中川恵一「がんの話をしよう」
医療・健康・介護のコラム
「病院嫌い」の養老孟司先生が入院したわけ
体重が15キロ減 最初はがんを疑ったが
解剖学者・養老孟司先生は昨年6月、東大病院で私が診察し、緊急入院しました。病名はかなりレアな無痛性の心筋梗塞(こうそく)で、養老先生は東大病院に2週間入院されました。
体重が15キロも減って来院されましたので、最初はがんを疑いました。がん細胞は、エネルギー代謝の効率が悪いため、増殖には大量のブドウ糖が必要です。このため、がんが進行すると患者は痩せることになります。
幸い、がんの疑いは晴れましたが、この大病のてんまつを、患者と医師それぞれの立場から二人でまとめたのが、「養老先生、病院へ行く」(エクスナレッジ)です。この本については、前回も触れましたが、発売直後から増刷を繰り返すなど、大きな反響を読んでいるようです。
本書が話題になっている理由の一つは、「病院嫌い」の養老先生が病院に行ったことでしょう。自著でも病院嫌いを表明していますが、「養老先生、病院に行く」は先生のファンにとっては一つの「事件」と言えるでしょう。
病院に行くと、服薬や生活習慣の指導などで、医者から多かれ少なかれ「管理」されるようになります。それを先生は「野良猫が家猫に変化させられる」と表現しています。本書では野良猫と家猫の間で揺れ動く養老先生の葛藤を読むことができます。
話題になったもう一つの理由は、養老ファンなら誰でも知っている愛猫、まるの死について書かれていることでしょう。まるの死は、NHKの番組「まいにち養老先生、ときどきまる」で取り上げられたことから、日本中の多くの人が知ることになりましたが、本書でも、まるの闘病から亡くなるまでの養老先生の胸の内が語られています。
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