ジャクソン・ブラウンとネッド・ドヒニー…、1968年、ローレル・キャニオンで二人が出会った当初は、ジャクソンはネッドのアコースティック・ギターのプレイやその創造性に感服していました。ドアーズやラヴを輩出していたエレクトラ・レコードが新人発掘のために主催した「エレクトラ・ミュージック・ランチ」に二人で参加したりと、しばらく二人で活動をし、二人は別々の道を歩むのですが、この頃の当時を振り返ったジャクソン・ブラウンのインタビューの中で、「僕らの音楽的関係において極めて重要な出来事は、彼が僕から『The Greatest 64 Motown Hits』という4枚組レコードを借りたことだ」といった発言がありました。ネッドはこのレコードを聴きまくったらしい。彼のソウルフルな作風の源流はここにあるのかもしれませんね。だとしたら、やはりこの二人、音楽的な繋がりも非常に深いものがあったんですね。
そしてジャクソン・ブラウンはアサイラムから1972年1月に「
Jackson Browne」でデビュー、一方ネッドは1973年に本作でデビューを果たします。当時のSSW系ミュージシャンの多くがフォークやカントリーからの影響が垣間見られたのですが、ネッドの音楽はソウルやファンクをベースとしたようなもので、そのユニークさが注目を集めましたが商業的には失敗。その時の状況で人生は大きく変わっていくものですね。
プロデュースはネッドとドアーズやリンダ・ロンシュタット、トム・ヤンス等の仕事で有名なジョン・ヒーニー。恐らくは実質ネッドが手掛けていたと思われます。コーラスにグラハム・ナッシュが参加してますが、あとは当時無名だった方ばかり。アットホームな雰囲気の中、制作されたものと思われます。アコギのカッティングが心地よい①「Fineline」。
爽やか…と言いたいところですが、どことなくソウル感覚が塗されたようなサウンド。ネッドのギターがちょっと泥臭いというか、土臭い感じもします。この感覚がネッドらしい。ドラムはゲイリー・マラバー、ベースはブライアン・ガロファロ。このリズム隊はJ.D.サウザーの
デビューアルバムと同じ布陣ですね。
ミディアムテンポの適度な緊張感を感じさせる②「I Know Sorrow」。
この曲の2分30秒以降のCSN風なコーラスからネッドのアコギ、それに続くピアノをリードとしたバンドのグルーヴ感が聴き所でしょうか。この曲は今聴いても不思議な魅力を放った楽曲です。
かなりソウルっぽい④「On And On」。
こちらはネッドの代表曲に位置付けられている名曲ですが、こちらも決してポップなわけではなく、どことなくソウルフレイヴァーを感じさせるネッドらしい1曲。
ネッドはデビュー前にデイヴ・メイスン、キャス・エリオットと活動していたらしい。その成果物のひとつがこの曲で、この曲は1971年に発表された二人のアルバム「
Dave Mason & Cass Elliot」にも収録されております。
アップしたのは、WOWOW開局記念に行われたスタジオライヴ。1991年の頃でしょうか。ネッドの弾き語りですが、ギター上手いですね。
ネッドの音楽は、ジャクソン・ブラウンのものとは明らかに違うものがありますが、それはひょっとしたらネッドがデビュー前、ジャズの大御所、チャールズ・ロイドのバンドにギタリストとして在籍していた経験が活かされているのかもしれません。下の写真はネッドが参加したチャールズの1970年発表のアルバム「Moon Man」の中ジャケ。一番右がネッドでしょうか?
ネッドらしいちょっと甘酸っぱい感じのバラードです。この感覚、ネッドらしいですよね。1991年に自身のセルフカバーアルバムを発表した際のアルバムタイトルにもなりました。
本作は商業的にはあまり売れなかったんですよね。
一般的に1976年発表の次作「
Hard Candy」がネッドの代表作と言われておりますが、それでもビッグヒットしたというわけでもなく。ネッドの音楽は、ちょっと玄人好みということだったのでしょうか。
祝日でもあるので、大好きなバンド、BOØWYのアルバムを臨時でご紹介致します!
今では伝説と化したBOØWYですが、この時、1982年から1983年にかけてのBOØWYはセールス不振、ライブ観客動員の低迷から悪戦苦闘の時代でした。
そんな中、元メンバーだった木村マモルがセカンドのプロデューサーに就任。但しこのセカンド、当時の所属レコード会社のビクターからはリリースを断られたという事実がございます。また当時の所属事務所、ビーイング(!)との折り合いも決して良好なものではなく、1983年1月にビーイングから3月末の契約更新は行わない旨、通告されてしまいます。つまりセカンドのレコ―ディングは終了しているのに、発売出来ない、事務所からもソッポを向かれるという、酷い状況にあったのが当時のBOØWYでした。信じられないですよね…。
そして1983年4月に個人事務所を立ち上げ、木村マモルが8月にジャパン・レコードと契約。9月に本作が発売されることとなります。ところがこのジャパンレコードと徳間音楽工業が合併し、新たに徳間ジャパンとなったことで、一切の宣伝活動が停止されてしまうという悲劇に見舞われます。
そんな悲劇のアルバムですが、粗削りながらもクオリティは高い…、そんなアルバムが「INSTANT LOVE」です。
元々メンバーに諸星アツシ(G)と深沢和明(Sax)が加わっていたBOØWYですが、1982年10月にビーイングからの強い要請もあり、2人は脱退。その6人だった頃のライヴの定番曲だった「INSTANT LOVE」。
アップしたのは地元群馬のTV曲での貴重なスタジオライヴ映像。演奏のキレはもうこの時から完成されていました。当然6人から4人にメンバーが減ったことで演奏はスカスカになったわけですが、それを布袋の変幻自在なギターワークで見事にカバーしてますね。
パンク時代の暴威のイメージから抜けつつあるポップなBOØWYを象徴するような楽曲の②「My Honey」。
ポップな曲なんですが、布袋さんのギターリフが光ります。
ソリッドなロックの④「FUNNY-BOY」。
これもカッコいいんですよね。高橋まことのシャープでリズミカルなドラミングと布袋さんのエッジの効いたギターが見事。当時は英国で流行っていたニューウェーブサウンドにも影響を受けていたようですが、どことなくそういった影響も感じられます。
ちなみにこの曲の原曲が「太陽にほえろ」で流れた事実をご存じでしょうか?
