昨今のタピオカドリンクブームのように、女子高生(JK)から巻き起こる流行は少なくない。2019年上半期が終わり、女子中高生を中心とする“ティーン女子”の流行ランキングが数社から発表された。次に彼女たちの心を動かすモノやコトは何か、「イマ」のはやりを解説する。
タピオカドリンクはコト消費へ
1990年代から始まった「女子高生ブーム」は、形を変えて今も健在だ。女子高生発の流行がいつの間にか世代を超えたブームになることも多い。タピオカドリンクの店舗に並ぶ女子高生たちを不思議な気持ちで眺めていた大人たちも、今やタピオカドリンクを手にし、SNSへ投稿している。しかし女子高生たちにとっては、他の世代が認めるかどうかは二の次だ。彼女たちは自分たちが持つ「JKブランド」を認識しており、休みの日でも制服を着て「JK」としての遊びを満喫している。
中学生を含めた今の女子中高生たちは、「Z世代」とも呼ばれている。Z世代とは、約2000~2010年の間に生まれたデジタルネーティブ世代。常にインターネットが身近にあり、オンラインとオフラインの境目がない。
19年6~7月、19年上半期の10代女子の流行ランキングが数社から発表された。エンターテインメントやグルメなど分野はさまざまだ。そこでZ世代に人気のアプリやSNSに関するカテゴリーに注目してみた。今回参考にしたデータは、「2019年上半期ティーンが選ぶトレンドランキング」(マイナビティーンズ)と「2019年上半期の流行語大賞」(AMF)だ。
まずは「タピオカドリンク」に関する流行だ。現在はグルメもSNSへの投稿が火付け役となる。10代女子はタピオカドリンクを購入し、それを友人と持った画像を「#タピる」「#タピ活」などのハッシュタグと共にSNSに投稿している。マイナビティーンズのコトランキングでは、「タピオカ旅」が7位に入った。これはタピオカドリンクを飲むことを前提に、遊びに行く場所を決める行為だ。SNSでのモノ自慢を超えて、イベントの1つとしてタピオカドリンクを楽しんでいる様子がうかがえる。
次の流行は、「チーズティー(チーズクリームをトッピングしたドリンク)」や「ボトルドリンク(プラスチックのボトルに入れたドリンク)」といわれている。どちらも既にInstagramでよく見かける、「映える」ドリンクだ(関連記事「狙うはポスト・タピオカ 台湾発の新ドリンク『チーズティー』」)。
動画は「ASMR」と「KP」、静止画は「Ulike」と「SODA」
TikTokやInstagramストーリーズなど、動画中心のSNSが浸透するにつれ、流行ランキングにも動画コンテンツが入るようになった。マイナビティーンズ、AMFともにランクインしているのが、「ASMR動画」、そして「KP」だ。
ASMR動画は、「音フェチ」動画ともいわれる動画のこと。「Autonomous Sensory Meridian Response」の略で、人の聴覚や視覚を刺激する、ゾクゾクしたり、心地よくなったりする音を収録している(関連記事「東京ガスなどが採用 音だけ楽しむASMRは若者の心をつかめるか」)。具体的には、食べ物を咀嚼(そしゃく)している音、耳かきの音、ささやき声、粘り気のあるものをかき混ぜる音などだ。一部のマニアにのみウケる動画なのではとの説もあったが、認知はじわじわと広がっている。ダイエット中に食べ物の咀嚼音を聞いて満足したり、寝る前にせっけんをガリガリ削る音を聞いてリラックスしたりといった使い方がされている。
「KP」は「乾杯」を指す。大人世代には乾杯の「ご発声(コール)」といえば分かりやすいだろう。数人でタピオカドリンクなどの飲み物を持ち、お決まりのセリフや動作を終えた後に乾杯する動画のことだ。特にはやっているのは、「志は高く、愛情は深く、友情は等しく」というセリフで、ドリンクを高く上げたり、下げたりした後、乾杯する。始まりはミュージシャンのGACKTという説が有力だ。TikTokやInstagramストーリーズには、少しずつフレーズを変えて乾杯する動画が存在している。
ASMRはYouTuberなどによる配信、KPは一般のユーザーたちによる投稿だが、日常に動画が溶け込んだことがうかがえる。
静止画では「さりげない美顔加工」がブームだ。マイナビティーンズにランクインしている「Ulike(ユーライク)」、AMFにランクインしている「SODA(ソーダ)」はともに、いかにも加工した顔ではなく、肌の美しさや目の大きさを“自然に盛る”エフェクトで人気を呼んでいるアプリ。動物の耳や鼻が施されることで一大ブームになった「SNOW」の人気はいまだ健在だが、「あざとさが感じられる」との意見もあり、普段とさほど変わらない美顔加工に抑える傾向が高まっているのだろう。
美顔といえば、マイナビティーンズの「モノランキング」第1位の「#アオハル」は写真シール作製機だ。スマホを使えば無料で自撮りできるこの時代に、#アオハルはプリントシールならではの強みを打ち出した。カメラの高さや角度を自由に動かせることで、全身を無理なく、しかも複数の人数でもしっかり全員が入る撮影を可能にした。いかにもプリントシールといった美顔加工も抑えめだ。
息をするようにセルフィーし続ける10代女子たちは、静止画と動画、そして写真シール作製機をうまく使い分けて楽しんでいる。この方向性は今後も続くだろう。
「診断テスト」は普遍的なブーム
SNSで目にすると試してみたくなるのが、診断テストの系統だ。マイナビティーンズのランキングに入った「性格免許証」もその1つで、質問に答えると性格や好きなモノ、嫌いなモノなどが入った免許証画像が手に入る(関連記事「『性格免許証』って何? 高校生、大学生の19年上半期ヒット」)。質問の数はかなり多いが、女子高生たちは自分のことを質問されるのが好きなので苦にならない。ランク外だが「Peing-質問箱-」という、匿名での質問を受け付けるサービスも人気があり、SNSのプロフィルに設定していつでも質問を受けられるようにしている女子高生が多い。
ランキングの流行語には「◯◯案件」、「(〇〇)(※語彙力などの文字が入る)」など、ネットスラングから誕生したと思われる言葉も入っている。ランキングはネットとの親和性が高い一方で、テレビドラマの影響が感じられるワードも多数含まれており、若者が完全にテレビ離れしているわけではなさそうだ。
SNS映えドリンク、新たなジャンルの動画、さりげない盛りへの変化などが見られた上半期。10代女子の流行は半年でがらりと様変わりする。下半期はまた違う流行がランクインするだろう。彼女たちが気になるモノやコトは何か、引き続き注目していく。
(写真/鈴木朋子、PIXTA 写真提供/SNOW)