2022 62nd ACC受賞記念 「しまねがドラマになるなんて!」チーム座談会 本気度の伝播が良きクリエイティブを生む | 読売広告社 YOMIKO ADVERTISING INC.

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2022 62nd ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS BRONZE受賞記念 「しまねがドラマになるなんて!」PJチームスペシャル座談会―本気度の伝播が良きクリエイティブを生む

2023.01.23

2021年10月20日から12月22日にかけて、さんいん中央テレビで全10回にわたり放映されたミニドラマ「しまねがドラマになるなんて!」。最高視聴率19.1%を記録し注目を集めた本作品が2022年11月に「2022 62nd ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」のマーケティング・エフェクティブネス部門において、「ACCブロンズ」を受賞しました。これを記念し、“しまドラ”プロジェクトメンバーの座談会を実施。広告会社として、地方の人口減少といった社会課題に取り組むことの意義や魅力、テレビ局や新聞社などとの会社の壁を越えたチームづくりについて語り合いました。

ACCブロンズ受賞「まさか獲れるなんて!」―それぞれの感想は?

角田:まさか地方創生文脈の仕事でACCの賞が獲れるなんて、全く想像していませんでした。

しかも、その受賞者として我々のようなBP(旧営業)も入れてもらったことは、非常にありがたいなと思っています。ACCにも認められるレベルの高いスタッフの方々と一緒に仕事ができて「本当に良かったな」というのが率直な感想ですね。

髙田:僕は、今はYOMIKOから独立して出ている身ですが、角田さんから「ぜひ!」とお声がけいただいて、CD(クリエイティブディレクター)を務めさせていただきました。

自分としても期待に応えるべく頑張った仕事でしたし、結果、新しい挑戦をして新しいカテゴリーで獲れて、とてもよかったと思っています。

肥後:私は島根出身で、「いつか出身地の仕事をやりたい」と言って入社したこともあったので、まさにその念願が叶った仕事でした。そういう作品にプランナーとして携わることができて、賞まで獲れたことがとても嬉しいです。

田中:僕は、全然島根にゆかりがなかったのですが、アートディレクターという形で関わることができて、とてもやりがいを感じた仕事でした。

普段の広告の仕事だと世の中に出るのが1日や1週間というスパンで過ぎていくことが多いのですが、今回は連続ドラマで10週間に渡って動いていくので、そのリアルタイム性を感じとることができました。

どんどん盛り上がっているのを見ていると、新鮮な充実感がありましたし、それがそのまま受賞へつながった印象です。

糠塚:私はプランナーと脚本の担当として参画したのですが、当初の企画段階から「これが実現できたら絶対面白い!」と思っていたので、必ずやりきろうと思って取り組んでいました。

ACCブロンズの受賞は嬉しかったのですが、審査に向けたプレゼン準備が始まってからの日々を思い返すと、欲を言えば「もう少し上に行きたかったな」という気持ちもありますね(笑)。

吉野:僕は元々広島支社にいて、その当時、角田さんからの電話をきっかけに営業として関わることになりました。

それまでも地方自治体の仕事が多かったのですが、今回は島根県庁や新聞社、テレビ局の方々など、関わる人全員がこのプロジェクトを成功させようという意識を強く持っていて、他にないレベルで得意先と一体になれる仕事でした。ACC受賞という結果も、こうした特別な一体感から生まれたものなのかなと思います。

地方創生や社会課題への取り組みに感じるやりがいや意義とは?

