貯蓄ゼロ世帯の正体と単身世帯の貯蓄額 - ゆとりずむ

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東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

貯蓄ゼロ世帯の正体と単身世帯の貯蓄額

こんにちは、らくからちゃです。

先日、こんな記事を書きました。

www.yutorism.jp

『標準的な家庭の貯蓄高ってどんな塩梅なんやろなー』と、調べてみた結果を割りとそのままベタッと貼り付けただけの内容でしたが、色んな人に読んで頂き、多くのコメントも頂けました。中でも、複数の方から『2人以上世帯のデータしか入っていない。独身者に人権は無いのか。』といった旨のご指摘いただきました。

独身者の貯蓄の実態・・・、なるほど・・・、

わたし、気になります!( ・`ω・´)

というわけで、また統計データをゴソゴソ漁ってみました。

平均的な貯蓄高について

まずは前回同様、ざっくり貯蓄高についてみておきましょう。

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(出典:単身世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果(H26))

平成26年(2014年)の単身世帯を対象とした調査結果となります。個人を対象とした調査ですので、男女別に結果が見れますね。この結果だけ見ていると、男性よりも女性のほうが貯蓄高が多い結果になってるのが興味深いですね。

グラフ内にも記載がありますが、貯蓄なしを含まない結果を対象としています。『貯蓄なし』の世帯は、近ごろセンセーショナルな取り上げられ方がされましたので、目にされたことのある方も多いかと思います。

貯蓄ゼロ世帯の定義

例えばこんな記事。

貯蓄が全くない世帯が30%を超えているというのは中々衝撃的な数値です。こうした記事の多くが金融広報中央委員会という日銀系の機関が行った調査結果を出典元としています。同調査結果によると、2016年段階で48%の世帯が金融資産なしとなるそうです。年次推移もあったので並べてみるとこんな感じ。

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(出典:時系列データ(平成19年から平成28年まで)より筆者作図)

でも考えてみると、半分近い家庭が持っていない『金融資産』って何なんでしょうね?

この種の調査って、何を対象に含めるのかによってかなり結果が変わります。「家計の金融資産に関する世論調査」では金融資産を

③ 預貯金については、定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用の為または将来に備えて蓄えている部分を「金融資産」とし、日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は除いてください。

(出典:家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査])

としています。預金残高のうち、手許に残しておく日常の生活費に使う部分は含まないようで、『金融資産はゼロ』と言っていても、必ずしも『預金残高ゼロ』というワケでもなさそうです。またネット調査で行ったそうですが、

  • 預金口座は持っていない:12%
  • 口座はあるが残高がない:18%

といった結果も出ています。一体、どんな層をターゲットにしたんだろう?その他の結果も眺めていますと、こんな数値も合わせて記載されていました。

貯蓄ゼロ世帯の割合

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本調査は『20歳から70歳までの単身世帯』が対象ですが、対象者のうち、フルタイムで働いている層は半数程度で、学生が7%、無職(年金生活者も含む?)が19%ほどが対象になているようです。ま、このあたりはあまり『金融資産』がなさそうですよね。

また『ネット調査』っていうのもちょっと引っかかるんですよね。調査は、委託を受けた日本調査リサーチセンターが無作為に抽出したひとを対象に行っているようですが、同社では謝礼提供をネタにアンケート調査回答者を募っています。それがどう結果に影響するのかはわかりませんが、『ランダムに選んだ日本国民』からは、何らかの偏りが生じるでしょう。

日本の単身世帯の定義づけは人それぞれかと思いますが、果たして皆さんの想像するものと、標本のバランスがあっているのか?については一考の価値があるような気がします。

独身世帯の年齢別の貯蓄高について

さて話を戻して、全国消費実態調査の結果から、独身世帯の年齢別の貯蓄高について見てみましょう。今回取り上げた全国消費実態調査では、貯蓄の定義は下記のとおりです。

○ 貯蓄現在高とは,郵便貯金銀行,郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧日本郵政公社),銀行・その他の金融機関への預貯金,生命保険・積立型損害保険の掛金,株式・債券・投資信託・金銭信託等の有価証券と社内預金等のその他の貯蓄の合計をいう。

(出典:貯蓄・負債の範囲)

お財布の中に入っている現金やタンス預金はカウントされない点は注意ですね。ネット銀行に慣れ親しんだひとたちには理解できないかもしれませんが、いまだにしこたまタンス銀行にあずけている人も結構いるもんですよ。

調査対象は、全国の対象者の中から無作為に選んだ人。一応謝礼も出るそうですが、最初から謝礼を狙って申し込むといった調査ではなさそうですな。また家計の金融資産調査では、いきなり『金融資産はある?YES/NO』という質問から入りNOの場合、それ以降の質問は発生しないというスタイルでした。一方、全国消費実態調査では預金や株式などの各項目について残高を質問するスタイルですので、全くゼロという結果は少ないように見受けられます。こういった調査って、質問票の様式も大事ですよね。

さて今回の調査結果では、男女・年齢別に下位25%・中央・上位25%を分ける境界値が記載されていたので表にしてみました。

ででん!

男性

  下位25% 中央値 上位25%
20代 50万円 120万円 300万円
30代 201万円 465万円 985万円
40代 175万円 530万円 1250万円
50代 278万円 613万円 1870万円
60代 100万円 350万円 1670万円

女性

  下位25% 中央値 上位25%
20代 25万円 100万円 185万円
30代 77万円 270万円 518万円
40代 283万円 800万円 1492万円
50代 300万円 809万円 1866万円
60代 227万円 874万円 1880万円

 

あとそれぞれ分布についても比率を整理したグラフも付けてみるとこんな感じ。

男性

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女性

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だいたいざっくり眺めてみると

  1. 男女ともに20代でも貯蓄が100万円未満という人は半分以下
  2. 男性は30代でも40代でも変わらず500万円程度を推移
  3. 女性は30代と40代で結構違う
  4. 男女ともに40代超えると1500万円以上も2割くらい居る

って感じかな。

家計に関するデータの読み方考え方

こうやってデータを見てみると『あれ、案外みんな余裕あるんじゃね?』って見えません?おもったよりは悪くないなーと。ただこれ、ひとつ注意しなきゃいけないのは、これって一人暮らしが出来る程度にはの生活力がある人たちのデータなんですよね。

いま、20歳から34歳未満に限っては、半数近いひとが親と同居している状況です。

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(出典:親と同居の未婚者の最近の状況)

特に、収入が少なかったり安定しない人や、相対的に所得の少ない地方部の若者に関しては、実家で親と同居しているケースも多いでしょう。彼らを単独の世帯として計算していった場合、また違った結果が出るかもしれません。

ただそのあたりが、家計に関するデータの読み方の難しいところで、収入のない専業主婦や学生まで個々人単位でカウントしていくのか?それとも世帯単位でまとめてみるのか?など、何が適切かはここのシチュエーションで使い分けなければなりません。

所得の平均値や中央値を考えるときも、専業主婦や学生を『所得ゼロ円』として計算に含めるのかどうかで、データの意味合いは随分と変わってきます。

お金に関する数字は、世の中に多種多様なものが溢れています。それをどう読み、どう考えるかは、『こういう切り口からデータを捉えたい!』というポリシーがしっかりしていないと、あれ?と思う解釈になり兼ねません。冒頭に挙げた『貯蓄なし世帯が30%超』という記事のタイトルもそうですよね。

もちろん私自身もいろいろと注意が必要だなあと反省しつつ、今日のところはこのあたりとさせていただこうと思います。

ではでは、今日はこのへんで。