不動産業は、宅地や建物の物件情報をユーザーに広く伝達する業務が基本であり、古くから「情報産業」といわれています。今日のようにインターネットが普及している高度情報化社会において、不動産業自体も大きく「高度情報化産業」として変容しています。
みなさんは、「まちの不動産会社」という言葉やその仕事に、どのようなイメージをもっていますか?「店も小さいし、大手の不動産会社と違って情報量が少なそう」といったイメージを抱いてはいないでしょうか?
たしかに、十数年前までは、そういった会社もありました。しかし21世紀に、このような会社が生き残っていけるはずがありません。連日テレビCMを放映し、全国的知名度の高い大手不動産会社と比べ、サービスの質も量も劣っていた時代は遠い昔の話。「まちの不動産会社」も、代替わりによる若い経営者の台頭、異業種からの転職組などが中心となり、時代の変化、ユーザーニーズの移り変わりに合わせて、ドラスティックに、そして急速に近代化しているのです。
たとえば「情報」。一般ユーザーにはあまり知られていないことですが、大手不動産会社でも、「まちの不動産会社」でも、社員数や資本力が違うからといって入手できる不動産情報に大きな差は存在しません。実は、全国の不動産業者が取り扱う物件情報は、「レインズ」というデータベースに集約されています。そして、全国どの業者でも、パソコンや携帯電話で自由にアクセスすることができるのです。免許業者の8割が加入する全宅連においては、会員専用の物件情報サイト「ハトマークサイト」を運営しています。ここでは常時30万件にも及ぶ物件情報があり、会員業者にとっては、営業面において大きなビジネスツールとなっています。
次に営業スタイルはどう変化しているのでしょうか?今の時代、住みたいまちの不動産会社を直接訪ねるスタイルのユーザーは、少なくなりました。多くの人は、パソコンや携帯電話を使ってインターネットにアクセスし、不動産会社のホームページや不動産ポータルサイトから物件情報と不動産会社情報を入手しています。まちの不動産会社も、いまや情報武装は万全です。自社でホームページを開設し積極的に物件情報を公開したり、全宅連のハトマークサイトを通じてユーザーに物件情報を紹介したりして、ユーザーニーズに応えています。また、ノートパソコンを駆使し、顧客へのプレゼンテーションを行う若い経営者や社員も増えており、そのITスキルは大手企業と遜色なくなってきています。さらに全宅連においては、取引に必要な最新の重要事項説明書や契約書をいつでも全宅連のホームページからダウンロードできる会員支援システムをもっていることから、会員業者の業務も大きく高度情報化しているのです。
店づくりも変わってきました。情報の入手手段が紙媒体からITへと変化したことで、店頭に情報を張り出す必要はなくなりました。そこで、若い女性でも来店することに抵抗を感じない、明るく、開放的で、おしゃれな店づくりをする店舗も増えています。
そこで働くスタッフ達も、大手不動産会社に負けないだけの素養を持っています。宅建協会が実施する様々な集合研修や情報発信を通じて、必要な法令などの知識、マナー、業界トレンドをいち早く入手することができ、日々研鑽に努めているからです。たとえ店構えは小さくても、知名度が低くても、ユーザーに提供する情報やサービスの量や質は、大手不動産会社に負けていないことがご理解いただけたでしょうか。
一方、まちの不動産会社は、大手不動産会社には無い強みを持っています。それは「地域に密着していること」です。
不動産の価値を左右する重要な情報の1つに「地域情報」があります。いくら情報の共有化が進んでも、本当に有益な地域情報をインターネットから得ることは至難の業です。地域情報は日々刻々と変化し、かつ実際にまちに赴かないと見えてこないからです。たとえまちに出店していても、大手不動産会社のスタッフは、その多くがエリア外から通勤してくるサラリーマンであり、地元の情報には案外疎いものです。
しかし、まちの不動産会社は違います。なぜなら、経営者自らがそのまちで暮らし、まちを歩き、まちの商店主や住民とふれあいながら、日々変わりゆくまちの「最新の姿」を知り尽くしているからです。そして、ひとりの住民として、そのまちを愛し、不動産業を通じてそのまちをよくしていこうと日々努力しているのです。だからこそ、「そのまちに住みたい」と訪ねてくれたお客様に対し、全身全霊を傾けてお世話することができるのです。この気持ちが相手に伝わることで、お客様と一生のお付き合いになるケースも少なくありません。
これまで述べてきたように、地域に密着した不動産業という仕事は、たくさんの魅力にあふれ、やりがいがあります。この「やりがい」は、店の規模や資金力とはまったく関係ありません。「やる気」があれば、不動産業は小資金でもスタートが可能です。但し計画的かつ長期的に継続していく経営のためには、物件情報システムや研修、法令情報、住宅ローン等の業務サポートが必要不可欠です。これらの事業インフラが一度に整う宅建協会に加入することは、不動産業を展開するうえで、大きな意味があります。全業者の8割が宅建協会に加入している実績をみても、そのスケールメリットを生かした組織力、サポート力は開業する者にとって大きな安心となります。いくら情報化が進展しているといっても不動産業の基本は「人と人とのコミュニケーション」です。一会員が問題に直面した場合でも、宅建協会には、近隣の会員同士で話し合い問題を解決する仲間意識があり、ソフト面でも会員が相互に支えあう伝統的な環境があります。
このように地域密着型の「まちの不動産会社」は高度情報化に対応しつつも、以前にも増して「人と人とのつながり」を大切にする社会的役割は高まっています。不動産業界で、地域と暮らしを支える「やりがい」を感じてください。