薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.10.25公開日:2024.06.26 薬剤師のスキルアップ

在宅患者訪問薬剤管理指導料とは?算定要件や同時算定できないものについて解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

全国的に高齢化が進む中、薬剤師による在宅医療への介入が求められています。2024年度の診療報酬改定では、在宅医療に関連するさまざまな項目が見直され、在宅患者訪問薬剤管理指導料についても一部改定が行われました。この記事では、在宅患者訪問薬剤管理指導料の概要や算定要件、算定できないケースを解説するとともに、届出や居宅療養管理指導費との違い、薬剤師による在宅医療の実施状況などについてもお伝えします。

1.在宅患者訪問薬剤管理指導料とは

在宅患者訪問薬剤管理指導料とは、病院へ定期的に通うのが難しく、在宅で療養している患者さんに対して、薬剤師が医師の指示のもと、定期的に患者さんの自宅に訪問し、薬歴管理や服薬指導などを行ったときに算定できる薬学管理料です。
 
そのため、自身で通院が可能な患者さんや、継続的な訪問薬剤管理指導が必要ない患者さんに対して安易に算定してはならないとされています。
 
2024年度の診療報酬改定では、注射による麻薬の投与が必要な患者さんに対して定期的に訪問する回数の見直しが行われました。従来は月4回まででしたが、本改定で「週2回かつ月8回」となり、末期の悪性腫瘍の場合と同様の算定要件となっています。
 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省

 
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

2.在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定要件と点数

在宅患者訪問薬剤管理指導では、医師の指示にもとづき、患者さんの自宅へ訪問し、必要な管理や指導を行います。指導料の算定には、薬学的管理指導計画を作成し、医師へ文書で情報提供することが必要です。ここでは、在宅患者訪問薬剤管理指導料の点数や算定要件について詳しくお伝えします。

 

2-1.区分と算定点数

在宅患者訪問薬剤管理指導料は3区分あり、単一建物の患者数によって診療報酬点数が異なります。また、オンラインによる服薬指導を行った場合には、「在宅患者オンライン薬剤管理指導料」が算定できます。

 

■在宅患者訪問薬剤管理指導料の区分と算定点数
区分 患者数 算定点数
在宅患者訪問薬剤管理指導料1 単一建物診療患者数1人 650点
在宅患者訪問薬剤管理指導料2 単一建物診療患者数2~9人 320点
在宅患者訪問薬剤管理指導料3 単一建物診療患者数10人以上 290点
在宅患者オンライン薬剤管理指導料 規定なし 59点

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省

 

保険薬剤師1人につき在宅患者訪問薬剤管理指導料1~3と在宅患者オンライン薬剤管理指導料を合わせて週40回まで算定できます。いずれの場合も、患者さん1人あたり月4回まで、以下の患者さんについては、週2回かつ月8回まで算定可能です。

 

● 末期の悪性腫瘍の患者さん
● 注射による麻薬の投与が必要な患者さん(2024年度改定)
● 中心静脈栄養法の対象患者さん

 

なお、上記以外の患者さんに対して月2回以上算定する場合は、算定する日の間隔を6日以上空けなければなりません。また、特別調剤基本料Bを算定している薬局は算定不可となっています。

 

2-2.単一建物診療患者の考え方

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、同じ建物に居住する患者さんの人数に従って算定します。在宅患者訪問薬剤管理指導を行った日における実施・算定した患者さんの人数ではないので注意しましょう。
 
ただし、自宅で夫婦ともに在宅医療を受けており、在宅患者訪問薬剤管理指導を行うといった場合は、「単一建物診療患者数1人」として650点を算定します。他にも、以下のケースが「単一建物診療患者数1人」となります。

 

● 患者数が建築物の戸数の10%以下
● 建築物の戸数が20戸未満で、指導を行う患者が2人以下

 

ユニット数が3以下の認知症対応型共同生活介護事業所については、ユニットごとの算定人数を単一建物診療患者の人数とみなせます。

 

