薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.10.24 薬剤師のスキルアップ

麻薬等加算(麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒薬加算)とは?算定要件や点数を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

麻薬等加算は、麻薬や向精神薬、覚醒剤原料、毒薬を調剤した際に算定する加算です。本記事では、麻薬等加算の算定要件や点数についてお伝えするとともに、麻薬管理指導加算や在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算について解説します。加えて、麻薬を取り扱う上での留意点についてもお伝えします。

1.麻薬等加算とは?

麻薬等加算とは、麻薬や向精神薬、覚醒剤原料、毒薬を調剤した際に、薬剤調製料に加算するものです。正式名称は「麻薬、向精神薬、覚醒剤原料又は毒薬加算」ですが、日本薬剤師会が作成する調剤報酬点数表では「麻薬等加算」と、略称が使用されています。
 
また、それぞれを区別するために、「麻薬加算」「向精神薬加算」「覚醒剤原料加算」「毒薬加算」などと呼ばれることもあります。本記事では、それぞれを区別した表記で麻薬等加算について解説します。

 
🔽 薬剤調製料について解説した記事はこちら

 

参照:調剤報酬点数表(令和6年6月1日施行)|日本薬剤師会

2.麻薬等加算の算定要件と点数

麻薬等加算(麻薬、向精神薬、覚醒剤原料又は毒薬加算)の点数と算定要件の概要は以下のとおりです。

 

■麻薬等加算の点数と算定要件の概要
加算 点数 処方中の品目数・投与日数の規定 倍散製剤・予製剤の含有量の規制 算定可能な薬剤
麻薬加算 70点 なし あり ● 内服薬
● 屯服薬
● 注射薬
● 外用薬
向精神薬加算 8点 なし なし
覚醒剤原料加算 なし あり
毒薬加算 なし あり

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

上記のように、麻薬等加算の点数や算定要件は、「麻薬」「向精神薬」「覚醒剤原料」「毒薬」で類似している部分があるものの、詳細は少し異なります。ここでは、それぞれの算定要件について詳しく見ていきましょう。

 

2-1.麻薬加算

麻薬加算は、処方中に麻薬が含まれているときに1調剤につき70点を加算するものです。処方中の麻薬の品目数、投薬日数に関係なく算定できます。
 
また、使用した薬剤の成分が麻薬であっても、その倍散の製剤もしくは予製剤などで規制含有量以下の場合、麻薬加算は算定不可となっています。例えば、コデイン製剤については、100倍散が麻薬として規制されていないため、麻薬加算は算定できません。
 
参照:医療用麻薬適正使用ガイダンス がん疼痛治療における医療用麻薬の使用と管理のガイダンス|厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課
参照:麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年3月17日 法律第14号) 別表第1(第2条関係)|厚生労働省
 
なお、重複した規制を受けている薬剤については、薬剤が麻薬である場合は1調剤につき70点を算定します。麻薬加算は、内服薬のほか、屯服薬、注射薬、外用薬についても算定できます。

 

2-2.向精神薬加算

向精神薬とは、麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)第2条第6号の規定に基づく同法別表第3に掲げる向精神薬をいいます。
 
参照:麻薬及び向精神薬取締法 別表第三(第二条関係)|e-Gov 法令検索
 
向精神薬加算は、処方中に向精神薬が含まれているときに1調剤につき8点を加算できます。
 
向精神薬加算も麻薬加算と同様に、処方中の向精神薬の品目数、投薬日数に関係なく点数を算定することが可能です。また、内服薬のほか、屯服薬、注射薬、外用薬について算定できます。

 

2-3.覚醒剤原料加算

覚醒剤原料加算は、覚醒剤原料を調剤する場合において、処方中に覚醒剤原料が含まれているときに1調剤につき8点を加算します。処方中の覚醒剤原料の品目数、投薬日数に関係なく算定できます。
 
覚醒剤原料についても、その倍散の製剤もしくは予製剤などが規制含有量以下の場合は、覚醒剤原料の取り扱いを受けないため、覚醒剤原料加算は算定不可となっています。例えば、エフェドリンやメチルエフェドリンを含有する薬剤について、含有量が10%以下の場合は覚醒剤原料加算が算定できません。
 
参照:覚せい剤原料を含有する製剤について(昭和48年12月21日薬麻第793号)|厚生労働省
参照:覚醒剤原料一覧|東京都保険医療局
 
また、内服薬のほか、屯服薬、注射薬、外用薬についても要件を満たすことで、覚醒剤原料加算を算定できます。

 

2-4.毒薬加算

毒薬加算は、処方中に毒薬が含まれているときに1調剤につき8点を加算するものです。処方中の毒薬の品目数、投薬日数に関係なく算定できます。
 
毒薬加算についても、その倍散の製剤もしくは予製剤などで含有量が規制量以下の場合、毒薬の取り扱いを受けないため、毒薬加算は算定できません。
 
ほかの加算と同じく、内服薬のほか、屯服薬、注射薬、外用薬について算定可能です。

3.調剤報酬の麻薬に関する加算

調剤報酬の麻薬に関する加算には、麻薬等加算のほかにも、麻薬管理指導加算、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算があります。いずれも、麻薬等加算との併算定が可能です。
 
ここでは、麻薬管理指導加算と在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算について解説します。

 

3-1.麻薬管理指導加算

麻薬管理指導加算は、以下の指導料の加算として、算定要件を満たすことで22点または100点を算定できます。

 

