ドジャース 大谷翔平 記録ずくめのレギュラーシーズン終える

大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手は29日、ロッキーズとのレギュラーシーズン最終戦に出場し、4打数1安打でした。打率は3割1分と変わらず、首位打者と三冠王の可能性はなくなりましたが、去年9月に受けた右ひじじん帯の修復手術のため、2019年以来、5年ぶりにバッターに専念するシーズンで大リーグ史上初の「ホームラン50本、50盗塁」を達成しました。

また、2年連続のホームラン王と自身初の打点王のタイトル獲得をほぼ確実にするなど、自己最高の打撃成績を残し「伝説の1年」と呼ぶにふさわしいシーズンとなりました。

記事後半では大谷選手の歴史的な今シーズンのすべての成績・記録も掲載しています。

レギュラーシーズン最終戦 全打席
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大谷翔平 レギュラーシーズン最終戦は4打数1安打1盗塁

大谷選手の試合前の打率は3割1分で、リーグトップと4厘差として三冠王獲得の可能性を残し、29日、相手の本拠地コロラド州デンバーで行われたロッキーズとのレギュラーシーズン最終戦に臨みました。

1番・指名打者で先発出場した大谷選手はプレーボール直後の1回の第1打席で、アウトコース低めのチェンジアップを打ってセカンドゴロに倒れました。

4回の第2打席はアウトコースの150キロを超える速球を打ってショートゴロ、6回の第3打席はインコース低めの速球を打ってセカンドゴロでした。

1対1の同点で迎えた8回の第4打席は1アウト一塁で、低めの速球を引っ張って打球速度178.3キロの痛烈な当たりでライト前に運び、12試合連続となるヒットで塁に出ました。

このあとダブルスチールを成功させて二塁に進み、今シーズンの盗塁の数を「59」に伸ばしました。

このあと、相手ピッチャーのボークでドジャースが1点を勝ち越し、2対1で勝って最終戦を勝利で飾りました。

大谷選手はこの試合4打数1安打、盗塁1つで、打率は3割1分と変わらず、首位打者と三冠王の可能性はなくなりましたが、数々の偉業を達成したレギュラーシーズンを終えました。

大谷選手は今シーズン159試合に出場し、打率3割1分、ホームラン54本、130打点、59盗塁で、ホームランと打点の二冠はほぼ確実となっています。

ドジャースは98勝64敗でレギュラーシーズンを終え、ナショナルリーグの勝率1位でプレーオフに進むことになりました。

「三冠王」はならず 打率が届かず

パドレスのアラエズ選手はダイヤモンドバックスとのレギュラーシーズン最終戦で3打数1安打をマークし、打率3割1分4厘として大谷選手を4厘上回りました。これにより大谷選手の首位打者の可能性はなくなり、ホームラン、打点、打率の3部門でリーグトップとなる「三冠王」はなりませんでした。

ナショナルリーグで昨シーズンまで2年連続首位打者のアラエズ選手は、最終戦を迎えた時点の打率が3割1分4厘と大谷選手を4厘差で上回っていてレギュラーシーズン最終戦は1番・ファーストで出場しました。

第1打席は空振り三振、第2打席はセンターフライでしたが、第3打席に右中間へツーベースヒットを打って2年連続のシーズン200安打を達成しました。
アラエズ選手は6回ウラの守備から交代して、この試合は3打数1安打で打率は3割1分4厘のままでした。

大谷選手は最終戦で4打数1安打だったため打率は3割1分となり、4厘差のままアラエズ選手が上回り、大谷選手の首位打者獲得の可能性はなくなりました。

大谷選手はホームラン54本、打点130はいずれも2位の選手を大きくリードしてリーグトップに立っていますが、大リーグでは12年ぶりとなる三冠王獲得はなりませんでした。ただ、ナショナルリーグの個人タイトルはまだ確定しません。

ドジャースとパドレスは29日にレギュラーシーズンの全日程を終えましたが、悪天候の影響で試合が延期されたメッツとブレーブスがともに2試合を残し、30日にダブルヘッダーを行うため、タイトルは30日に確定します。

このうち、ブレーブスのオズーナ選手はここまで打率3割4厘、ホームラン39本、102打点で打率ではアラエズ選手と大谷選手に次ぐ3位、ホームランでは大谷選手に次ぐ2位につけています。