角田:地方の案件だと、「東京でこんなアピールしてほしい」というプロポーザルが多いんですね。

でも今回は、若者が県外へ出て行ってしまっても、またいつか戻ってくるときのために、地元島根に対する愛着や誇りを持ってもらえるようにいてほしい。そのためにドラマを制作して、若者に「島根にはこんないいところがあるんだ」という発見をしてほしい。そんな県の想いから生まれていた仕事でした。

そういう意味で社会的意義を強く感じましたし、島根県の本気を常に感じながら取り組んだ仕事でした。

糠塚:個人的には、地元の方々とやり取りもたくさんできたことが思い出に残っているんです。撮影時のエキストラを集めたり、撮影後にいろいろな人に会いに行って動画を撮ったり、本当に「地元の人と一緒につくったな」という感覚があって。

このドラマを完成させることで喜んでくれる人、1人ひとりの顔が思い浮かぶ仕事でした。そんなやりがいを感じる経験はなかなかないですよね。放映時も地元の人から感想をもらえて、すごく嬉しかったです。

髙田:すごくわかるよね。コンテンツを届ける「対象」の解像度が高かったのかなと思います。

普通の広告の仕事だと対象は、“生活者”という、ともすると漠然とした存在になることが多いのですが、今回は「島根県民」という目の前に見えている人たちに対して届けていく。だからこそ企画も立てやすくて、まい進しやすかった。そもそも広告は、商品の良いところを端的に伝える必要があるので、どうしても綺麗な部分を描きがちになります。

でも今回のように社会課題に向き合うコミュニケーションでは、負の側面が確かにそこにはあって、そこから目を背けるわけにはいかない。

こういった「負」も織り込んでいかにエンタメ化していくか、を考えることに、僕は強いやりがいを感じました。

肥後:確かにそうなんですよね。実は「人口減少」って、島根だとずっと言われ続けていることなんです。でも、島根を出た身としては、出たいのが当たり前というか。出る側の気持ちもすごくわかるんですよ。

人口減少という問題と、出たい人の気持ちの狭間で、どういうアウトプットにしていくかを考えることは、すごく大事な視点だなと思いました。

自分自身が近い事例だったからこそ学びも多く、自分ならではの提案ができたのかなと思っています。

最高視聴率19%超。これだけの反響につながった一番のポイントは?

髙田: 「しまねがドラマになるなんて!」というタイトルは初期から決まっていたのですが、実際に県民の皆さんに受け入れられるか不安はありました。

でもある日の撮影中に近所のママたちが「何してるんですか?」と来てくれたときに、音声の人が「こういう撮影をしています」と台本を見せたんです。そうしたら台本に書いてあった「しまねがドラマになるなんて!」というタイトルを見て、「これ本当だわ!」って突っ込まれたんですね(笑)。この反応を見て「いけそう」だと思いました。

とはいえ、県発信のドラマを一方的に流してもスルーされてしまいます。だから事前の広告・PR含めた盛り上げ、注目づくりには非常に力を入れました。そこで仕掛けた戦略がトータル的に効果を発揮した結果、臨界点を超えた感覚ですね。

高視聴率が取れた要因として、1話1話にちゃんと地元ネタを絡めていたこともあるとは思いますが、プロモーション活動を通して県民の皆さんに「これは本気のやつだ」と伝わったからこそムーブメント化したのだと思います。

吉野:広告訴求という意味でいうと、今回は新聞が強かったという結果が出ています。15段広告を毎週放送日に打ちました。加えて、ラジオやSNSもまんべんなく出しました。

当初の計画で決まっていたことだけでも盛りだくさんだったのに、デジタル広告も追加したし、交通広告も出しましたし、TVerにも出しました。絶対に届けなきゃ、という強い想いがあったと思います。普通じゃないレベルですよね(笑)。

角田:本当だよね。とくに後半になって、媒体社さんも社内で「出し過ぎじゃないか」と言われたりして(笑)、みんな大変な思いで調整しながら進めました。

いいものが出来上がっている、という強い確信があったからこそやり切れた部分が大きかったと思います。改めてこういうやり切る戦略がなければこの結果はなかったと思いますね。

個性を生かし合えた「チーム力」の根源は何か?

