こんにちは、らくからちゃです。
そろそろ決算発表が集中する時期ですね。東芝が伸ばし過ぎたせいで、よく分からなくなってしまいましたが、前年度の本決算が発表されるシーズンです。東芝に関しては、もう決算が発表される前に、清算が発表されそうな気配すらありますが、さてどうなることやら。
そんなから風吹きすさぶ電機業界にて、多くの人から既に死んだものと思われていたあの会社から伝えられた『まだ生きとるで』のメッセージは、多くの人の胸を打ったのではないでしょうか?
でもこれ、改めて眺めてみると、それほど良い状態といえるのか?と言われれば、『ビミョー』な感じがするんですよね。
ソニーは15年2月、18年3月期に営業利益で5000億円以上とする計画を掲げたが、昨年4月の熊本地震でCMOSセンサーを生産する熊本工場(熊本県菊陽町)が被災。今年1月には映画事業で1000億円超の減損損失の計上を発表するなど逆風が吹いていた。
(中略)
会社側は21日、17年3月期の業績予想の上方修正を発表した。熊本地震の影響などで営業利益は2850億円と前の期比3%減るものの、金融事業などのコスト削減が奏功し、従来予想を450億円上回った。純利益は前の期比51%減の730億円と従来予想を470億円上回った。
17年3月期決算と18年3月期業績見通しの発表は28日を予定している。
対予想ベースでは持ちこたえましたが、 対前年比ではマイナス。最高益に迫る数値も、来年度に実施できるかな?といった感じの状況です。地震にも負けず頑張っているところは素晴らしいのですが、まだ実績として結果を出したワケではないので注意が必要です。
まあどこかの会社とは違い、きちんと期日通りに決算発表を行った点ついては、評価して然るべきなのではないかと思います。
せっかくきちんと提出して貰ったのですから、ざっと中を眺めてみましょう。
ソニーの事業構造
まずは2017年度通しでの損益から。
在庫や償却費が減らせたのは良いとして、トップラインからボトムラインまで、ずーっと前年比マイナスが続いております。こうなってしまった原因のひとつとして、2016年4月14日に起こった熊本地震の影響は小さくないようです。
損失額は、
- 物的損失:167億円
- 復旧費用:16億円
- 機会損失:342億円
直接の損失もさておき、工場が稼働できなかったことによる機会損失もまた、凄い額ではありますが、ソニー全体の売上規模から言えば、0.5%未満だったんですね(それもまた凄い)
さてこれだけ大きな会社ですから、企業グループ全体で見ても何だかよくわかりません。ソニーでは、以下の10セグメントに分けて財務報告を行っております。
- モバイルコミュニケーション
- ゲーム&ネットワークサービス
- イメージング・プロダクツ&ソリューション
- ホームエンタテイメント&サウンド
- 半導体
- コンポーネント
- 映画
- 音楽
- 金融
- その他
2016年度決算にて、特に目立つのはPS4の売上の増加&コスト削減に伴う、ゲーム&ネットワークサービス分野の469億円の営業益増加ですね。そんな儲かっとったんや( ゚д゚).さて、来期の見込みについても目を向けてみますと、こんな感じだそうです。
あれ、何か1個減りましたね? 居なくなってしまったのは、『コンポーネント』というセグメントです。これは、電池やメモリーカードなどの、消耗品的なものを作っていたセグメントなのですが、ここ最近ずーっと赤字続きで、『その他』扱いに格下げだそうです。なお余談ですが、Suicaなどに入っているFelicaに関しては、イメージング・プロダクツ&ソリューションになるそうです。
今期実績とくらべてみると、目立つのは
- 半導体
- 映画
で1,000億円を超える営業利益の増加を見込んでおります。映画に関しては、今期計上した減損がなくなるだけなので、そこまでインパクトはありませんが、半導体はすんげぇ改善することになっています。
要因として、子会社の売却や前年の資産圧縮効果を上げていますが、これはいけるのかなあ(´ε`;)ウーン…
しかしこうやってセグメント別に見てみると、今期も来期も、目立つのは金融分野での安定した収益性の高さですね。
金融事業の内訳
ソニーは、来期営業利益目標の5000億円のうち、1700億円と3割以上を金融事業で稼ぐ予定です。マイナスになる『その他』を抜いて円グラフにしてみてもこんな感じ。
いやあ、その存在感のデカさが見て取れますね。で、遅くなりましたが今日の本題です。ソニーの金融事業って一体なんなの?(´・ω・`)。引っ張るのもアレなので、先に答えを書いちゃいましょう。
生命保険です。
同社は傘下に、出資比率62%で、ソニーフィナンシャルホールディングスという上場金融子会社を持っています。上場企業ですので、皆様も『ソニー本体を買うより、こっちを買ったほうが良くね?』と思えば、自由にお買い求め頂くことが可能です。
同社は更に、
- ソニー生命
- ソニー損保
- ソニー銀行
を、それぞれ出資比率100%で保有しております。
これらの企業の上げる収益が、ソニーグループの金融事業の収益ということが出来るわけですが、どんな塩梅で稼いで居るのかな?と思って見てみると
もう圧倒的に生命保険。
これからは、ソニーの金融事業が好調ではなく、ソニー生命が好調、と言いなおさにゃなあと思うくらい良く稼いでらっしゃいます。わたし、あんまり生保業界に詳しいわけではないのですが、業界順位も11位と悪くない。門外漢からすれば、『片手間くらいにやってるのかねー』と思っていたのでこりゃびっくり。
