<第31回株主総会トークセッション>「企業版ふるさと納税について」

インタビュー

2024年6月27日(木)に公益財団法人アクロス福岡 円形ホールにて「第31回定時株主総会」を開催いたしました。
株主総会終了後、当社代表取締役社長兼CEO時津孝康、社外取締役である株式会社チェンジホールディングス代表取締役兼執行役員社長の福留大士氏、レベニュー事業部部長 松本銀士朗による「企業版ふるさと納税について」のトークセッションを行いましたので、その様子をレポートいたします。

<登壇者>
代表取締役社長兼CEO 時津孝康
社外取締役 福留大士
レベニュー事業部部長 松本銀士朗
以下、「時津」「福留」「松本」と表記しております。

時津:今回は、事前に投資家の方から質問でもいただいた「企業版ふるさと納税事業」についてのトークセッションを、ふるさと納税のパイオニアであるチェンジHDの福留社長と当社の企業版ふるさと納税事業の責任者の松本でお届けしようと思います。
質問を事前に6個用意しました。全く市場は違いますが、同じふるさと納税というワードではあるので共通点や注意しないといけないことなど学びになればと思い、今回このテーマで実施させていただきます。
はじめに企業版ふるさと納税事業の責任者、松本の自己紹介からお願いします。

松本:レベニュー事業部の部長をしております、松本と申します。新卒で2017年4月に入社しており、当社が上場して最初の新卒です。入社後の3年間は祖業の広告事業で現場からスタートし、広告を売って、課長職やマネジメントラインを経験しました。その後4年目から事業開発室で新規事業を開発する部署に異動し、企業版ふるさと納税事業の立ち上げに関わり、今は部長をしております。短い時間ではありますが、よろしくお願いいたします。

時津:ちなみに松本はうちの最年少の部長になります。我々は年功序列では全く考えてないので男性だろうが女性だろうができる人が上に上がってくるというのを非常に大切にしている会社になります。
福留社長は皆さんご存知の通りだと思いますので自己紹介は省かせていただきます。

福留:はい。よろしくお願いします。

 

Q1 企業版ふるさと納税制度を作った国の意図について、どのように捉えていますか?個人版との違いをふまえつつお聞かせください。

福留:はい。推進している内閣府のホームページを見たりとか、あとジチタイワークスを見たら色々情報あると思うんですけど、今日はせっかくなので、裏話じゃないですけれども国がどういう議論で作ったかっていう話をしたいと思います。
まず個人版ふるさと納税制度の本当の名前って、ご存知ですか?
本当の名前、国が制度として定義している名前は「ふるさと寄附金制度」なんですね。ただ「ふるさと寄附金」っていうのがあまりなじまなくて。いわゆる純粋寄附だった時っていうのはなかなか市場が大きくならず、100億円ぐらいの市場で今みたいに「返礼品があります」と寄附に対するちょっとしたお礼があって初めて、ものすごく伸びて今1兆円を超えたところです。
いわゆる税制を使った寄附制度、個人でいうと所得税とか住民税っていう税金を使ってその税金を原資にして、例えば私は鹿児島で生まれて18歳まで鹿児島でいっぱい投資してもらって1円も鹿児島には税金を払わずに東京に出てきて東京で税金を納めています。この住民税にしても所得税にしても全部東京で納めてるわけですよね。これを故郷の鹿児島にちょっとは分けてもいいじゃん、っていうそういう趣旨なんですよ。
これは企業も同じでしょう、と。結局東京でビジネスをしている企業も、地方にお世話になっています。例えば東京でビジネスをやっているときに必要なエネルギーは大体新潟だとか福島だとか、最近ですと周辺の火力発電所、近隣の県の火力発電所だったり、特に群馬県とかいろんなところから供給を受けてできてます。極端な話、企業の存立も個人の生活もいわゆる周りの地方なくして成り立たないよね、それだったら税金使って例えば企業版でいうと法人税を原資にしてそれを一部寄附してはどうか、と言うのが国の意図です。
実は日本はこれだけGDPが大きくなったのに寄附がものすごく少なく、みんな寄附をしない。寄附したくないというよりは、昔から寄附の習慣がなかったり、どこに寄附していいかよく分からないみたいなところがあったんで、じゃあその寄附の市場を大きくするためにこのふるさと納税というのを立ち上げよう、というような意図と地方創生を両方やり始めたっていうのが経緯ですね。

時津:いわゆる1兆円までいくというのは、個人版は相当な成功パターンの一つということですよね。

福留:そうですね。だから結局国が作る制度っていうのは、まさにホープにしてもそうですし、我々チェンジホールディングスもそうですけれども、国が作る制度をどうやって世の中に浸透させていくのか、広めていくのかっていうのを担う所に僕らビジネスチャンスがあると思っていて、個人版は本当にうまくいったと思います。
全体のマーケットポテンシャルが、いわゆるTAMと言われる、一番最大取れた時の市場規模っていうのが2兆5000億円ぐらいなんですけれども、もう1兆円までいってるのでこれは多分国の制度とか国が何かしら作った仕組みで言うと、ものすごく急速に大きくなった制度かなと思います。

