『復活当選』よりモヤっとする『名簿優遇当選』 - ゆとりずむ

ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

『復活当選』よりモヤっとする『名簿優遇当選』

こんにちは、らくからちゃです。

選挙が終わってから最初の週が終わりますが、まだまだ何かが変わるのか、それとも何も変わらないのか、それすら良く分からない状況ですね。皆様、日本をよくするために、がんばって頂きたいもんです。

衆院選が終わった後、各候補の勝敗分析などがはじまると、良く話題になるのが『比例復活当選って何かモヤっとする』って話。『あいつは絶対当選させるまい!!』という負のエネルギーで動いているひとにとっては、ものすごーくがっかりさせる仕組みです。

ところで皆さん知ってました?比例復活って小選挙区で最低10%は取らないと権利が行使できないんですって。

 また比例東海ブロックで、立憲民主党がせっかく勝ち得た議席を自民党に譲り渡すという珍事も起きましたが、これも予想以上に『復活当選』が多かったことに起因します。

さて今回の選挙、どんな風に票は動いたのでしょうか?色んなデータがあるので、個人的に調べた結果を整理してみます。

比例復活当選の仕組み

まずは一部で大変評判のよろしくない『比例復活当選』の仕組みについて確認しておきましょう。いい加減にまとめるとこんな感じですね。

f:id:lacucaracha:20171027004530p:plain

衆議院は、選挙区の中から1人を決める小選挙区と、政党別の得票率に応じて議席が割り当てられる比例区があり、その両方に重複立候補することが認められています。

例えばこの比例区では、2議席が割り当てられたものと考える。

まずは、各政党が事前に決めた候補者の順位(名簿順)で候補を並び替えます。複数のひとを同じ順位に指名することが可能ですが、同順位の場合は重複立候補している各小選挙区での惜敗率(最多得票者数との得票数比)で更に並び替えて順位を決めます。比例代表の議席は、この順位にそって割り振られます。

例のケースについて考えてみましょう。

□田◯子氏は小選挙区で当選を決めていますので、比例区の議席配分からは一度除外します。そうすると、まず名簿順位1位の□本◯太氏に議席を割り当てられ、次に惜敗率が最多の□山◯助氏に割り当てられます。□川◯郎氏と□木◯菜氏は、残念ながら落選です。

政党に対して投票する『比例代表』では、

  1. 死票(落選者への票)が少ない
  2. 当落線に届かない少数派の意見が反映されやすくなる

などのメリットがあります。しかし、その党の中の誰を議員として国会に送り込むんだ?という問題が生じます。

現在の参議院では、投票時に書かれた名前で順位を決める非拘束目簿方式を取っていますが、全国的に知名度の高いタレントや票を集めやすい業界関係者が上位になりやすい仕組みです。

一方の衆議院では、党内で決定する方法に加え小選挙区での『惜しかった順』を反映することで民意を反映するという方法になっていますが、『やっと落選させたアイツ』が復活する仕組みが高い仕組みでもあります。

2017年衆院選の復活当選者数

さておさらいも済んだところで、2017年衆院選の結果を振り返ってみましょう。

党名 小選挙区 復活当選 名簿優遇 補欠組
自民 218 44 11 11
公明 8 0 21 0
希望 18 29 3 0
維新 3 8 2 0
立憲 18 25 2 8
共産 1 4 7 0
社民 1 1 0 0
無所属 22 0 0 0
合計 289 111 46 19

 小選挙区289人に対して、復活当選で議席を得たのは111人でした。思った以上に多い気がしますね(;´Д`)政党別でみると最多は自民党の44議席です。自民党の地域別の結果を見てみるとこんな感じ。

  小選挙区 復活当選 落選
北海道 6 1 4
東北 18 4 1
北関東 26 3 0
南関東 24 6 0
東京 19 4 0
北信越 12 4 3
近畿 30 8 0
東海 19 8 3
中国 15 1 0
四国 8 1 2
九州 22 4 2
合計 199 44 15

まず重複立候補者の199人、全体の77%が小選挙区で勝利。44人の17%が復活当選。重複立候補者で落選したのはたった15人で6%ほどでした。ブロック別で見ても、北関東・南関東・近畿・中国では落選者はゼロという圧倒的な状況です。

特に今回は、小選挙区の勝率が良かったこともあり、ほとんど『自民党の公認を得て出馬する=議員になれる』状態でした。そりゃ執行部の権力も強くなるわけだ。

でも個人的に気になるのは、復活当選したひとたちよりももっと別の人たちなんですよね。

気になる『名簿優遇組』

衆議院選挙の仕組みをもう一度振り返ってみますと、名簿順位が同順位の場合は、小選挙区での惜敗率で順位が決まります。小選挙区での勝敗が結果に影響するやりかたですが、(比例配分があれば)最初から名簿順位が上位のひとは惜敗率に関係なく当選します。