髙田:僕自身、顔が見えている地元の人たちを裏切ることなく、期待に応えなければという勝手な使命感がありました。

このチームではその感じをみんなで共有できていたような気がするし、クライアント側の自治体のみなさんも、ここまで熱量を持ってやってくれるところは本当に、貴重だったんじゃないかと思います。ある意味、奇跡でしたよね。

ふと思ったんですが、このメンバーで一堂に会するのって初めてくらいなんじゃないですか?(笑)みんなそれぞれが自分の役割を全うするチームだったから。

僕のように会社を出た人間が、こうして輪に加えていただけるのは本当にありがたいですし、改めてこういう感じ、熱のある人たちや仕事こそがYOMIKOらしいなと思いました。

肥後:このチームって本当に、一生懸命熱を込めて仕事することを、全員が当たり前にやってくるんですよね(笑)。

とにかく「1人ひとりのパワーが強いチームだな」と思っていました。だからサボりたくなっても、このチームでサボったら絶対に置いていかれるので気が抜けなかったです。

私にとっては色んな意味で参加できてありがたいチームでした。

糠塚:確かに改めて振り返ると、こんなに頼もしいチームはないなと思いますね。

何かトラブルが起きたとしても、「絶対なんとかなるだろう」という気がしていました。それは自分が解決案を出すこともそうですし、営業の吉野さんたちが県庁さんときちんとすり合わせてくれるだろうと思える「信頼」がベースにありました。

自分でも一生懸命やるけど、背負い過ぎてしまう感じもなかったですね。

吉野:懐かしいですね。髙田さんとか糠塚さんと毎日遅くまで議論して、翌日県庁さんに渡して、戻しがきて、また議論して、を繰り返すような日々でした。信頼してもらえていたんだと思うと改めて嬉しいです。

この6人もそうですが、新聞社もテレビ局も県庁も、とにかく個性的な人が揃っていました。でも、お互いが本気だということを理解し合って信頼していたからこそ、個性が立っていても成り立ったのだと思います。

田中:僕も今回は「この人とやるのは楽しそうだな、この人とならいい仕事ができそうだな」と、最初から行ける感じがありました。その感覚は実際に仕事がはじまってから今まで、ずっと変わらないですね。

角田:地元のことは地元に協力を仰いだり、このテーマに思い入れのある人と一緒に取り組んだりすることは、こういった仕事の1つの成功パターンではあります。ただ、それを「新聞」と「テレビ」というライバル関係にある人たちまで巻き込んで連携できたことには、大きな意味があったように思います。

調整作業は実際、とくに初めが大変でした。でも媒体社の人たちも本当に熱い人たちばかりでしたし、県庁の方々も気持ちを共有していく中で、同じような温度感で臨んでくれるようになりました。

さらに、YOMIKOのこのメンバーですよね。これまで私自身、このメンバーとここまでガッツリ組んだことはなかったのですが、とにかく熱くて、1人ひとりが妥協しなかったですよね。仕様書をそのまま実行するのではなく、絶対により良いものをつくろうとしていた。

こんな熱量のある優秀な人たちとそんな風に仕事ができたことが今回、私にとって一番ありがたかったことですし、引いた目で見れば結果、会社の未来にもつながるような一つの財産になる仕事だったと感じています。

<プロフィール>(写真左から順に)
第1ビジネスプロデュース局第1部 吉野裕昭
フロントライン戦略局 角田文彦
関西ビジネスプロデュース局 関西エクスペリエンスデザインルーム 肥後晶
株式会社エスニック 髙田陽介

エクスペリエンスデザインセンター エクスペリエンスデザインルーム 糠塚まりや
クリエイティブセンター 第2クリエイティブルーム 田中龍一

「しまねがドラマになるなんて!」https://tsk-tv.com/shimadora/2021/

各回5分のミニドラマで、高校生4人が人々との交流を通じて、ごく普通で当たり前と思っていた島根の景色や日常と向き合いながら気付きを得ていくストーリー。