で細菌感染が起き胆管炎を発症します。

尿管結石

腎臓でできた石が尿管にひっかかることにより、突然の側腹部~腰背部の激痛で発症します。その他血尿もよく見られます。
エコー検査で腎臓の中の尿管が拡張したり(水腎症)、尿検査で診断することができます。

精巣捻転・卵巣茎捻転

下腹部の痛みで発症します。早めに手術をしないと壊死してしまう可能性もあるため、疑われる場合は早めの受診をおすすめします。

2.炎症によるもの

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍とは、胃や十二指腸の粘膜がただれた状態です。

胆嚢炎、胆管炎

胆嚢炎や胆管炎は、胆道系の炎症疾患です。胆嚢や総胆管の結石や腫瘍などで胆汁の流れが悪くなることで起こります。
症状には、右上腹部~みぞおちの痛み、発熱、吐き気、黄疸などがあります。

急性虫垂炎

急性虫垂炎は、世間でいわゆる「もうちょう」といわれているもので、実際には盲腸から生えている虫垂の炎症によって引き起こされる疾患です。症状には、右下腹部の痛み、吐き気、嘔吐、発熱などがあります。
虫垂は右下腹部にありますが、起こり始めはみぞおちの痛みから始まることがあります。
胃が痛いと思っていたら徐々に右下腹部にも痛みが出てきて、歩くと響くなどの症状があれば要注意で、早めの受診をおすすめします。

大腸憩室炎

虚血性腸炎

急性胃腸炎

急性胃腸炎は、ウィルスや細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。主な症状には、下痢、吐き気、嘔吐、腹痛、発熱などがあります。鶏肉の生食によるカンピロバクター腸炎は日常でよくみられます。

急性膵炎

急性膵炎は、膵臓の炎症疾患であり、腹痛や吐き気、嘔吐、発熱、腹部膨満感などの症状が現れます。この病気は、アルコールの乱用や、胆管結石などの要因によって引き起こされることがあります。急性膵炎は、早期発見と治療が重要であり、治療には入院が必要な場合があります。

骨盤内炎症性疾患(Fitz-Hugh-Curtis症候群)

Fitz-Hugh-Curtis症候群は、肝臓周囲炎症疾患の一つです。この病気は、腹膜周囲に炎症が生じることで、腹痛や発熱、嘔吐、関節痛、ひどい場合には黄疸などの症状を引き起こすことがあります。通常、クラミジア感染症が原因で発生し、主に若い女性に多く見られます。肝機能障害を引き起こすこともあります。

家族性地中海熱

家族性地中海熱とは、遺伝子異常による炎症性疾患の一つです。激しい腹痛や発熱が周期的に起き、数日で自然に軽快します。
稀な疾患ですので診断が難しく、以前から月に1回程度発熱と腹痛をくりかえしているという方はこの疾患の可能性を疑ったほうがいいかもしれません。

3.消化管の蠕動異常などによるもの(機能性)、その他

過敏性腸症候群

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)

腸閉塞

前皮神経絞扼症候群(ACNES)

腹腔動脈起始部圧迫症候群(正中弓状靭帯圧迫症候群)