2-3.対象患者さんの要件

在宅患者訪問薬剤管理指導料の対象となるのは、在宅で療養を行っている患者さんです。つまり、保険医療機関または介護老人保健施設で療養を行っている患者さん以外のケースを指します。医師または薬剤師が在籍する病院や診療所、施設などに入院・入所している場合、もしくは他の医療機関や保険薬局の薬剤師が訪問薬剤管理指導を行っている場合は対象となりません。
 
ただし、「要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合」、「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」などに規定する場合を除きます。
 
参照:要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合 平成20年3月27日 厚生労働省告示第128号|厚生労働省
参照:特別養護老人ホーム等における療養の給付(医療)の取扱いについて 平成18年3月31日 保医発第0331002号|厚生労働省

 

2-4.薬学的管理指導計画書の作成と見直し

在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定には、薬学的管理指導計画書を作成する必要があります。これは、処方医からの情報提供をもとに、処方医や他の医療関係職種と情報共有を行いながら作成する指導計画書です。患者さんの特性や処方薬剤などから、薬剤の管理方法や副作用・相互作用などを確認した上で、実施すべき指導内容や訪問回数、訪問間隔などを記載します。
 
薬学的管理指導計画書は、患者さんの自宅へ訪問する前の策定を基本とし、処方薬剤の変更や他職種からの情報提供などがあった場合に見直します。変更などがない場合でも、少なくとも月1回は見直し、常に患者さんに適した服薬管理ができるようにすることとされています。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

3.在宅患者訪問薬剤管理指導料が算定できないケース

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、患者さんの状態や、患者さんの自宅と薬局の距離によって算定できないケースがあります。また、他の薬学管理料と同時算定できない場合もあるため、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する場合には、規定についてしっかりと確認することが大切です。ここでは、在宅患者訪問薬剤管理指導料が算定できないケースについて詳しく見ていきましょう。

 

3-1.患者さんの身体機能

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、定期的に訪問して薬剤管理を行った場合に算定できるものです。そのため、継続的な支援が必要ない患者さんや通院できる患者さんに対しては、安易に算定してはいけないことになっています。
 
例えば、1人で歩くことが可能な患者さんや、家族やヘルパーなどのサポートなしに来局できる患者さんは対象にならないでしょう。

 

3-2.同時算定できないもの

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、他の薬学管理料との同時算定について規定があります。以下の薬学管理料については同時算定ができません

 

● 重複投薬・相互作用等防止加算
● 外来服薬支援料1
● 服薬情報等提供料1、2、3

 

なお、以下の薬学管理料については、同一月に算定できません。

 

● 服薬管理指導料と加算項目
● かかりつけ薬剤師指導料
● かかりつけ薬剤師包括管理料
● 重複投薬・相互作用等防止加算
● 外来服薬支援料1

 

外来服薬支援料1以外の薬学管理料については、患者さんの薬学的管理指導計画書に関わる疾患とは別の疾患、または怪我など臨時の処方箋による調剤を行った場合、同一月であっても算定できます。在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定するときは、上記の薬学管理料についての確認が必要です。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 
🔽 薬学管理料について解説した記事はこちら

 

3-3.患者さんの自宅と調剤薬局の距離

患者さんの自宅と調剤薬局の距離が16キロメートルを超えている場合は注意が必要です。患者さんの自宅から16キロメートル圏内に在宅患者訪問薬剤管理指導料の届出をしている薬局がある場合、自身の薬局で訪問薬剤管理指導を行うことができません
 
ただし、2012年3月31日以前に、医師の指示があった患者さんについては、在宅患者訪問薬剤管理指導料が算定可能です。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

4.在宅患者訪問薬剤管理指導料の届出

在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定するためには、地方厚生(支)局長に在宅患者訪問薬剤管理指導を行うことの届出をあらかじめ提出する必要があります。薬局の名称や所在地、開設者の氏名を記載するのみとなっており、届け出るための施設基準はありません。
 
医師などの医療関係者から依頼を受けた場合に、スムーズに対応できるよう届出を提出しておくとよいでしょう。

5.在宅患者訪問薬剤管理指導料と居宅療養管理指導費の違い

在宅医療を行う上で、在宅患者訪問薬剤管理指導料と居宅療養管理指導費の違いについて理解しておく必要があります。それぞれの違いについて確認しておきましょう。

 