■麻薬管理指導加算を加算できる指導料
● 服薬管理指導料
● かかりつけ薬剤師指導料
● 在宅患者訪問薬剤管理指導料(在宅患者オンライン薬剤管理指導料)
● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料(在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料)
● 在宅患者緊急時等共同指導料

 

麻薬管理指導加算は、麻薬を調剤した場合に、調剤後、継続的に麻薬の服用や保管状況、副作用の有無などについて患者さんや家族に確認し、必要な薬学的管理や指導などを行った場合に算定する加算です。

 
電話などでの確認が認められていますが、一律の内容の電子メールを一斉送信するといった方法による確認は認められていません。

 
🔽 麻薬管理指導加算について解説した記事はこちら

 

3-2.在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算

在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算は、以下の指導料に設けられている加算です。

 

■在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算を加算できる指導料
● 在宅患者訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急時等共同指導料

 

在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算は、在宅で医療用麻薬持続注射療法を行っている患者さんの自宅を訪問し、投与や保管の状況、副作用の有無などについて患者さんや家族に確認した上で、必要な薬学的管理や指導などを行った場合に250点を算定します。

 
なお、在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算を算定した場合は、麻薬管理指導加算は算定できません。

4.麻薬等加算を算定するときの注意点

麻薬等加算を算定する際の注意点として、内服薬の1剤の中に麻薬または向精神薬、覚醒剤原料、毒薬のそれぞれが含まれている場合が挙げられます。
 
麻薬等加算は1調剤ごとに算定できるため、服用時点が同じ場合でも投与日数が異なる場合は、麻薬加算または向精神薬加算、覚醒剤原料加算、毒薬加算がそれぞれ算定できます。
 
ただし、1調剤の中に麻薬、向精神薬、覚醒剤原料、毒薬のうちの複数が含まれている場合は、いずれかの加算を1回のみ算定することとされています。

5.麻薬を取り扱う上での留意点

麻薬、向精神薬、覚醒剤原料、毒薬のうち、最も規制が厳しいのが麻薬です。麻薬を調剤するためには、麻薬に関するさまざまなルールを理解しておく必要があります。
 
ここでは、麻薬を取り扱う上での留意点についてお伝えします。

 

5-1.麻薬処方箋の受け付けと医療用麻薬の交付

医療用麻薬は、麻薬処方箋により調剤を行います。麻薬以外の医薬品と同様に、ファックスで受け付けた処方箋に基づいて準備することが可能ですが、交付時は麻薬処方箋の原本を受け取り、処方内容に変更がないかなどを確認する必要があります。
 
患者さんが来局しなかったり、麻薬処方箋の有効期限が過ぎてしまったりした場合には、調剤前の麻薬として扱うことが可能です。

 

5-2.患者さん本人が来局できないときの麻薬の交付

病状や都合により患者さん本人が来局できない場合には、以下のように対処することができます。

 

■患者さんが来局できない場合の対処法
● 患者さんの自宅に訪問して手渡す
● 患者さんの家族が来局時に手渡す
● 患者さんや家族などから依頼を受けた訪問看護師やホームヘルパーなどに手渡す

 

訪問看護師やホームヘルパーといった代理人に麻薬を手渡す場合は、本人や家族から依頼を受けていることを書面で提示してもらったり、電話で確認したりする必要があるでしょう。

 
また、こういったケースでは、服用状況や副作用の有無などの確認・指導が難しいため、交付後に電話などで本人や家族と直接話す機会を設けるようにしましょう。

 

5-3.麻薬注射剤を交付する際の規定

麻薬注射剤は「薬液を取り出せない構造で麻薬施用者が指示した注入速度を変更できないもの」で交付することとされています。

 
そのため、例外はあるものの、基本的にはアンプルやプレフィルドシリンジのままで患者さんに直接交付はできません。以下のようなものに充填して交付する必要があります。

 

■麻薬注射剤を充填する器材
● 流量が固定された「携帯型ディスポーザブル注入ポンプ」
● 流量が変更できないようロックされた「電動式シリンジポンプ」

 

麻薬注射剤は、上記の器材などに充填してから交付しなければなりません。しかし、場合によって、アンプルやプレフィルドシリンジでの交付が認められています。麻薬注射剤の交付の例外については、次項でお伝えします。

 

5-4.麻薬注射剤を交付する際の規定の例外

麻薬注射剤は、薬液を取り出せず注入速度も変更できないもので交付することとされています。
 
しかし、例外として、処方医から投与量や使用方法などの指示を受けた看護師が、患者さんの自宅に訪問して麻薬の施用を補助する場合は、アンプルやプレフィルドシリンジによる交付が認められています。
 
ただし、この場合の交付では、看護師に直接手渡しする必要があります。患者さんや家族にそのまま手渡したり、患者さんの自宅に保管したりすることは認められていません。
 
参照:在宅医療Q&A 令和5年版|じほう(監修:日本薬剤師会、編集:じほう)

6.算定要件や点数を理解して麻薬等加算を算定しよう

麻薬等加算は、いずれの加算についても、レセコンによる自動算定をしている薬局が多いでしょう。そういった場合でも、加算が設けられている理由を理解し、算定要件などを把握することが大切です。
 
また、麻薬加算については、向精神薬加算や覚醒剤原料加算、毒薬加算と比較して高い点数に設定されています。これは麻薬の取り扱いが、ほかの薬剤と比べて厳しいものとなっているからでしょう。麻薬の調剤を行う際は、その取り扱いについてもしっかり理解し、トラブルや事故が起こらないよう注意を払いましょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。