アパレル大手のアダストリアは、2023年5月17日、同社のアパレルブランド「niko and...(ニコアンド)」を冠した住宅のIP(知的財産権)ライセンスビジネスの開始を発表した。IPライセンス事業を手掛けるリブサービス(熊本県山鹿市)と提携し、住宅商品の販売・施工などを手掛ける加盟事業者を募り、IPライセンス契約を締結する。ライセンス収入の目標は最大5億円。商機はいかに。
「編集力」で住領域を強化
IPライセンス事業を行う住宅の名称は、「niko and...EDIT HOUSE(ニコアンド・エディット・ハウス)」。同ライセンスには、「商標(niko and...EDIT HOUSE)」に加え、niko and ...の世界観を建築物や内装のデザインで体現した「意匠」、「著作物(カタログなどの販促物)」が含まれる。加盟事業者はこれらを使用する権利を得るという内容だ。アダストリアとリブサービスは過去に、niko and...コラボのモデルハウスを展開し、初年度受注数45棟などの成果を出してきた。それらの実績を基に、今回住宅のIPライセンスビジネスの開始に踏み切る。
「niko and...」は20代から40代の男女に向けて、自分らしく生きるライフスタイル提案を行うブランド。衣服の印象が強いが、かねてより「食」「住」の領域での商品開発にも取り組んできた。「食」の領域では、「niko and...COFFEE」を既存店舗に併設。「住」の領域では、ソファやデスクなどの家具を販売。着実に「衣食住」の総合ブランドとしての階段を歩んできた。
こうした「食」「住」の分野に進出する背景には、niko and...のブランドコンセプト「人は、生まれてきたままでは何かたりない。」がある。これは、人や、暮らしに「何か(スタイル)」を付け足すことで、自分らしさを創造する手伝いがしたいというアダストリアの思いがある。その「何か」とは、衣類はもちろん、周辺領域の、家具、雑貨、食、音楽、アートなどを含む。同社ではこれを「UNI9UE SENSES(ユニーク センス)」と名付け、周辺領域のビジネスも強化しているのだ。
従来は、niko and...既存店舗の中にカフェniko and...COFFEEやコスメブランド「tiny tiny(ティニーティニー)」のような他ジャンルのブランドを展開し、来店客が自身の気分に合わせて、そこで出合ったブランドの中から欲しいものを見つけられる、という戦略を取ってきた。しかし今後は、店舗が入居しているショッピングセンターなどの商業施設から一歩外に出ることで、さらに外部に経済圏を広げたいという狙いがある。
niko and...EDIT HOUSEは、その一環だ。また、「将来的には公園などの公共事業もプロデュースすることで、生活全体に進出していきたい」(アダストリア執行役員の星野明氏)と、顧客のさまざまな生活動線上に、niko and...がある世界を目指す考えだ。
その流れを加速すべくスタートしたのがBtoB(企業間取引)プロデュース事業だ。同社ではこれまで、展開する30以上のブランドを通じてさまざまな企業や団体、ブランドとのコラボレーションを行ってきた。年間100件以上の問い合わせがあるという。そこで2021年に専門部隊である「ライフスタイル・クリエイション部」を新設。ファッションやライフスタイル領域で培ってきた「編集力」を生かし、「食」「住」分野で、空間プロデュースや、ノベルティー、オリジナルグッズの開発・監修など、異業種コラボも積極的に行っている。その主軸となるのが、niko and...である。
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