子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
おなかのトラブル(8)下痢、血便…子どもの潰瘍性大腸炎 急激に進行し大腸全体に
このシリーズでは、大阪母子医療センターの恵谷ゆり消化器・内分泌科主任部長に聞きます。(聞き手・石川千佳)
私たちの腸の粘膜にはたくさんの免疫細胞がいて、体内に入ってきたウイルスや病原菌などが悪い影響を与えないように守ってくれています。
しかし、何らかの原因で免疫のシステムが異常をきたして腸に慢性の炎症が起きることがあります。これを「炎症性腸疾患」といいます。代表的な病気が潰瘍性大腸炎とクローン病で、大人でも子どもでも患者は増えてきています。6歳未満で発症する超早期発症型炎症性腸疾患もあります。
潰瘍性大腸炎はその名の通り、大腸を中心に炎症が起きる病気で、直腸から上の方に向かって連続的に大腸の粘膜がただれたり潰瘍ができたりした結果、腹痛や下痢、血便を認めるようになります。子どもの場合は、急激に病気が進行して大腸全体に炎症が広がる傾向があります。
一方、クローン病は、病変が口から肛門までのさまざまな消化管に所々に離れてできるのが特徴です。病気が進行すると下痢や血便を認めるようになりますが、腹痛だけが続く、身長が伸びない、体重が減るといった症状がきっかけで診断されることもあります。
炎症性腸疾患の診断には内視鏡検査が必要で、当センターでは子どもが不安にならないようさまざまな配慮をしています。今のところ病気の原因を完全に取り除くことはできませんが、症状を落ち着いた状態にするための治療法は非常に進歩して、選択肢が増えています。こうした治療を長く続けていくためには、子どもや保護者のサポートが重要です。
【略歴】
恵谷ゆり(えたに・ゆり) 日本小児科学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医。大阪市立大卒。大阪府立急性期・総合医療センター(現大阪急性期・総合医療センター)小児科、大阪母子医療センター消化器・内分泌科に勤務し、2017年から現職。
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