宅配ドライバーにチップを渡す必要はある?~ZOZOTOWNの送料自由化を考える~ - ゆとりずむ

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東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

宅配ドライバーにチップを渡す必要はある?~ZOZOTOWNの送料自由化を考える~

こんにちは、らくからちゃです。

ZOZOTOWNが面白い取り組みを行っています。

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ZOZOTOWNの送料と言えば、かつて『トートバッグが安く買えたと思ったけど、送料込みだと結構高かった』とボヤいた客に、

詐欺??ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ。お前ん家まで汗水たらしてヤマトの宅配会社の人がわざわざ運んでくれてんだよ。お前みたいな感謝のない奴は二度と注文しなくていいわ。 “@sr_1125: 1050円なくせに送料手数料入れたら1750円とかまじ詐欺やろ〜 ゾゾタウン。”

 と社長がマジギレし炎上したことがありましたが、気づけばもう5年も前のことなんですね。

ZOZOTOWNの送料の変遷

その後、反省も含めて(?)送料は無料化されていましたが、2014年に

  1. 2,999円以上で無料
  2. それ未満では350円

となり、2016年には

  1. 4,999円以上で無料
  2. それ未満では399円

しれっと値上げしています。また2017年には、

  1. ZOZOプレミアム:月額350円で配送料・返品送料が無料
  2. ZOZOプラチナム:月額500円で配送料・返品送料・即日配送手数料無料

が廃止となりました。安い金額から、気軽に注文しづらい環境になりつつあるわけですが、送料が無料になる金額を変えれば、注文金額にはどんな影響があるのかな?と思い、過去の決算資料を漁ってみました。 

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(スタートトゥデイ社決算資料より筆者作図)

これを見る限り、余り大きな影響はありません。むしろ全体的に平均出荷額・商品単価が下落している点です。全体の売上は増えておりますが、より低い価格帯を望むマス層を中心にユーザー層が拡大している事実が理解できます。興味深いのは、プレミアムorプラチナムの効果もあるかもしれませんが、ZOZOTOWNのユーザーは、案外送料に無頓着なのかもしれません。

ZOZOTOWNの送料が業績に与える影響

それを追証するかのように、配送料や有料会員費は売上高の中の『その他』の区分にカテゴライズされるようですが、ここ1年間で同区分の売上高は3割ほど増加しています。

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あくまで『その他』ですので、配送料等以外の収入も含まれますが、結構な伸び率です。

一方、近年で人手不足からコスト増が懸念される配送料は、ここ1年間で4割りほど増加しています。しかしながら、対取扱高比で見れば、0.1ポイント分の増加にしか過ぎず、そこまで送料が収益を圧迫してはいない状況に見えます。

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さて今回の『送料自由化』において、同社の前澤社長はTwitterの中で、

 と、なんとも歯の浮くようなセリフを言っておりますが、果たしてこの収益の状況から見て、戦略的にはどのようなことが考えられるのか?ひとつのポイントが、送料の提示の仕方です。

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ご覧の通り、デフォルト値は¥400に設定されています。これは自由化前の¥4,999未満の際の送料と同じ。ZOZOTOWNユーザーは、低価格帯を注文するライト層が多く、送料には敏感だと思っていたものの、案外そうでも無いのだと仮定すると、いままで送料を取って配送していた層については『何も変わっていない』ように見えますし、送料を受け取っていなかった層からは『新たに送料を徴収する』ことが出来る仕組みです。

ZOZOTOWN側の戦略

配送コストが500円と仮定し、600円を支払って貰ったのなら、差額の100円分を『今後の物流サービス拡充のための軍資金として有効利用』するという主張だと思いますが、では500円分はどうなるのか?4,999円以上の注文については、今まで単純に持ち出していた分が利益となります

一方400円を受け取っていた注文から、0円と指定された場合はその分が損失となるわけですが、デフォルト値が400円なので、この層は何も気づかず注文する可能性も高い。今回の取り組みで、送料を0円とした注文は全体の4割程度だったそうですが、6割の顧客が『敢えて意図して0円としなかったのか?』については大いに疑問が残ります。