ホームランは大谷選手と15本差で、首位打者争いでもオズーナ選手がトップに立つには2試合で9安打以上が必要です。

仮にオズーナ選手が2試合で9打数9安打なら3割1分5厘、10打数9安打なら3割1分4厘1毛となり、3割1分3厘9毛のアラエズ選手を上回り、首位打者となる可能性も残されています。

アラエズ 3年連続首位打者に大きく前進

アラエズ選手はことし5月にマーリンズから同じナショナルリーグのパドレスに移籍し、3年連続の首位打者に大きく前進する3割1分4厘の打率でレギュラーシーズンを終えました。

試合後、取材に応じたアラエズ選手は「200本目のヒットを打つことに集中していた。大谷がきょうどうだったかは知らないが、自分もいまは調子がいい。ツーベースを打ったときは『タイトルはまだ自分のものだ』と思った」と振り返りました。
そのうえで「みんなはホームランを打ちたいと思っているが私はとにかく出塁して毎年3割を打つことを目指している。大谷は特別な選手で、ここ最近は本当にすごい成績だったが彼も完璧ではなく、人間だ。今回、タイトルを獲得できたと思っているが神に感謝したい」と話し、3年連続のタイトル獲得を確信した様子でした。

《大谷翔平 今季成績※順位は現地29日終了時》

▽出場 159試合(自己最多、チーム最多)

▽打率 3割1分(リーグ2位、自己最高)

▽ホームラン 54本(リーグ1位、自己最多、ドジャース球団新記録)

▽打点 130(リーグ1位、自己最多)
※松井秀喜さんの持つシーズン116打点の日本選手最多記録を更新。

▽盗塁 59(リーグ2位、自己最多)
※36回連続成功でシーズン終了し、成功率93.6%。
※イチローさんの持つシーズン56盗塁の日本選手最多記録を更新。

▽得点 134(リーグ1位、自己最多)
※イチローさんの持つシーズン127得点の日本選手最多記録を更新。

▽安打 197(リーグ2位、自己最多)

▽OPS(出塁率+長打率) 1.036(リーグ1位)

ナショナルリーグは30日にメッツとブレーブスのダブルヘッダーを残しているため記録がまだ確定していませんが、大谷選手がこのままホームラン王を獲得すれば2年連続で、両リーグでの受賞はマーク・マグワイアさん以来、大リーグ史上4人目です。

マグワイアさんは1987年にアスレティックス、1998年にカーディナルスで当時の大リーグ記録のシーズン70本のホームランを打って両リーグでタイトルを獲得しました。

今シーズン、大谷選手が1打席あたりにホームランを打つ確率は7.4%で、44本を打ってホームラン王を獲得したエンジェルス時代の昨シーズンと同じ数字ですが、バッターに専念したことしは疲労がより少なく、シーズン終盤までトップレベルのパフォーマンスを維持し続けました。

打席数で見ても、昨シーズンよりも132打席も多く立ったことで記録を大きく伸ばす結果となりました。

大谷選手 今季打点(各月ごと)と大リーグ通算打点

打点王のタイトルを獲得すれば日本選手では初めてとなります。

大谷選手は主に2番で出場していた6月中旬までは70試合で46打点でしたが、ベッツ選手のけがで1番を務めるようになってからは89試合で84打点と一気にペースを上げました。

チームのホームラン数がリーグ1位、得点数もリーグ2位というドジャースの強力打線の中で大谷選手により多くの打席が回ったことが打点の増加にもつながりました。

シーズン116打点をマークしたヤンキース時代の松井さんは主に4番や5番を務めましたが、大リーグでは近年、大谷選手のように長打力があって出塁率の高いバッターを1番に起用するケースが増えていて、今シーズンはフィリーズのシュワーバー選手がほぼ全試合で1番を務めてホームラン38本、104打点、昨シーズンはドジャースのベッツ選手がホームラン39本を打ち、107打点をあげています。

◆歴史に残る記録も数多く達成

さらに、今シーズンの大谷選手は歴史に残る記録も数多く達成しました。

松井秀喜さんを上回る日本選手最多のHRに

・通算ホームラン 225本(日本選手・アジア出身選手最多)

4月21日、本拠地でのメッツ戦で打った今シーズン5号が大リーグ通算176本目のホームランとなり、松井さんが持つ日本選手の最多記録を更新しました。その後、シーズン終盤には韓国出身のチュ・シンスさんが持っていたアジア出身選手の最多記録、218本も更新しました。

