「柏の葉イノベーションフェス2023」イベントレポート トークセッション「共同体感覚とクリエイティビティ」とは【前編】 | 読売広告社 YOMIKO ADVERTISING INC.

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「柏の葉イノベーションフェス2023」イベントレポート トークセッション「共同体感覚とクリエイティビティ」とは【前編】

2024.02.16

公民学で連携し未来の課題解決型の街づくりを推進している柏の葉スマートシティにおいて、未来の都市とイノベーションを探るオンラインセッションとリアル体験イベント「柏の葉イノベーションフェス2023」が昨年10月25日(水)から29日(日)に開催されました。

YOMIKOは本イベントの実行委員会として携わっており、28日(土)には、柏の葉の街づくりに携わった様々なプレイヤーによるトークセッションが行われ、当社のクリエイティブスタッフも登壇しました。

スピーカーは、三井不動産で柏の葉の街づくり推進を担当されている奥野雅也氏、過去に当社と柏の葉の物件プロモーション用のアニメーション動画を制作した際に監督を務められたYAMATOWORKS代表 アニメーション監督の森田修平氏、柏の葉のアートプロジェクトで様々な取り組みを推進されてきた柏の葉アーバンデザインセンター(以下UDCK)アート&コミュニケーション ディレクターの小山田裕彦氏、柏の葉の各種クリエイティブ制作を担当している当社 統合クリエイティブセンターの戸川の4名で、今回のイベント実行委員を担当している当社 統合クリエイティブセンターの大屋が進行役を務めました。

当日は、今年のテーマ「CONNECT TO THE UNLIMITED.」をヒントに「共同体感覚とクリエイティビティ」をテーマに、これまで柏の葉スマートシティを舞台に展開されてきた、アート、映像、広告、スポーツ、イベントなど、都市とクリエイティビティの関係を紐解くことで柏の葉スマートシティの“これまで”と“これから”を熱く語り合いました。

■ アートによってつながる都市生活者、その仕組み作りとは

まず初めに、柏の葉アーバンデザインセンター(以下UDCK)という組織が16年にわたり、アートプロジェクトを通じて共同体感覚の醸成に向けて取り組んできたアクションについて、その推進役である小山田裕彦氏が紹介しました。
プロジェクトの考え方の説明後、「PICNIC EXPO」「ピノキオプロジェクト」「未来こどもがっこう」などの柏の葉の街を舞台に住民を巻き込んで取り組まれてきたプログラム事例が紹介され、その後、トークセッションに入りました。

(写真左)「ピノキオプロジェクト」(写真右)「ピクニックエキスポ」の様子

大屋:このブロックでは、「アートによってつながる都市生活者」について、様々な関係者が協力し一緒にまちをつくることで生まれていく共同体感覚や、コミュニティとクリエイティビティの関係についてディスカッションしていきたいと思いますが、小山田さん、ご紹介いただいたアートプロジェクトの目的や企画のポイントについてご説明いただけますでしょうか?

小山田:そもそもこのアートプロジェクトの目指すものとしてUDCK創立者の方がおっしゃっていた「アート、デザイン、テクノロジーで未来のまちをつくりたい」という思いがありました。僕らのミッションは、「ヒューマンウェアの醸成」、つまり人が育って人の心が育つようなプログラムをできるだけ多く継続的に実施することで個性が発揮できるまちづくりを行なうことでした。

柏の葉に集まる住民同士もしくは様々な企業や団体を尊重しつつ、その価値の交流ができる点や、アート、デザイン、テクノロジーでイノベーションに繋がりそうな何か変わったことがこの街で起きそうな期待感を発信する点を踏まえた仕掛けづくりを、UDCKを拠点として継続的に行なってきました。

僕らは、アートとイノベーションの概念を、アート=未来への問い、新概念を提示して、デザインとテクノロジーが誰にでもわかりやすいものにしていくことでイノベーションが創造される、という風に解釈しており、この仕掛け作りにもこだわってきました。

大屋:なるほど。アートというものが、まちに対して問いを作って、それに対する答えを出していくという考え方は非常に興味深いですし、それを16年前から行われているということが大変刺激になりました。奥野さん、小山田さんのアートプロジェクトに関してご意見いただけますでしょうか?