名簿順位の付け方を分析すると各党それぞれの考え方や政策が見て取れます。

www.yutorism.jp

自民党は、選挙区統廃合で不利になったひとを対象としています。公明党・共産党は党内の序列で決まるみたい。維新の党は、直近の選挙で善戦した若者。立憲民主党は、そもそも名簿順位で優遇したりといったことをしない。

各党それなりに、外部の人間からみても『なるほどね』と思えるところはあったのですが、希望の党については意味がよく分からなかったんですよね。

希望の党から、名簿順位で優遇されていたのは以下の3名。

  1. 寺田学(東北ブロック)
  2. 樽床伸二(近畿ブロック)
  3. 中山斉彬(九州ブロック)

全員、今回の選挙では小選挙区には立候補しておらず、各ブロックの名簿順位第一位となっています。党首の舌禍で苦戦を強いられた同党ですが、それでも各ブロックから1人は比例候補を送り出す程度の票は集められたため3人とも当選しています。

わたしのような政治音痴でも、一度くらいは名前を聞いたことのある人たちですが、改めてプロフィールを確認してみましょう。

寺田学(東北)

秋田県知事の息子さん。地元は秋田1区で2003/2005/2009年に小選挙区当選。2012年は落選、2014年は比例復活当選。

今回、地元秋田1区は参院選秋田ブロック2007年当選、2013年落選後、2016年には政界引退も宣言していた松浦大悟氏が出馬するため、それに譲った形のようにも見えますけど、比例1位は美味しいですよね。

ちなみに、松浦氏は今回落選しています。

樽床伸二(近畿)

一時期、民主党代表候補にもなったのでご存知の方も多いはず。地元は大阪12区で、1996/2000/2003年と当選。2005年落選、2009年は当選するも、その後の議席はなし。

今回、地元大阪12区は維新の会新人の藤田文武氏が出馬するも落選。

Wikipedia曰く『小池氏の長年の政界の盟友であることから比例第一位に指名された』なんて書かれ方してましたけど、どうなんでしょう?

中山斉彬(九州)

奥さんは『日本のこころ』元代表の中山恭子。本人も、『たちあがれ日本』や『維新の会』に所属するなど、なんというかそっち系のお方。宮崎1区より、1996/2000/2003/2005年に当選。2009年落選後、2012年は維新の会にて比例復活当選。

今回、地元宮崎1区には何度か衆院選で争った元維新の外山斎氏が希望の党として出馬するも落選。

まー、ご本人のことは良く存じ上げておりませし、わたし如きが評価を出来るわけないのですが、少なくとも戦績を見る限りここしばらくはかなり苦戦してきた人たちです。で、比例代表ですので、彼らの当選と引き換えに落選した人たちが居ます。

  1. 村岡俊英(東北)
  2. 馬淵澄夫(近畿)
  3. 野間健(九州)

あと一歩得票が足りず、復活当選を逃したひとたちです。そういや、馬淵さんも今回落選されちゃいましたね。

mainichi.jp

 終わったことをとやかく言っても何も始まりませんが、今回、名簿上位で当選した3名には、少なくとも彼らよりは良い働きをしてもらわないと困りますね。

『希望の党』とは何だったのか?

今回の選挙を個人的に振り返ってみると、小池氏の主張した『右でもなく左でも無い』を、枝野氏の主張した立憲民主主義、言い換えれば『右でもあり左でもある』が打ち破った戦いだったように思えます。

小池氏の主張は、『安倍』でも『蓮舫・前原』を否定し『小池』を支持せよと主張したように感じました。一方で枝野氏の主張は、特定の個人でも個別の政策でもなく、政党としての基本スタンスへの支持を求めた。

途中小池氏が『排除』という言葉を使(わされ)い非難される展開がありました。たしかに公党として政策支持出来ない人を公認するわけにはいかない。問題はその判断をどう行うのかでしょう。『右でも左でもない』という否定形の主張からは『じゃあ何なのか?』が良く見えて来ない。

公明党や共産党などは、過去の党内の議論を経た上で決まった名簿順位なのかなあと思います。しかし党内の合意形成が取れるとは思えない短い期間において、特定候補の名簿優遇を行った希望の党と行わなかった立憲民主党。そこにもなにか、両党の性格の違いが出ているんじゃないのかな、なんて思う次第です。

 

今回の選挙結果について、疑問や不満を持っている人は多いかとおもいますが、まずは国民のためにがんばってくださることを期待したいもんです。

ではでは、今日はこの辺で