1.外来服薬支援料2の「施設連携加算」とは?
外来服薬支援料2の「施設連携加算」とは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入所する患者さんの服薬管理が容易になるように、薬剤師が施設職員と協働して薬学的観点からサポートや指導などを実施することを評価するものです。
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施設連携加算は、施設職員の業務負担軽減などを目的に、2024年度調剤報酬改定で新設されました。続いて、施設連携加算が新設された背景について詳しく見ていきましょう。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
1-1.2024年度調剤報酬改定で新設された背景は?
第546回中央社会保険医療協議会総会(令和5年6月14日)の資料「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会における主なご意見」には、介護老人福祉施設などの入所者さんは服用する薬剤の数が多い傾向にあり、薬剤管理が施設職員の負担となっていることが記されています。
薬剤師による服薬管理の支援は、施設職員の負担軽減につながるでしょう。結果として、施設職員は服薬管理以外の業務に集中しやすくなることが期待されます。
介護老人福祉施設などにおける服薬管理に薬剤師が介入する主なケースとしては、以下が挙げられます。
● 服用薬の追加または変更
● 副作用の状況、体調の変化などについて施設職員から相談があった場合
上記において薬剤師が介入することを評価するものとして、2024年度調剤報酬改定で施設連携加算が新設されました。
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら
2.施設連携加算の点数
施設連携加算は、算定要件を満たすことで月1回に限り50点を外来服薬支援料2に加算できます。算定するためには、施設に入所中の患者さんを訪問する必要があります。
参照:調剤報酬点数表|厚生労働省
3.施設連携加算の算定要件
施設連携加算を算定するためには、次の要件を満たさなければなりません。
対象患者 | 以下の施設に入所している患者さん ● 地域密着型介護老人福祉施設 ● 介護老人福祉施設 |
---|---|
算定要否の判断 | 薬剤師が必要性を認めた場合 |
患者または家族の同意 | 必要 |
医師の了解 | 必要 |
服薬支援の内容 | 自薬局で調剤した薬剤に加えて、他薬局で調剤された薬剤や院内処方の薬剤など、調剤済みの薬剤を含めて一包化などの調製を行う |
4.施設連携加算を算定するときの注意点
施設連携加算は、支援や指導の必要性を判断するのが薬剤師であることから、算定にあたっての判断基準が定められています。
また、施設職員と協働した服薬管理については、単に施設の要望に合わせた対応や施設との情報共有などをするだけでは算定できません。
そのため、施設連携加算を算定するためには、算定要件の詳細を把握しておく必要があります。ここでは、施設連携加算を算定する時の注意点について見ていきましょう。
4-1.施設連携加算の算定に該当するケース
施設連携加算は、以下のいずれかのケースにおいて、薬剤師が必要性を認めた場合に算定できるとされています。
● 地域密着型介護老人福祉施設または介護老人福祉施設へ入所する時点において、服用している薬剤が多く、入所後の服薬管理について施設職員と協働した服薬支援が必要と薬剤師が認めた場合
● 新たな薬剤が処方された、もしくは薬剤の用法または用量が変更となった患者さんのうち、これまでの服薬管理とは異なる方法などでの服薬支援が必要と薬剤師が認めた場合
● 患者さんが服薬している薬剤に関する副作用などの状況、体調の変化などにおける施設職員からの相談に基づき、薬剤師が患者さんの服薬状況などの確認を行った結果、これまでの服薬管理とは異なる方法などでの服薬支援が必要と薬剤師が認めた場合
施設連携加算を算定する際は、調剤報酬明細書の摘要欄に、上記のいずれかに該当する理由を記載しなければなりません。
4-2.施設職員と協働した服薬管理
施設職員と協働した服薬管理については、以下について薬剤師自らが直接確認・実施することとされています。
● 服薬状況
● 残薬の状況
● 投薬後の併用薬剤
● 投薬後の併診に関する情報
● 患者さんの服薬中の体調の変化(副作用が疑われる症状など)
● 重複服用
● 相互作用
● 実施する服薬支援措置
● 施設職員が服薬の支援・管理を行う上で留意すべき事項
上記の実施内容については、薬剤服用歴などに記載しなければなりません。
5.介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)での薬剤管理の現状
介護老人福祉施設などの高齢者施設は、施設類型によって医師および薬剤師の配置基準や、入所者さんの状況が異なります。そのため、それぞれの施設類型に合わせた薬剤管理の対応が必要とされています。
第568回中央社会保険医療協議会総会(令和5年11月29日)の資料「在宅(その5)」によると、施設類型ごとの医師・薬剤師の配置基準と、資料発表時点における薬剤管理の現状は以下のとおりです。