奥野:柏の葉は当初からまちの特性上、チャレンジ志向がありましたので、その一つとしてアートっていうフレーズがずっと脈々と続いていったのかなと思います。アートって正解がないとか、自由にいろんな面白がり方ができるっていうところが素晴らしいと思いますし、住民、ワーカーの皆さんもいろんな面白がり方を本当にしていただいているなと実感します。

このようなチャレンジが実現している要因としてUDCKの存在が大きいと考えています。 産学連携の重要性は様々な行政自治体でも叫ばれていますが、柏の葉では公民学連携というキーワードの下、UDCKが緩やかに関係者の皆さんとつながっている仕組みがあることが、柏の葉で様々な成功事例が生まれている大きな要因だと思います。

大屋:ありがとうございます。森田監督、小山田さんが説明されたまちにおけるアートと、監督が携わられているアニメーションの共通点とか違いとかご意見いただけますでしょうか?

森田:アニメーション業界の場合は、作り手にとってソフトウェアの進化っていうのがあって、インターネットを通じて手軽に見られるようになったのは良いことではあるものの、一方で以前はDVDの販売開始時にイベントがあって、実は結構それで作り手とお客さんがつながっていましたが、昨今はその距離が結構遠ざかっている印象があります。先ほど小山田さんからお話のあったヒューマンウェアのような考え方がアニメーション業界にもどんどん取り入れられていくと良いなと思いました。

■ テクノロジーで新しくつながりはじめる都市生活者

次のブロックでは、まず柏の葉スマートシティの最新の取り組み事例ということで進行役の大屋が今回の「柏の葉イノベーションフェス2023」で行われた様々なプログラムを紹介しました。

ビジネスアイデアコンテストや人間拡張技術を活用したスポーツ体験プログラムなどに加え、今回、AR技術を活用した街まるごと音声AR体験プログラム「TALKING CITY」を新たに開発。街中80カ所以上に設置した音声ARスポットでスマートフォンをかざすと、柏の葉に関わる人々が声優に挑戦したAR上のキャラクターがまちの魅力やヒミツを紹介する体験コンテンツで、イベント当日は柏の葉の様々な場所で多くの来場者が実体験していました。

◆KASHIWANOHA SMARTCITY -TALKING CITY-の紹介映像

大屋:このブロックでは、今回のAR施策のような技術への投資や、過去にはほとんど無かったオンラインミーティングで皆が繋がっていくような新しいビジネスなど、人との新しいつながり方の事例について話していければと思います。まず、奥野さんにお伺いしたいと思いますが、一緒に今回のイベント企画を担当されている立場として、今回のような取り組みや住民とのつながり方ということが、どのような価値があるのかお話しいただければと思います。

奥野:今回のAR施策で申しますと、まちに関わる様々な皆さんの声を収録させていただく中で、収録の合間のお話なんかでもやはりまちのことをすごくポジティブに話していただく方が多いですし、そういうところからも、柏の葉ってすごいいい街だなっていうことを改めて我々としても実感したというところもあります。

あとは技術っていう観点でいきますと今回ARっていう技術で企画をしていますけれども、やっぱり柏の葉って新しくチャレンジをし続けている街であるっていうところもあって技術の受容性みたいなものがすごく高いのではないかなというふうに思っています。

大屋:ありがとうございます。小山田さん、今回の施策を見ていただいてご感想いかがでしょうか?