 

Q2 個人版同様に企業版ふるさと納税制度がさらに普及するために、必要な条件は何だと思いますか?(国の役割、自治体の役割、企業の役割)

松本:いくつかあるんですけど、1つは個人版と圧倒的に違うのが経済的な利益が禁止されていて返礼品がないというところで、使いづらいのかなと思います。これは多分解放するってなると結構時間がかかるので現実的ではないかなと。
国の役割としては、まず結果グレーゾーンと言いますか、制度があまりちゃんと整備されてない状態っていうのは国自身としてもやっぱり自覚はあると思うので、そこをしっかり整備していただいて、明確に自治体の方にもやってくださいと伝えてほしいと思います。
自治体の方もやっぱり国から言われたら動きますし、今は何をしたらいいかわからない状態になっているので、まず国から自治体を動かしてもらうっていうところが必要なのかなと思います。
企業の役割については、福留社長もさっきおっしゃった通りです。やっぱりなかなか知らないっていう人が多いので、まずその社会的責任が高まっているっていう状況もありますので、この企業版をどんどん使っていく、社会貢献をしていく、というところで実績を作る。そしてどんどん寄附してもらうっていうのが企業の役割なのかなとは思いますね。まずは国からかなと思います。

時津:ちなみに今内閣府は9割軽減・控除っていう時限立法みたいなものがあるじゃないですか。あれってやっぱり影響として大きいのですか?

松本:そうです。入り口としてはやっぱり企業の皆さんは9割軽減・控除と思ってお問い合わせいただくんですけれども、これは結構ミスリードをしていて。実際に顧問税理士とかに話して電卓たたいてみると、意外と9割軽減されない、というケースがほとんどなので、その辺はやっぱりちゃんと明示した方がいいかなと思いますね。

時津:実際企業側が寄附をするインセンティブについて、ベネフィットがないという以上は、企業版のインセンティブは何かありますか?個人版は何かしら返礼品や地域にお金を落とせると思いますが。

松本:一つは、経済的な利益を得ることが禁止されているとはいえ、例えば首長に直接会えたり、感謝状を直接もらったり、自社のホームページでPRします、というところもあります。そこに価値を感じる企業や経営者は結構いらっしゃるのかなと思います。

 

Q3 法人が税金の使い道、用途を決める事が出来るのは画期的な事だと思いますが、この点についてのお考えをお聞かせください。

福留:まさにこれなんですよ。個人版も企業版も我々が税金の使い道を決めることができるというのが多分、一番のメリットだと思うんですよね。特に企業版で言うと、ちょっと無駄遣いじゃないのかと疑問に思う制度に対して「もし自分がこの街を経営してたら」とか「この市を経営してたらもっとうまくお金使うのにな」と思う社長さんって多いですけど、その人が「こうすればいいんだ」「ここにお金を使ってください」「子供の教育が一番町として投資しないといけないところだから子育てにとにかく投資してくれ」と言うのをある種指定するっていうのはですね、これ本当にすごいことだなと思います。
昨日もですね、実はとある大企業の社長が「47都道府県、東京都には純粋寄附で残りの46道府県に、1道府県あたり10億円ずつ寄附して470億円今年寄附しようかと思う」と言われました。これは2つのことを意味していて、1つはまず企業版ふるさと納税がまさにミスリードされてる。「だって9割控除されるんでしょ」と。「いや社長違います。これ470億円がまず営業利益にヒットしますよ」と。「御社の営業利益は大体1兆円ぐらいなんで5%営業利益減らしますよ」というのが1つ。
あと「御社の9割軽減枠は150億ぐらいです。なのでこれ470億も寄附したら、後で多分社長クビになりますよ」と言う話をしたんです。でも、それぐらいその社長も言ってたのが「いやうちの会社としてこういうことを推進したいんだ」と。「そして地方にこういうことをお願いしたいんだ」ということを言っていてですね、自分たちの理念をある意味その自治体と協調しながら実現したい、そんな経営者の「想いを叶えるツール」っていうのはあるなと思いますね。

時津:そうですよね。新しい時代SDGsとかがよく言われるじゃないですか。営業利益さえ上げればいいっていうところもあるのでしょうけど、一方で本当に自分たちが頑張って納めたお金が、自分たちの町の子育てに使われる、というのはめちゃくちゃ美しいなと思います。この企業版は私たちが営業する時には「税金の使い道まで指定できますよ。そのまま払ってたら何に使われるのか分からないじゃないですか」という話をします。同じ考えですよね。

 

Q4 企業版ふるさと納税支援サービスを紹介したときの、自治体や企業の反応について教えてください。サービス開始当初と比べて、制度の認知度は変わってきましたか?
また寄附をする企業の動機はどのような理由が多いのでしょうか?

