坂本壮「救急の世界」
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脳卒中はどう判断?…救急車を呼ぶべき三つの症状は
救急隊から以下のような受け入れ要請の電話が、救急外来へよくかかってきます。
「○○救急です。68歳男性、”脳卒中”疑いの患者さんです」
今回は脳卒中について解説します。脳卒中も発症後、速やかな対応が必要です。1分遅れると……までは言い過ぎ、いや言い過ぎではないのです。
脳卒中は3分類
脳卒中は国内の死因の第4位(2021年) (1) 。マヒなど後遺症の影響で寝たきりになってしまうこともあり、日常生活が大きく障害されうる病気です。
脳卒中は、大きく脳梗塞(こうそく)、脳出血、くも膜下出血に分類されます。その中で最も頻度が高いのが脳梗塞(74.0%)であり、脳出血(19.5%)、くも膜下出血(6.5%)と続きます。くも膜下出血は女性に多い(67.2%)ですが、脳梗塞、脳出血は男性に多いのが国内の特徴です(それぞれ60.3%、57.5%) (2) 。
救急車で受診する割合は、脳出血が82.4%、くも膜下出血が85.6%と高いのに対して、脳梗塞は52.9%と半数程度です (2) 。
なんでもかんでも救急車を要請してしまうのはNGですが、脳卒中が疑われる場合には救急車での搬送が望ましいでしょう。自分で運転などをして病院へ向かうのは危険ですし、脳卒中であれば対応可能な病院を受診する必要があり、病院を自分で探すのは大変です。プロである救急隊に頼るのが一番です。
「FAST」が大事
脳卒中を自覚するためには、脳卒中によって引き起こされる症状を把握しておく必要があります。まれなものも含めると多くの症状がありますが、代表的なものは、〈1〉顔面のマヒ〈2〉上肢や下肢の筋力低下〈3〉構音障害(ろれつが回らない)――です。
これらのうち、どれかが急に認められた場合には脳卒中を疑いましょう。三つのうち一つでも認められる場合には約70%の確率で脳卒中です。手足の感覚がおかしい、頭痛、めまい、視覚症状が出ることもありますが、頻度が高い脳梗塞の場合、〈1〉~〈3〉を理解しておくことが重要です (3) 。
覚えるべき3点にTime(発症時刻)を加え、表のようにFASTの語呂で覚えるとよいでしょう (4) 。
救急隊も主にこの3点を意識し、脳卒中か否かを現場で、短時間で見定めています。特に、これらいずれかの症状が急性発症し、血圧なども普段と比べて明らかに高い場合は、「脳卒中らしい」と判断します。
「公益財団法人 循環器病研究振興財団 知っておきたい循環器病あれこれ 156 脳卒中・心筋梗塞の前触れと早期対策」に掲載されているポスター。表はポスターを参考に筆者が作成
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