闇バイト 勧誘の手口は? “高収入”や“安全”文言に注意を
SNSを入り口とした闇バイトの勧誘は、犯罪であることを隠して行われるケースがほとんどです。犯罪被害防止に取り組む民間の会社が、調査を目的に勧誘役と通話したやりとりからは、違法行為を匂わせながらも、「高収入」で「安全」だとうたい、引き込もうとする手口がうかがえます。
闇バイト 勧誘の手口は?
(2024年11月7日 午後10:00 まで)
警察と連携した詐欺被害防止のための技術開発や、電話のサービスを提供している名古屋市のIT関連会社では、犯罪の手口を調査する目的で10月上旬、旧ツイッターの「X」で闇バイトを募集していたとみられる投稿にダイレクトメッセージを送りました。
投稿には、「闇バイトに加担してはダメ」と書かれている一方、「本日夜、動ける方。報酬25万円から」という条件や、「即日即金」といった闇バイトの募集でよくみられるキーワードが記されていました。
匿名性の高い通信アプリに誘導されて勧誘役の男と通話し、具体的な仕事内容を尋ねると「単発の仕事だと、運転、運び系とか。1回5万円くらいの仕事ですかね。受け取った物を指定の位置に置いてもらうだけの簡単な運びです」などと話します。
「運ぶ物は何か」と質問すると、「正直グレーです。現金、個人情報の書類、薬物、この3点のどれかなので。絶対に見ちゃいけない。持っていても寒いものなので」などと答えました。
また、「詐欺したカネを持ち逃げした人間から回収する仕事をすれば、1回30万円ほどの報酬が得られる」などと語り、「パフォーマンスで、バットやバールを持ち、相手がカネを払わないなら、手を出しても構わない」などと説明しました。
調査員が、警察官から職務質問を受けないかと尋ねると、勧誘役は、「そこは自己責任なので。季節外れなのにニット帽をかぶったりすると職務質問されるので、普通にやってもらえればいい。よほど怪しくないかぎり、逮捕はない」などと、“安全な仕事”であることを強調していました。
さらに、「今ニュースになっているような強盗は扱っているのか」という質問に対しては、「空き巣に入ることはあるが、人がいるところには絶対行かない。闘いになっちゃうので、ああいうのは避けたい」などと話していました。
勧誘役は、仕事を紹介する条件として、「保証金をいただかない分、身分証を提示してもらう」などと求め、調査員は、「少し考えて連絡する」と伝えて通話を終えました。
『UD』という隠語 札束の写真 添付も
別の闇バイト募集の投稿に対して調査員が連絡を取り、仕事内容について匿名性の高い通信アプリで質問した際の勧誘役からの返信には、「内容に関してはグレーからホワイトなものまでございますが、リスクに関しては徹底したシナリオがありますので、警察沙汰や、危険な目にあうことはまずございません」などと書かれています。
特殊詐欺の「受け子」や「出し子」を示すとみられる『UD』という隠語を使い、「指定された場所でキャッシュカードを受け取り、その後お金を引き出してから振り込むという実働1時間程度の簡単なバイト」などと説明しています。
メッセージには一万円札の札束やアクセサリーの写真が添付され、「何があっても身柄は守ります。目標金額まで徹底的に協力いたしますのであなたも真摯(しんし)に向き合っていただきたいです」などと記されています。
調査企業の担当者 “個人情報は渡さないこと”
調査を行った名古屋市のIT関連会社「トビラシステムズ」の柘植悠孝さんは、闇バイト勧誘の手口について「警察沙汰にはならないと安心させたり、儲かるイメージを具体的に語ったりして、巧妙に犯罪に引きずり込もうとしている」と話します。
会社が行った調査では、旧ツイッターの「X」で別々のアカウントで闇バイトを勧誘していたものの、誘導された匿名性の高いアプリでは共通するアカウント名が使われていたケースもあったということです。
柘植さんは「一つの線引きとして、個人情報は渡さないことが非常に重要だと思う。調査内容をレポートで公開するなどして、注意を喚起していきたい」と話していました。