5-1.医療保険と介護保険

在宅患者訪問薬剤管理指導料は医療保険に、居宅療養管理指導費は介護保険に分類されます。在宅療養を行っている患者さんに対して薬剤管理指導を行った場合、要介護または要支援の認定を受けている患者さんは介護保険で、認定を受けていない患者さんは医療保険で算定しなければなりません。
 
また、介護保険の中でも、介護認定が要介護なのか、要支援なのかによって算定項目が異なります。要介護認定を受けている患者さんは「居宅療養管理指導費」を算定し、要支援認定を受けている患者さんは「介護予防居宅療養管理指導費」を算定します(介護保険法第41条・第53条より)。
 
参照:介護保険法|e-Gov法令検索
 
つまり、要介護認定の場合は居宅療養管理指導費、要支援認定の場合は介護予防居宅療養管理指導費を算定し、いずれの認定も受けていない患者さんは在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定することになります

 
🔽 居宅療養管理指導について解説した記事はこちら

 

5-2.居宅療養管理指導の算定単位について

居宅療養管理指導または介護予防居宅療養管理指導を行うと、以下の単位を算定できます。

 

■病院または診療所の薬剤師
単一建物居住者 単位
単一建物居住者が1人 566単位
単一建物居住者が2~9人 417単位
単一建物居住者が10人以上 380単位

 

■薬局の薬剤師
単一建物居住者 単位
単一建物居住者が1人 518単位
単一建物居住者が2~9人 379単位
単一建物居住者が10人以上 342単位

参照:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
 
在宅患者へのオンライン服薬指導については、2024年の介護報酬改定で算定単位が45単位から46単位へと変更されました。算定回数についても、月1回から月4回までとなっています(厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」より)。

6.薬剤師に期待される在宅医療への介入

2024年の診療報酬改定では、在宅患者訪問薬剤管理指導料をはじめとした在宅医療に関する診療報酬の見直しが行われました。高齢化が進行する中、これまで以上に薬剤師による在宅医療への介入が求められています
 
厚生労働省が行った調査によると、在宅患者調剤加算(医療保険)の届出数は年々増加傾向にあり、2022年度には薬局全体の37%が届出を提出しています。

 

在宅患者調剤加算の届出薬局数

 

■在宅患者調剤加算の届出数
届出薬局数 保険薬局数
2019年7月 16,811 58,360
2020年7月 18,238 58,893
2021年7月 20,312 59,814
2022年7月 22,424 60,607

参照:中央社会保険医療協議会 総会(第568回)資料 在宅(その5)|厚生労働省

 

また、居宅療養管理指導(介護保険)の実施状況も、増加傾向にあります。薬局における居宅療養管理指導の算定回数の推移は以下のようになっています。

 

居宅療養管理指導の算定回数

 

■薬局薬剤師による居宅療養管理指導の算定回数推移
単一建物
1人
単一建物
2~9人
単一建物
10人~
情報通信
機器
合計
2020年10月 245,482回 171,396回 761,199回 0回 1,178,077回
2021年10月 279,194回 192,225回 855,518回 8回 1,326,945回
2022年10月 312,180回 210,716回 968,455回 25回 1,491,376回

参照:社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)資料 居宅療養管理指導|厚生労働省

 

これらのデータからも、薬剤師による在宅医療の介入は大幅に進んでいるといえるでしょう。内閣府「令和6年版高齢社会白書」によれば、75歳以上の人口は2055年まで増加傾向が続くものと見込まれています。薬剤師による在宅医療への介入は、今後も必要とされるでしょう。
 
参照:令和6年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)|内閣府

 
🔽 在宅医療における薬剤師の役割について解説した記事はこちら

7.在宅医療に関する知識を身に付けよう

在宅医療に関する知識や経験は、これからの薬剤師が身に付けておきたいものです。スキルアップのためにも、地域ごとに必要とされる医療の傾向について知っておく必要があるでしょう。加えて、在宅患者訪問薬剤管理指導料などの在宅医療に関わる診療報酬や介護報酬について、知識を身に付けることも大切です。積極的に地域医療に貢献し、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるようサポートできる薬剤師を目指しましょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。