大リーグ 過去の「40-40」達成者

・ホームラン40本、40盗塁の「40-40」(大リーグ史上6人目)

8月23日、本拠地でのレイズ戦でホームラン1本、盗塁1つを記録して到達しました。最後は自身初のサヨナラ満塁ホームランで達成するという劇的な展開でした。

・ホームラン50本、50盗塁の「50-50」(大リーグ史上初)

9月19日、マイアミで行われたマーリンズ戦で6打数6安打10打点、ホームラン3本、2盗塁という驚異的な活躍で達成しました。「40-40」の達成からわずか3週間ほど、右ひじの手術を受けてからちょうど1年となる日に、WBC=ワールド・ベースボール・クラシックで優勝を果たした思い出の球場で新たな歴史を刻みました。

・打率3割、ホームラン30本、30盗塁のトリプルスリー(日本選手初)

シーズン最終戦で打率3割以上を確定させ、大リーグの日本選手では初めてトリプルスリーを達成しました。
ホームラン30本、30盗塁には8月3日に到達しましたが、打率は9月18日の時点では2割8分7厘まで落ち込んでいました。
しかし、「50-50」を達成した19日以降は最終戦までの10試合で43打数27安打の打率6割2分8厘と驚異のペースで最終的には自己最高の打率3割1分まで上げました。

【解説】打者として圧倒的な存在に

「ホームラン30本は打ってほしい」

今シーズンが始まる前のキャンプで、地元メディアの記者が口にしたことばを覚えています。移籍1年目からチームを引っ張る活躍ができるのかという周りの懐疑的な声を、バッターとしての圧倒的な成績でかき消して見せたシーズンでした。

大谷選手が1回目の右ひじの手術を受けた翌年の2019年、バッターとしての成績が振るわなかったことから、2回目の右ひじの手術のあとバッターに専念する今シーズンを前に、期待と不安、両方の声がありました。

大谷選手は“ピッチャー大谷”の穴を埋め、チームの勝利に最大限貢献するには自分に何ができるかをひたすら追い求めました。

キャンプでは1人別メニューでコーチやトレーナーとともに盗塁のスタートのフォームをミリ単位で調整し、スプリントの加速力を鍛えてきました。その様子を走塁を担当するマッカロー一塁コーチは「彼は攻撃面で自分の限界に挑戦しようとしていた」と振り返ります。

持ち前の長打力に加え盗塁という強みを手に入れた大谷選手は、好不調の波を繰り返しながらも着実に、数字を積み重ねていきました。

日本選手最多となる通算176本目のホームラン、史上3番目の早さでのホームラン30本、30盗塁の「30-30」の達成。そしてサヨナラ満塁ホームランでの史上6人目の「40-40」。

ドジャースに移籍した1年目の今シーズン、開幕当初から人気の高かった大谷選手ですが、シーズンが進むにつれて球場や街には目に見えて大谷選手のユニフォームを着たファンが多くなりました。

ドジャースタジアムの外野フェンスなどには日本企業の広告が増え、ビジターでも大谷選手目当てのファンが多く訪れる様子にロバーツ監督は「大谷効果だ」と目を丸くしていました。

特にロサンゼルスの街なかは大谷選手の壁画が次々と出現しまるで街が大谷選手に書き換えられていくかのようでした。

そして9月19日、大リーグ史上初の「50-50」を6打数6安打10打点、ホームラン3本、2盗塁という圧倒的な活躍で達成し、その偉業は野球という枠を超えて数々の著名人にもたたえられました。

大谷選手自身が「今までの記録はやっている人が少ない中での記録が多かった。比較対象が多い中での新しい記録という意味では自分にとって違いはある」と話すように、“投打の二刀流”でなく1人のバッターとして10年総額7億ドルというプロスポーツ史上最高額の契約に見合う存在と周囲に認めさせるシーズンとなりました。

そして、ここから大谷選手にとっての初めての10月の戦いが始まります。ドジャースはシーズン終盤に先発ピッチャー陣が相次いで離脱し、短期決戦に向けて不安を残します。

レギュラーシーズン最後の10試合で43打数27安打の打率6割2分8厘、ホームラン6本、20打点という驚異的な成績を残している大谷選手は、その要因について「打撃の質の先が見えた」と話し、一時的な好調ではないことを感じさせました。