1位 | 日本生命 | 6兆0809億円 |
---|---|---|
2位 | かんぽ生命 | 5兆4138億円 |
3位 | 明治安田生命 | 3兆3578億円 |
4位 | 住友生命 | 3兆0220億円 |
5位 | 第一生命 | 2兆8666億円 |
6位 | 第一フロンティア生命 | 1兆8730億円 |
7位 | メットライフ生命 | 1兆6313億円 |
8位 | アフラック(アメリカンファミリー生命保険) | 1兆5333億円 |
9位 | 三井住友海上プライマリー生命 | 1兆3001億円 |
10位 | ジブラルタ生命 | 1兆2348億円 |
11位 | ソニー生命 | 1兆0280億円 |
12位 | マニュライフ生命 | 1兆0171億円 |
13位 | 東京海上日動あんしん生命 | 8194億円 |
14位 | プルデンシャル生命 | 7936億円 |
15位 | 大同生命 | 7489億円 |
16位 | 太陽生命 | 6571億円 |
17位 | 富国生命 | 6180億円 |
18位 | アクサ生命 | 6044億円 |
19位 | マスミューチュアル生命 | 5644億円 |
20位 | プルデンシャルジブラルタファイナンシャル生命保険(旧大和生命) | 5604億円 |
(最新版!2016年 生命保険業界 売上高(保険料等収入)ランキング!: 激安!元家電量販店員が語る業界裏事情! を元に筆者作表)
で順位自体もなかなか凄いなあと思うのですが、その上に居並ぶ皆さんは、どこも生保本業の会社が並ぶんですよね。そもそもソニーがなぜ保険を始めたのか。歴史を紐解いていっても、なかなか興味深いメッセージが出てきます。
1981年4月1日。ソニー・プルデンシャル生命(現ソニー生命)の開業式、ソニー創業者の盛田昭夫は、社員を前にこう語った。
『日本には非常に歴史の長い保険会社がたくさんあります。そういった会社の「社風」をそのまま持ってきて「保険会社というのはこういうものだ!」と、いうようになっては、私の希望はつぶれてしまいます。我々としては、やはりここに新しい、本当に日本に今までなかったような保険会社を創りあげたい、また、創ってほしいというのが私のお願いであります』「ひとのやらないことに挑戦し、社会に貢献する」という盛田昭夫の熱い思いがそこにありました。
当時、生命保険の世帯加入率は9割を超えていましたが、画一的なセット商品販売が主流でした。生命保険は家庭経済の保障と安定を担う大切な商品。そんな生命保険のあるべき姿とは——?
創業に携わったプロジェクトメンバーは、「世界中どこにもない理想的な保険会社をつくる」ことに情熱を燃やしました。一人ひとりのお客さまの人生が異なるように、保障に対するニーズも十人十色。それを的確に把握し、解決手段を提示するためには、崇高な理念と強い信念、豊富な知識と経験が必要なはず。こうして誕生したのが「ライフプランナー制度」です。
「合理的な生命保険と質の高いサービスを提供することによって、顧客の経済的保障と安定を図る」を基本使命に掲げ、ソニー生命は業界に新風を巻き起こすべく誕生しました。
その思いは30余年の月日を経て現実のものとなり、2012年度には総資産が6兆円を超え、業績においても大手生命保険会社と肩を並べるほどに成長しました。
創業者の熱い思いは、現在も受け継がれているのです。
まあ別に、ソニー生命を持ち上げるつもりはサラサラないのですが、創業者の思いのこもった事業であり、傍流の副業みたいに捉えられているのを見ると、ちょっとかわいそうな気もしますよね。
これまでやってこれたのも、技術的にかなり高度な知識を駆使してきたというよりも、お客さんが本当にほしい物を提供するといった泥臭いところが功を奏したのかもしれません。それでも、グループ全体の人員比率で見れば、7.5%ほど。この人数で、グループ営業利益の3割近くを稼いでいるのですから、中の人は胸を張っても良いでしょう。
金融事業の今後
ここ最近は、金融事業も色んな他業種からの参入の大きな分野となってきました。その一方で、GEが金融事業から撤退するといった例も出ています。
GEの場合、PLベースでもBSベースでも、金融事業の比率が大きくなりすぎて、本業への影響が大きくなりすぎてしまったため、タイミングを見計らって本業への回帰を目指したというところが本音でしょう。
(出典:ゼネラル・エレクトリックの収益性低下と金融事業縮小の判断)
ただソニーの場合、安定した収益の期待できる生保での収益がほとんどですから、浮き沈みの激しい電機業界の中で、安定した利益の源泉とすべく、よほどのことが無い限り手放すこともないでしょう。
むしろ注意して見なければならないのは、60%超を出資するものの完全子会社というわけでもなく、ある程度距離のある関係であるということは意識する必要があると思います。損益通算が可能な、連結納税の対象ではないわけですし、保険業という性質上、キャッシュも簡単に融通出来る関係ではないでしょう。グループ経営全体を通して見ても、純粋投資対象として見たほうが健全です。
これらの状況を勘案すると、正直ソニー本体側の事業ポートフォリオの中で、成長が見込める領域って何なんでしょうね?東芝のように大怪我はしていませんが、10年後のビジネスを支えられるような柱は?と言われれば、なんだろうなあというのが現状のように思えてしまいます。
ソニー生命からの延命装置が稼働している間に、新たな何かをみつけるべき時期なのかもしれませんね。
ではでは、今日はこのへんで。