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書店が1軒もなかった立山町で4月に書店併設型のコンビニ店「LAWSONマチの本屋さん」がオープンして半年が過ぎた。待望の書店の誕生で、町はどのように変化したのだろうか――。同町を訪問し、町民らに話を聞いた。(松本彩和)
■充実度に驚き
15日正午頃。店には昼食を買い求める客が続々と集まり始めていた。人の流れを見ると、ことのほか書籍コーナー(約60平方メートル)に立ち寄る人が多い。売れ筋の漫画や雑誌だけでなく、町や富山にちなむ小説などをそろえた「たてやまの本棚」もあり、その充実度に驚く人もいた。
祖母と訪れた町内の女性(21)は「本もご飯も一緒に買うことができるので便利。これまで本を買うときは富山市まで行っていたけれど、ふらりと立ち寄る場所ができてうれしい」と笑顔だ。
町内では2015年に最後の書店が閉店した。子どもから高齢者まで幅広い世代から「本屋さんがほしい」との声が寄せられた町は書店の誘致を開始。その求めに応じたコンビニ大手「ローソン」(東京)が書店併設型店舗の設置を提案した。店舗は役場敷地内に位置し、町が所有する形だ。
■児童書扱い1.5倍に
「開店時に比べ、児童書のコーナーを増やしました」。そう話すのは、ローソンで書店併設型店舗を担当する伊藤武士さんだ。いざ開店すると、お年寄りや父母が子どものために絵本を買ったり、休日に親子連れが一緒に本を選んだりする光景がよくみられたという。そこで、児童書コーナーの書棚を二つから三つに増やし、取り扱う本も当初の1・5倍の約360種類にした。
シニア世代にはテレビのガイド本や老後の資産管理に関する書籍が人気だ。店によると、雑誌の定期購読申し込みや店頭にない書籍の取り寄せも毎月、一定数寄せられているという。
伊藤さんは「たくさんの本の中から実際に手にとって吟味する体験は、ネット注文ではできない。これからも幅広い本をそろえたい」と意気込む。
■図書館も蔵書購入
さらに町もこの書店を通じ、図書館の蔵書を購入するようになった。それまでは、町外の書店が図書館に書籍を持ち込み、購入する本を選んでいた。ただ、書店側の人手不足で回数も減っていた。地元の書店が誕生したことで、蔵書の充実にもつながりそうだ。
町が書店を誘致するという取り組みは実を結び、町役場には書店がない自治体からの問い合わせも相次ぎ、先進事例として注目も集まる。
誘致に尽力した町企画政策課の中川大輔課長補佐は幼い頃、町中心部にあった3か所の書店を巡って実際に本を手に取り、心のおもむくままに本を選ぶことが楽しかったという。中川さんは「町民の皆さんも、本屋さんで思いがけない本と出会えていると思う。町の中心部に子どもや親世代、お年寄りまで色んな人が集まり、にぎわいが生まれてほしい」と話していた。