 穿った見方をしますと、まだ実験的段階であるとも言っていますし、送料に対する価格感度の高い顧客に対して送料無料キャンペーンを行いつつ、そうでない顧客に対してはしれっと送料を値上げする作戦のようにも見えます。

どんどんと報道が広がって行きますが『知らずに400円で注文した』『そんなつもりはなかった』『金返せ』って声が上がる頃を見計らって、元の価格体系に戻すつもりかもしれませんね。

宅配ドライバーにチップを渡す必要はある?

前澤社長は、

運ぶ人と受け取る人との間に、気持ちの交換が生まれれば素敵だな

 なんて言っていましたが、いち企業の販売戦略でしかなく、現状では『売る人』と『受け取る』人との間の、お金の交換でしか有りません。あえて気持ちの交換がしたいのであれば、受け取りの際に『いつもありがとうございます』と感謝の言葉を伝えるとか、そういう話じゃない?

日本では余りありませんが、海外ではホテルやレストラン、タクシードライバーへチップを渡すのは、ごく当たり前の行為であり、渡さないのはむしろ『非常識』とされる行為です。これは『よく働いてくれたお礼』という感情的な側面と『より良いサービスを受けるための追加費用』という経済的な側面があります。

個人の思いとしては、このチップという仕組みは、あまり好きではありません。

『マジメに働いたらチップ貰えるんだから、給料はその分安めでもいいよね』というのは、お客さんが少なかったときなど、自分の責任範囲以外の点でも収入が前後してしまいます。また『気持ちの交換』を強制されることになるのは、顧客としても余り気分は良くありません。

良く働くことが出来る環境を作るのも、より良いサービスを維持するのも、労働者ひとりひとりの責任ではなく、サービスを維持提供する事業者側の責任だと思うからです。評価の対象は『個人』ではなく『企業』であり、直接個人を評価するのは、継続的な成長には繋がらないんじゃないのかなあと思うんですね。

スーパーのレジ係を評価する仕組みは欲しい

とはいえ、顧客の評価がきちんと本人に届く仕組みを作ったほうが、全体の生産性の改善に繋がるんじゃないのかなあと思うときもあります。

個人的に思う、その筆頭はスーパーのレジ。

『スロウの呪文でもかかってんの?デスペル必要?』って思うくらいの速度で、ちんたらやっている店員も入れば、通常の3倍くらいの速度でこなしてくれるひともいるじゃないですか。ああいうのって、ちゃんと見て評価されているのかな、と。

最近、出張の際にUberを使って移動することが多いのですが、利用後に『点数』をつけることが出来る仕組みがあるんですね。あれ、スーパーのレジ係にも使えないかなあ。仕組みとしてはこんな感じ。

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  1. レシートにQRコードをつける
  2. それを専用アプリで読み込む
  3. 評価をしたら、ポイントが貰える

こんな感じで、評価を集めて、それを昇給や入れるシフトの数の判断に使っていけば、もうちょっとやる気を持って働いてくれるのかもしれません。無料で『店長へのお便り』に熱い想いを書いている人もいることを考えれば、1回10ポイントくらいでもつけてあげれば、みんな喜んで評価するでしょう。それで労働生産性が改善するのであれば、原資はそこから出すことも出来ます。

お客さんはレジの速度が改善し、お店は生産性が改善し、店員はお給料が改善する。なかなかグッドな感じがするのですが、

いかがでしょうかイオンリテール株式会社様!!

全てがバラ色に改善する物語は無理だとしても、『働いている人の頑張りに対して、どう報いていくのか?』については、社会全体で仕組みづくりを考えても良いかもしれません。

そのひとつは、チップかもしれませんし、あるいはアプリなどを通した評価、それとも『気持ちの交換』なんて話もあるのかもしれませんね(やりがい搾取臭がするけどね)。

ではでは、今日はこのへんで。