この集中力を維持してチームの打線をけん引することができるのかがカギを握ります。

これほどの成績を残しながらも「個人の数字はあまり見ていない」とチームの勝利を追求し続けてきた大谷選手。ワールドチャンピオンという最高の結果でこの伝説的とも言える1年を締めくくることができるのか、ポストシーズンの戦いからも目が離せません。
(ロサンゼルス支局 記者 本間祥生)

《大谷翔平 プレーオフに向けて【一問一答】》

大谷選手はレギュラーシーズン最後の試合のあと、報道陣の取材に応じました。自己最多の159試合に出場し、大リーグ史上初の「50-50」の達成など伝説的とも言える今シーズン。特に終盤の好調ぶりについては「打撃の質の先が見えた」と話し、プレーオフでのさらなる活躍を期待させました。

また、チームメートや妻の真美子さんと愛犬のデコピンなど周囲のサポートへの感謝のことばも口にしました。

(アメリカメディア)
Q.1年間振り返って、いちばん記憶に残った功績、出来事は?

大谷翔平 選手
「いろいろ、もちろん記録とかいろいろありましたけど、まずは1年間しっかりと安定して出られたのがいちばん自分の中でよかったですし、それに伴ってケアをしてくれた人たちもそうですし、サポートしてくれた人たちにまず感謝したいと思います」

Q.ホームラン50本、50盗塁を達成したあと、ロバーツ監督は打率重視のバッティングに切り替えたのではないかと言っていたが、なにか変えた点はある?

「ヒットの方にシフトしたということはもちろんないですけど、いい打席を送りたいなとは思っていたので、その先で、こうもう一段、打撃の質で言うと先が見えたのは、まず後半はよかったんじゃないかなと思います」

Q.三冠王の可能性があったが、どれくらい意識していた?

「それはあんまり考えてなかったですかね。どのくらいの差があるのかとかもちょっとよくわかってないですし、とりあえず自分のいい打席を送りたいなと思っていました」

Q.チームメートが大谷選手の記録を喜んでいるが、どれくらい感謝しているか?

「素直にうれしいですし、このチームの一員としてまず1年間できたことに感謝したいですし、チームメートのサポートにも感謝したいと思います」

Q.5日間空けて、プレーオフに入るがどう準備する?

「もうここから先はシーズン中に積み上げた成績とか、数字というのはもう意味ないので、しっかりと自分の調子を維持すること、気持ちを切らさずにその間の日を過ごしていきたいと思います」

Q.プレーオフの間はピッチャーとしてのリハビリは続ける?

「継続はもちろんするとは思いますけど、もちろんいちばん大事なのは試合なので、そこに自分が支障がないと思えばもちろん継続的にリハビリは続けていくとは思います」

Q.地区シリーズまでの間にピッチャーと対戦する?

「多少入ることでやっぱり実戦感覚は養わないといけないと思うので、どれがいちばんいいのかというのをまず、僕も初めての経験なので、探しながらやりたいと思います」

(日本メディア)
Q.レギュラーシーズンでいちばん記憶に残っているシーンは?

「いちばんはわからないですかね、そのときそのときでやっぱりうれしさもありますし、これからまだポストシーズンあるので、あまり今シーズンをすごく振り返るということはないので、それよりいい思い出がこの先来るように努力したいなと思っています」

Q.高いレベルで健康にプレーできた要因は?

「毎日同じルーティーンをしっかりとこなせたと思いますし、それに伴って周りの人のサポート、僕1人のルーティーンではもちろんできないので、毎日同じ時間に同じことをなるべくできるようなスケジュールというのをまず話し合いながらできたのがよかったのかなと思います」

Q.「打撃の質の先が見えた」というのは?

「バッティングの質がやっぱりよくなったのかなとは思うので、それはトータルして見たときに、自分のいい結果を出しに行く過程がすごいよくなってきたんじゃないかなと思っています」

Q.妻や愛犬、新しい家族からはどんな力をもらっている?

「もちろん1人でいるよりもなんていうんですかね、野球以外を考える時間も多くなったというか、それがいい方向に、自分の中で、よりグラウンドにいるときに野球に集中できるようになったのかなと思うので、そこももちろん感謝したいなと思っています」