時津:松本への問いですが、こちらは先程の問いと重複したので飛ばします。企業版ふるさと納税制度における、寄附件数と寄附金額の推移のみご紹介しておきます。

Q5 「地方創生」というワードの本質的な意味をどうとらえていますか?

福留:「地方創生とは」っていうキーワードで検索していただくと、ジチタイワークスが1番最初に出ますのでぜひ見ていただければと思うんですけど。
僕の中ではやっぱり人とお金の循環だと思ってまして、要するに地方からお金と人が流出するっていう仕組みがこの1960年代ぐらいから出来上がってきたわけですよね。これがなかなか止まらないと。人口減少が止まらないし、実際に日本全体としてお金があるように見えるけれども地方からどんどんどんどんお金がなくなっていく。この、人とお金の循環っていうものがちゃんと国の中で都市部と地方で起こっている状態。これで地方が活性化するというか、持続可能な状態になってるっていうのが地方創生かなっていうのが僕の解釈ですね。

時津:松本はどうですか。こんだけ地方にお金を持っていく、約5億円も地方に持っていくというのは貢献度高いと思いますが。

松本:本質的には地方が自走すること、地方が自走している状態が地方創生なのかなと思います。本当にそれこそ公式のサイトとかウェブ上で地方創生で調べたら、地域の中で持続的な発展とか平たく書いてあるんですけど、突き詰めるとやっぱり地方が自走していることが地方創生なのかなと考えています。

時津:寄附を集めること自体が仕事じゃないですか。その企業の情報を集めて、「この自治体のこういうプロジェクトに寄附をしませんか」と言う時ってモチベーションや感情としては、地方創生に寄与してるとかそういう感覚になるんですか?

松本:はい、あります。感謝は自治体だけじゃなくて、その企業側からもされます。やっぱりほとんどの企業が(この制度を)知らないので、非常に感謝されることが多いです。「来年はどの自治体が寄附できるか教えてほしい」と言われることも多いですし、そこはかなり感じることが多いですね。

時津:でもいきなり提案書類を企業に送ってて驚かれないですか?違う自治体へ企業版ふるさと納税しませんかって寄附依頼するわけですよね。結構驚きの反応で返ってくることが多いですか?

松本:そうですね。「なんだこれは?」という連絡を頂くこともあります。だけど我々も作業でやってるわけじゃないことをちゃんと説明をして、最終的には皆様に納得していただいた上で気持ち良く寄附をしてもらってるので、そこは本当に非常にいいこと、地方創生に関与しているなと感じますね。

時津:そうですね。寄附を集めるっていうことをすると、やっぱり詐欺行為を疑われてその自治体に実際に確認の連絡がいったりするわけですよ。「ジチタイアドという会社が自治体の寄附を集めてるけど本当なのか」と。自治体に確認が行って、自治体からうちに確認が入って、ということもやっぱりあったりする。

それぐらい我々は、今回の企業版においてはアーリーステージ、非常に早いタイミングでサービスインをさせていただいているという感覚があります。

 

Q6 最後に、今後企業版ふるさと納税支援事業に関して期待することは何ですか?

福留:はい。いやこのマーケットって正直絶対難しいと思っていて。松本さんにも、「これ本当に何のメリットもない法人に『寄附してください』っていう営業、本当に難しいから頑張ってね」っていう話をしてまして。でも本当にそこをちゃんとクリアして去年で5億円。まぁまぁすごい成長率で寄附を集めるわけですけれども、この地道な営業力。5億円集めるって本当にすごいことだと思うんですよ。

3、4年前ぐらいに自分でも営業してみたのですが、その時「企業版は無理だな」と思ったんですよ。でもやっぱりさっき時津さんがおっしゃっていたような、人の意思決定の動機って本当にいろいろある。例えば自分のオーナー企業であれば、そこで出した利益の処分っていうのは、そのオーナーがある程度決められるわけです。例えばそのオーナーの出身地に寄附を提案する。案外その方も、もう高校で地元を出てそこからずっと地元に帰らず、地元とのつながりがなかったりするわけですよね。
そういう中で自分のお世話になったふるさととのつながりを回復させるみたいな、ある種もともと個人版ふるさと納税でも考えていた美しい世界があるわけですよ。要は本当に自分の故郷に今納めている税金の2割とか1割とかを寄附すること。多分それが、企業版ではまだポテンシャルがあるんだと思います。そういうある種の美しい制度として広がっていく可能性はあると思うので、そのような営業をビシバシやっていただいて、できれば寄附の規模でいうと100億円ぐらいまで集めていただけると、本当にホープの事業の柱になるなあと思っていますので、ぜひ引き続き頑張ってほしいです。

時津:ありがとうございます。100億ということは今の20倍ですね。やれそうですか?

松本:そうですね、やるしかないです。

時津:はい。以上になります。お付き合いいただきありがとうございました。企業版ふるさと納税事業、頑張ってまいります。

 

※企業版ふるさと納税支援事業についてはこちら「企業版ふるさと納税の総合窓口