施設 | 施設配置基準 | 薬剤管理の現状 | |
医師 | 薬剤師 | ||
特別養護老人ホーム (介護老人福祉施設) |
〇 | × | ● 薬局の薬剤師が訪問し、薬剤管理指導を実施 ● 末期の悪性腫瘍の患者さんに対しては、計画に基づく訪問による薬剤管理指導が可能 |
介護医療院 | 〇 | 〇 | ● 自施設の医師・薬剤師などが薬剤管理を実施 ● 抗がん剤・抗ウイルス剤・麻薬などの一部の薬剤については、往診を行う医師が処方する場合は、薬剤費について医療保険による給付が可能(処方箋の交付も可能) |
介護老人保健施設 | 〇 | 〇 | |
その他の施設 (サービス付き高齢者向け住宅など) |
× | × | ● 薬局の薬剤師が計画に基づく訪問により薬剤管理指導を実施 ● 介護認定を受けている方は介護保険が適用 |
短期入所療養介護 | 〇 | 〇 | ● 普段は在宅などで薬局薬剤師らによる薬剤管理指導(居宅療養管理指導)を受けている方が、短期的に入所し、その期間は施設において薬剤管理を受ける |
短期入所生活介護 | 〇 | × |
参照:中央社会保険医療協議会 総会(第568回)資料 在宅(その5)|厚生労働省
なお、短期入所療養介護は、病院・診療所・介護医療院・老健施設が実施することができ、人員配置基準は、原則施設ごとの基準によります。
続いて、薬局における施設入所時の業務や、介護老人福祉施設から薬局への相談内容、薬局が介入することの効果について見ていきましょう。
5-1.薬局における施設入所時の業務
上記の資料「在宅(その5)」によると、定期的に特別養護老人ホームに訪問している薬局は12.1%であり、そのうち88.7%の薬局では、入所前に服用していた持参薬などの確認が実施されています。実施状況は以下のとおりです。
実施状況 | 割合 |
利用者が利用していた薬局に確認して実施 | 12.7% |
配置医師と連携して実施 | 21.0% |
看護職員と連携して実施 | 75.7% |
介護職員と連携して実施 | 21.6% |
利用者本人もしくは家族と連携して実施 | 12.4% |
実施していない | 11.3% |
参照:中央社会保険医療協議会 総会(第568回)資料 在宅(その5)|厚生労働省
5-2.介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)から薬局への相談内容
上記の資料「在宅(その5)」によると、介護老人福祉施設からの相談を受けている薬局のうち、約48%の薬局が週1回以上の頻度で相談を受けています。
相談頻度 | 割合 |
週2回以上 | 12.4% |
週1回程度 | 35.9% |
月1回程度 | 35.3% |
月1回未満 | 16.3% |
相談内容には、以下のようなものがあります。
● 薬の相互作用や重複の確認について
● アドヒアランスの問題について
● 剤形変更について
● 薬剤の変更について
● ポリファーマシーについて
● 処方箋に関する疑問(効能・服薬方法など)
● 誤って服薬した場合の対処
● 薬剤の加工について(粉砕の可否など)
● 服薬困難な場合の対処
● その他
参照:中央社会保険医療協議会 総会(第568回)資料 在宅(その5)|厚生労働省
剤形変更や、粉砕の可否などの薬剤の加工といった、薬剤の特性に応じて対応しなければならない相談が多く挙げられていました。
5-3.介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)における薬局薬剤師の訪問による効果
連携する薬局がある介護老人福祉施設では、薬剤師の訪問により施設職員の業務負担が軽減されています。薬剤師の訪問による効果には、以下のようなものがあります。
● 施設職員の業務負荷軽減につながった
● 誤薬などのリスク軽減につながった
● 互いの専門性を生かした連携ができた
● その他
薬剤関連業務が施設職員に負担となる要因には、以下のようなものがあります。
● 患者さんの数が多いため、対応に時間がかかる
● 薬剤に関する専門的な知識が必要となる
● 取り扱いが難しい薬剤がある
● その他
参照:中央社会保険医療協議会 総会(第568回)資料 在宅(その5)|厚生労働省
施設職員の負担軽減や安全安心な薬物治療を行うために、薬剤師が介入する意義は大きいでしょう。
6.施設や患者さんの特性に合わせた支援をしよう
薬剤師が、介護老人福祉施設などでの薬剤管理をする上で把握しておきたいことは、施設によって特色が異なることです。施設ごとの考え方や利用者さんのニーズが多様化していることから、それぞれの特性を的確に把握した上で、多職種と連携し、適切な薬剤管理ができるよう心がけることが必要でしょう。
今後、薬剤師は、施設職員だけでなく、医師や看護師、ケアマネジャーなど、患者さんをサポートする医療関連の職種と連携して、患者さんや家族などのニーズ、施設の方針などを把握し、状況に合わせた対応をすることが求められます。
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薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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