小山田:いろいろな技術がこれからも出てきて、いろんな形で繋がっていくと思うのですが、柏の葉の場合は、例えば留学生が大体50カ国ぐらいから来ていて、毎年卒業していかれますよね。

そういう方々が10年前は、そんなにつながることができませんでしたが、今ではネットで様々な情報が流通していて、SNSで見てもらっていて、何かがあると連絡が来るんですよね。柏の葉の活動もずっと見てくれていますしね。つながるって意味では、当時小学生だった子供たちがもう大学生とか、大きくなっちゃったんですよ。そういう子供たちがテクノロジーによって勝手につながり始めているということもあるので、このまちは人がちゃんと育って広がっているなと実感しています。さらに優秀な人が多く、世界とつながっていたり、もっと言えば宇宙とつながっているようなこともあって、そういう意味で非常に層が厚い動きが始まっているなという感覚を受けています。

大屋:ありがとうございます。どんどんまちが成熟して良くなっているとのことですが、あえて繋がりという視点で何か課題やこれからやってみたいことはありますでしょうか?

小山田:人が多くなると多くなった分賑わいは出るんですが、確かに密度が薄まるんですよね。それで、イベントをやればそれでいいかっていうとそうでもなくて、何かこういう繋がりをどう維持するかっていうのが非常に難しくて、そのためには、今回のような大きいイベントが年に1回あるのもよいのですが、やはり小さな活動がいっぱいあったり、日常のコミュニケーションがどれだけ楽しくて魅力的なものであるか、ということの仕掛けをもう少しやらなければいけないなというふうには思っています。

また、何かに1回リセットをかけてつながりをもう一度起こす部分とつなぎ直す部分をやってみたいなと思います。そのようなことがこのまちはできるんですよね。このまちがこんなふうになれたのもこれからも挑戦できるのもそれを支えているのは、自治体や企業の皆様の寛容性なんです。関係者の皆様には改めて感謝申し上げます。

(左から)大屋 翔平 戸川 進之介 森田 修平氏 小山田 裕彦氏 奥野 雅也氏

<登壇者プロフィール>

■三井不動産 柏の葉の街づくり推進部 奥野 雅也氏
2022年10月より柏の葉にて勤務。
三井ガーデンホテル柏の葉パークサイドの運営など柏の葉のまちづくり実務を担う一方で、週末はホテルでのラウンジDJなどを通して現在でも年間50本程度の現場に出演。音楽好き/アート好きワーカーを体現している。

■YAMATOWORKS代表 アニメーション監督 森田 修平氏
2001年京都造形芸術大学卒業。2006年、日清カップヌードルとのCM、OVA連動企画『FREEDOM』のOVA監督に抜擢。2012年、『九十九』が第16回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門ならびにアヌシー国際アニメーション映画祭2012公式コンペに選出。同作品は米国アカデミー賞(第86回)短編アニメーション部門にノミネート。2014年から2015年にかけて、監督として『東京喰種トーキョーグール』に参加など。

■柏の葉アーバンデザインセンター アート&コミュニケーション ディレクター 小山田 裕彦氏
建築設計事務所の取締役に就いている傍ら、柏の葉スマートシティのUDCKをはじめ、愛・地球博のロボットプロジェクト、種子島宇宙芸術祭、出版、大学や高校での講師など各地でさまざまな未来プロジェクトの推進を手掛ける自称「やらかし隊長」。柏の葉キャンパスでは「えびせんさん」の愛称で親しまれている。

■統合クリエイティブセンター クリエイティブディレクター 戸川 進之介
アートディレクションをバックボーンに、シンプルかつ強いアイデアでブランディング、CM、GR、プロモーション、PR、話題化施策まで幅広い領域のコミュニケーション展開を得意とする。
朝日広告賞/毎日広告デザイン/ONESHOW/ADFEST/ニューヨークフェスティバル/2020/2017 クリエイティブ・オブ・ザ・イヤーファイナリスト/プランニング・ソリューションアワード/日本広告写真協会賞 など受賞多数

■統合クリエイティブセンター クリエイティブディレクター 大屋 翔平
クリエイティブディレクターとして、KASHIWA-NO-HA INNOVETION FES.2020より、実行委員会のディレクターとして、企画全般に携わる。戦略からアウトプットまでの一貫したデザインを手掛け、幅広い業種を担当。プロモーションやCMクリエイティブ、PR、商品開発、空間開発など自由な手口で、幅広くアウトプット。都市生活者や、スペースを起点にした研究開発も行っている。