深刻化する女子のスポーツ離れ ナイキが障壁や課題を語り合うサミットを東京で開催 - WWDJAPAN
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深刻化する女子のスポーツ離れ ナイキが障壁や課題を語り合うサミットを東京で開催

ナイキジャパンは、スポーツを通じた社会貢献活動を行う英ロンドン拠点のローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団(Laureus Sport for Good)とともに「女の子のためにスポーツを変えるウィーク - COACH THE DREAM -」と題したサミットを10月16〜20日に東京で行った。国内外から約400人が集まり、女子とスポーツを取り巻く課題とそれらに対するアプローチを話し解決策を提示することを目的に、パネルディスカッションや研修、スポーツ体験イベントなどを開催。テニスプレーヤー大坂なおみ選手との、5年目を迎えた「プレー・アカデミー with 大坂なおみ」(以下プレー・アカデミー)も行い、スポーツを通した交流と意見交換の場とした。

日本の中学生の運動量は男女で2倍以上の差に

日本初開催となったサミットでは、深刻化する日本国内での女子のスポーツ離れにフォーカス。スポーツ庁の統計によると、1週間の総運動時間が60分未満という小学生の男子は9.0%、女子は16.2%。中学生の男子は11.3%、女子は4人に1人を示す25.1%という結果で、中学生になると男女で2倍以上も差があることが分かる。その背景に、女性アスリートなどのロールモデルが少ないこと、女子特有のニーズに配慮や理解のあるコーチが少ないこと、女子のニーズに合うスポーツの機会が少ないことを挙げられている。

今回のサミットでは、現役の女性スポーツ選手や女子日本代表前ヘッドコーチらが登壇し、女子スポーツにおける障壁や課題などについて議論。現在大学4年生で小学生からバレーボールをプレーする世古汐音さんの「指導者とうまくいかず、好きなバレーを辞めたいとも思ったことがある」、柔道やクライミングを楽しむ視覚障害のある中学2年生の中山杏珠さんによる「壁を越え登る時の達成感や、柔道着をつかむことも相手に投げられることもワクワクとした感覚がある。スポーツとので出会いによって今の自分がある」という実体験の訴えから議論はスタートした。

「女子はこうあるべき」という考えが
いまだに根付いている

パネルディスカッションでは、読売ジャイアンツの田中美羽選手と恩塚亨前バスケットボール女子日本代表ヘッドコーチ、スポーツとジェンダー領域の専門家である中京大学の來田享子教授が登壇。選手そして指導者、相談を受ける専門家としての経験談を語った。田中選手は「今夏、女子野球のクラブチームの全国大会で2連覇を遂げたが、メディアにあまり取り上げられなかった。男子だと新聞の一面を飾るのに、モヤモヤした。どうすればメディアが女子スポーツを扱ってくれるのか」と悔しさと疑問を投げかけた。來田教授によると、女子アスリートは男子に比べ、メディアで取り上げられる回数が圧倒的に少なく、中には競技に関係ない内容も多いという。また日本で女子のスポーツ参加をはばむ障壁としてジェンダー規範を挙げ、「『女子はこうあるべき』という日本で顕著に見られる考え方はまだまだスポーツの分野で根付いている」と話した。

男性指導者としてバスケットボール日本女子代表チームを支えてきた恩塚氏も、勝利のためだけに監督やコーチの言葉や指導を絶対とする傾向のある日本の古きコーチング法に警鐘を鳴らす。「女性特有とも言われるが、気持ちが変わりやすいのは人間性と捉え、一人一人理解することから始めた。『やらなきゃいけない』という意識ではなく、『かっこいいよね』というやる気や憧れを導くことが大事。選手がどうなりたいかを気持ちを理解できるコーチがもっと必要になる」。來田教授は「選手の気持ちをわかっている気になって、男子選手の場合は体罰につながることもある。性別関係なく、対話を大事にするべき」と助言した。

コーチをサポートする「COACH THE DREAM」を掲げるナイキは、今回の開催による日本での新しいコーチングガイドを発表した。これは、スポーツをする女子にとってより包括的で協力的な環境を作るためのスキルと知識をコーチに提供することを目的とする。さらにローレウス財団は、「女の子のスポーツ参加を促す指導者ガイド」を発行。子どもや若者育成のためにスポーツを活用する団体を支援してきたセンター・フォー・ヒーリング・アンド・ジャスティス・スルー・スポート(Center for Healing and Justice through Sport)が開発したガイドを参考に、日本の文化や制度などを考慮し、専門家らのアドバイスを交え制作した。「プレー・アカデミー」の公式サイトからPDF版をダウンロードすることができる。

【INTERVIEW】
ヴァネッサ・ガルシア=ブリット/
ナイキ バイスプレジデント兼チーフインパクトオフィサー

PROFILE: ヴァネッサ・ガルシア=ブリット/ナイキ バイスプレジデント兼チーフインパクトオフィサー

ヴァネッサ・ガルシア=ブリット/ナイキ バイスプレジデント兼チーフインパクトオフィサー
PROFILE: 米ニューヨーク出身。ラトガース大学で学士号、ジョージ・ワシントン大学ロースクールで法学博士号取得。弁護士としてキャリアをスタートし、ナイキ入社後もビジネスでの社会貢献分野に注力。ナイキ初のパーパス・コミュニケーションズ・チームも創設した。母親はホンジュラス出身、父親はアルゼンチン出身

来日したナイキのヴァネッサ・ガルシア=ブリット(Vanessa Garcia-Brito)バイスプレジデント兼チーフインパクトオフィサーは、「今回日本でサミットを開催できたことはとても大きな意味があると感じている。サミットではたくさんの女性アスリートや男性指導者が声をあげてくれた。女子のスポーツ離れの問題は世界で深刻化している。多くの女の子たちが、スポーツから遠ざかってしまうような出来事を経験していることは事実で、チャンスや可能性を見逃してしまっている」と指摘。また、ナイキが力を入れるコーチングについても、「若者のスポーツの未来に力を与え、インクルーシブなコーチングを確立するために、さまざま取り組みを始めている。コーチだけでなく、専門家や地域とともに考えていく必要がある。こうしてみんなで集まって声を上げる場所をつくり、議論し、聞く機会を設けることで、人の認識を変えることができる。みんなのパワーを持ち寄って、ギャップを塞いでいくことが必要だ。女の子がスポーツの居場所を見つけるために、グローバルでアクションを続ける」と話した。

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