ハプスブルクの宝剣 - やね日記

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ハプスブルクの宝剣

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皆さんは藤本ひとみさんという作家をご存じでしょうか?
歴史、特に欧州の歴史を題材にした小説を数多く書かれている方なのですが、その藤本さんの作品の中でも私が一番大好きなのが上記の「ハプスブルクの宝剣」です。

この小説は、ユダヤ人であった主人公エリアーフーが、とある事件によって時のロートリンゲン公フランツ・シュテファン(後の神聖ローマ皇帝フランツ一世)の知遇を得て、神聖ローマ帝国で活躍する話なのですが、晩年のサヴォア公子オイゲンやフランツの妻にしてハプスブルク家の女当主である女帝マリア・テレジア、そして北方の雄邦プロイセン王国の若き国王フリードリヒ二世など、歴史に名を馳せた人物たちも数多く登場します。

そして、エリアーフーの実家であるロートシルト家も実在します。
エリアーフーの弟アムシェル・モシェの子のマイヤー・アムシェルは、五人の息子を欧州の五大都市に派遣しました。特にロンドンに渡った三男ネイサン(ナタン)は、自身の才覚によって金融王ネイサンと呼ばれるほど栄華を極めました。
そして、フランクフルトでロートシルトと発音された家が、フランスでロチルドと呼ばれ、そしてイギリスで発音されたのが「ロスチャイルド」。そう、あのロスチャイルド財閥です。

もちろん、小説自体はフィクションですし、エリアーフーという人物も存在しません。ですが、人々が交わることによって生まれる歴史のダイナミズムや、作品全体からにじみ出る一貫したテーマなど、単なるエンターテイメントとして片付けられないものがこの作品にはあると思います。更にユダヤ人差別という、宗教意識が希薄な私たちにはあまり認識が無い問題にも正面から切り込んでいるのも、この作品の魅力であろうと思います。

是非、一読をお勧めしたいですね。