しかも6人組時代の映像も一瞬映っております。その貴重な映像もどうぞ。
キュートでポップな⑤「OH! MY JULLY Part I」。
BOØWYにキュートでポップなんて似合わないのですが、BOØWYには後の「Honky Tonky Crazy」にも通じるこうした楽曲が存在します。
シャッフルビートが心地いいBOØWY流のポップスですね。エンディングのコーラスも愛らしい。私の大好きな1曲です。
ちょっとパンキッシュであってニューウェーブな感じの⑥「TEENAGE EMOTION」。
この時代ならではのBOØWYらしい1曲。Aメロの変拍子なんか絶妙です。サビは安定感あるメロディアスなもの。カッコいいですよね。
BOØWYにしてはちょっと異色の曲もご紹介しておきます。
それがレゲエ調の⑨「
THIS MOMENT」。
https://www.youtube.com/watch?v=tV8H_vqBpDo普段ダウンピッキングしかしない松井恒松のベース、ここでは指弾きらしい。布袋さんのギターもちょっと他では聞けないようなサウンドを奏でてます。メンバーの演奏力が相当高いことを証明するような1曲。それにしても布袋さんって多才でセンスありますね。
BOØWYが更なる飛躍を遂げるのはこの後、直ぐ。既にその萌芽は、この苦労していた時代の中に作られた本作にも、随所に現れております。
ボズ・スキャッグスの
昨年2月の日本公演に参戦して、早1年。大人のいいステージでした。
その公演前後によく聴いていたアルバムが今回ご紹介する「Dig」というアルバムです。あのステージそのままに、非常に大人の、スムースジャズ的な要素も混じった渋いアルバムです。
ボズは1994年発表の「
Some Change」から徐々にブルースやソウルといった原点回帰していくような音楽を発表し出しておりました。
このアルバムは更にジャズやR&Bへクロスオーバーしていったようなサウンドなんですが、嬉しいことにデヴィッド・ペイチやダニー・コーチマーといった旧友であり盟友のメンバーが協力しております。ジャケットも素晴らしい。
まず意表を突かれたのが①「Payday」。
サンプリング音源を用いたR&B。それに彩りを添えているのがトランペット。吹いているのはジャズ・トランぺッターのロイ・ハーグローヴ。ロイは1990年にデビューした、当時は新進気鋭のミュージシャン。お馴染みのミュージシャンに支えられたアルバムですが、ロイの参加はかなり刺激的ですね。
それにしてもこんな斬新な曲の作者がボズとデヴィッド・ペイチなんですよね。でもよく聴くと、アレンジは斬新でも、よく聴くとメロディそのものは往年のボズ。しっかりR&Bに支えられたサウンドなんですよね。
アップした映像は、当時のバンドメンバーを従えたスタジオライブ映像です。
こちらはダニー・コーチマーが提供したアーバン・メロウな②「Sarah」。
このメロウ感、堪らないですね…。AORからスムースジャズ寄りなアレンジ。実に心地いいサウンドです。
個人的には我が家の2代目トイプーが「サラ」なので、それとも相俟ってじっくり聴いてしまいます。
(ブログアイコンは初代トイプー、2代目はこんな感じで先住猫と喧嘩しまくってます↓)
このアルバムの1曲目から3曲目の流れが大好きです。
この③「Miss Riddle」は完全にスムースジャズの世界ですね。
ここでもロイのトランペットが効果的に使われてます。ボズのヴォーカルも気負いを全く感じさせない、軽い感じ。大人の音楽…、いいですね。
スティーヴ・ジョーダンが参加した⑦「Call That Love」。
ボズ、デヴィッド、ダニーにスティーヴがソングライティングに参加した楽曲。スティーヴはベースとドラムを担当してます。
これも今までのボズのイメージからは想像出来ないような楽曲。ただR&Bテイスト溢れる女性コーラスやボズのファルセットなんかは「らしい」といえばらしいのですが。このテの楽曲がお嫌いでなければ、このアルバム、結構病み付きになるのではないでしょうか。
エンディングはしっとりとしたナンバーの⑪「Thanks to You」。
とにかく渋い。音数が少なく、夜にじっくり聴きたいナンバーです。
聴き所は何といっても3分過ぎからのボズのブルージーなギターソロ。いいですね~。
夜に聴く大人のアルバム、そんな印象を受ける本作ですが、続く「But Beautiful」「Speak Low」ではジャズのスタンダードナンバーに挑戦。そして2013年に発表した名盤「
Memphis」ではメンフィスソウルに…と原点回帰、いや進化し続けているボズでした。