中高生におすすめしたい一冊
読書の秋。読書好きな人もそうでない人も、この季節はなんとなく本を手に取ってみようと思うのではないでしょうか。
今月は、キャンパスレポーターの先輩たちがぜひ中高生に読んでほしい!と感じたおすすめの一冊をご紹介します。勉強の合間に読んでみてください。
▲シリーズものが合わせて5冊出版されている、
とても人気の本です。
『夢をかなえるゾウ1』(文庫版)水野敬也 著 文響社
私の好きな本の一つは、『夢をかなえるゾウ』です。
私は中学生のときにこの本を読んで、利他の心を学びました。学びがたくさん詰まった自己啓発の部類に入るような本であるにも関わらず、関西弁のゾウが平凡なサラリーマンの主人公に対して話す内容や全体のストーリーはとてもおもしろく、読んでいてまったく飽きません。
中学生のころ読んだときには、本当にこんなことが夢をかなえるために必要なのだろうかと疑問に思うものもありましたが、利他の心の大切さを以前より理解した今では、納得できるようになりました。小説として楽しみながらも、たくさんの学びを得られる本ということで、中高生におすすめしたい一冊です。ぜひ読んでみてください。
▲歴史に詳しくない方でも読みやすいです。
『家康、江戸を建てる』<四六判 >門井慶喜 著 祥伝社
今回、ご紹介するのは門井慶喜さんの『家康、江戸を建てる』です。
この本は、江戸に来ることになった徳川家康が、広大な湿地帯であった江戸をどのように開発していったのかを、街づくりに携わった人物視点で描く作品です。いかに現在のような大都市・東京が形成されていったのかを知ることができるので、勉強にもなります。
大学で歴史学を学ぶ者としては、歴史は過去から現在に絶えずつながるものだと考えています。実際、この本の作者の門井さんも歴史のつながりを示すべきだとして、執筆されたそうです。さらに、門井さんは近代東京の始まりを描く『東京、はじまる』『地中の星』も書かれていますので、併せて読むのもおすすめです!
▲上下巻を合わせると一枚の絵のようになる
お気に入りの表紙です。
『かがみの孤城』<上・下>辻村深月 著 ポプラ文庫
私が今回紹介する一冊は辻村深月さんの『かがみの孤城』です。この本は高校生のときに最も感動した本です。
2018年に本屋大賞を受賞、2022年にアニメ映画化もされたこの小説は主人公のこころをはじめとした、心を閉ざしてしまった7人の子どもたちが、孤城の中で願いがかなう鍵を探しながら、それぞれの問題に立ち向かっていこうとする、というストーリーです。
この物語で一番心を打たれたポイントは、孤城の主のような存在である“オオカミさま”の正体と孤城を作った理由が明らかになり、数々の伏線が回収されるクライマックスです。7人の子どもたちが孤城の中だけではなく、現実の世界でも支え合っていたとわかったとき、涙があふれました。
さまざまなことを感じ葛藤する中高生にぜひ読んでもらいたい一冊です。
▲抽象的なテーマも、大学で習うような事柄も、
対話形式でわかりやすく説明されているところがポイントです。
『進化しすぎた脳 中高生と語る[大脳生理学]の最前線』 池谷裕二 著 講談社 BLUE BACKS
これは私が高校2年生のときに夢中になって読んだ本です。
著者である池谷裕二先生が8人の高校生に対して行った〈脳〉に関する講義を本にしたもので、脳にまつわるさまざまな話題に対して、活発なディスカッションが繰り広げられます。「心」「意識」「記憶」といった現象は一体何なのだろうか?といった哲学的な問いかけから、脳の構造に関する脳科学的な説明、最新の知見までさまざまな切り口で〈脳〉を考えます。
みなさんも、この『進化しすぎた脳』を読みながら、〈脳〉のことを考え理解するために自分の〈脳〉を使う、そんな不思議な感覚を楽しみませんか?
▲なんだか孤独感に苛まれて苦しい。そんな人に読んでみてほしい本です。
『アルジャーノンに花束を〔新版〕』 ダニエル・キイス 著/小尾芙佐 訳 ハヤカワ文庫NV
今回紹介するのは、ダニエル・キイス著の『アルジャーノンに花束を』という作品です。
本をめくると、一般的な文学作品では考えられないような「読みにくい」文章が書かれており、初めて読んだときに面食らってしまいました。「読みにくい」とは高尚なのではなく、なんとすべてひらがなで書かれているのです。
その理由は、主人公チャーリイが知能が幼児水準の32歳であり、彼の日記形式で書かれているためです。治療の結果、チャーリイの知能が成長を遂げ、日記も読みやすくなります。
すばらしい知能を手にしたチャーリイに待っていた未来は、果たして望んでいたものだったでしょうか。読み終えたあなたは、自分を今より大切に思えるでしょう。
▲「オリジナルカバー」の表紙にはイニシャルが刺繍されています。
『人を動かす』 D・カーネギー 著/山口博 訳 創元社
大好きな本を、誕生日プレゼントで母に装丁してもらいました。表紙ではなんの本だかわかりませんね(笑)。
中身はD・カーネギー氏の『人を動かす』です。人付き合いでたくさん悩んだ中学生のとき、偶然手に取って読んだのがこの本でした。
1937年に出版された本ですが、人間って昔も今もそんなに変わらないな、と思うようなエピソードがたくさん載っていて、読むと次の日誰かに話しかけたくなります。中高時代はクラスや部活の人間関係で悩むことも多いと思いますが、抱え込んでしまったときに拠り所となる本が一冊あると少し気持ちが軽くなるかもしれません。
オリジナルカバーは少し堅苦しいですが、ぜひ手に取ってみてください。
▲この詩集を起点に最果さんのほかの詩集やエッセイも読み始めました。
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』 最果タヒ 著/
佐々木俊 デザイン リトルモア
私がおすすめしたい本は、最果タヒさんの『夜空はいつでも最高密度の青色だ』という詩集です。
中学3年生のころにテレビでこの詩集が紹介されているのを見て、一気にその世界観に引き込まれすぐに書店に買いに行ったのを覚えています。それまで詩集はほぼ読んだことがありませんでしたが、最果さんの繊細に言語化された感情の一つひとつを読んでいくうちに詩の表現の自由さや奥深さに気づき、一気に好きになりました。ほかの作品を読んでいく中でも定期的にこの詩集に戻ってくるくらいには私の原点となっている本です。
▲本の内容にあわせて、猫の写真にしました。
『ウォーリアーズ』 第Ⅰ~Ⅳ期【各シリーズ全6巻】
エリン・ハンター 作/高林由香子 訳/小澤摩純 絵 小峰書店
私のおすすめしたい一冊は、『ウォーリアーズ』という本です。
この本は、森の野生の猫についてのファンタジーストーリーです。森に住む4つの猫の部族の、冒険や戦いが主にストーリー展開され、仲間や、命の大切さ、そして何事も努力することが大事だということを考えさせられる話です。
猫の世界の話ですが、共感できる部分も多く、一方で人間の残忍さを考えさせられる場面もあり、興味深い内容となっています。
この本はもともと英語の本で、日本語版は第4期シリーズまで刊行されています。登場する猫たちや、場所の名前が英語なので、私はこの本を読むことで、英単語を知るきっかけになりました。対象年齢としては中学生にぴったりだと思います。高校生にはぜひ英語版を読んでみてほしいと思います。