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傾斜地にある太陽光発電施設が豪雨などで崩落する事故が相次いでいる。自治体が条例で独自に立地規制する動きが広がる中、環境省は法令で土砂災害の危険性のある場所での新設を抑制する方向で検討に入った。(山下真範)
新幹線ストップ
「あんな危険な場所に太陽光パネルがあるとは、事故が起きるまで知らなかった」。神戸市の担当者はこう振り返る。
同市須磨区では2018年7月の西日本豪雨による土砂崩れで、太陽光パネルが山陽新幹線の線路近くまで落下した。人的被害はなかったが、新幹線が一時運休するなどの影響が出た。
施設は線路からわずか10メートルほどの斜面にあったが、市は事故まで施設の存在を把握していなかった。事業者は経済産業省から事業計画の認定を受ける必要があるが、立地自治体への報告や届け出は不要とされているためだ。
事態を重く見た市は19年7月、太陽光発電施設の立地を規制する条例を施行した。出力10キロ・ワット以上の施設を新設する場合は市への届け出を義務づけ、土砂災害警戒区域などは禁止区域とし、勾配が30度以上の急傾斜地や住宅地、鉄道用地から50メートル以内などは許可制とした。
事業者には排水設備の整備といった安全対策や、パネルの撤去費用の積み立てを求めている。市の担当者は「全国的にも厳しい規制で、新設を断念する事業者もいるが、事故を繰り返さないためにはやむをえない内容だ」と話す。
自治体1割に設置抑制条例
住宅の屋根置きなどを除いた全国の太陽光発電施設数は、3月末時点で過去最多となる約66万5000か所に上る。増加に伴い、パネルが落下する事故が各地で相次いでいる。
西日本豪雨では19か所の太陽光発電施設でパネルなどが損傷し、うち11か所は土砂崩れが原因だった。経産省によると、太陽光パネルが飛散、落下するなどした事故は19年度に135件起きている。
自治体が条例で規制する動きも広がっている。
土砂災害警戒区域内に約30の施設があると推計される山梨県では10月、県土の8割を占める森林や地滑りの恐れがある傾斜地などでの新設を許可制にする条例を施行する。経産省によると、太陽光など再生可能エネルギー施設の設置を抑制する条例数は16年度に26件だったが、20年度には134件と5倍に増え、全国の自治体の1割近くを占めている。
法令で新設抑制
環境省も急な傾斜地などでの新設を法令で抑制する検討に入った。きっかけは7月に静岡県熱海市で起きた大規模な土石流災害。土石流との因果関係は確認されていないが、崩落現場近くに太陽光パネルが設置されていたことで、傾斜地での安全対策に注目が集まった。