PROFILE: アンソニー・キョン/フェニックス グループ ホールディングス社長兼CEO、アンテプリマジャパン社長
香港を拠点とする「アンテプリマ(ANTEPRIMA)」がPVC製のワイヤーを手編みしたアイコンバッグの大ヒットで過去最高売り上げを更新している。同ブランドはフェニックス グループの創業者の荻野正明と現在のクリエイティブ・ディレクターである荻野いづみが1983年に立ち上げた。98年以降はミラノ・ファッション・ウイークに参加するコレクションブランドでもある。現在指揮を執るのは、アンソニー・キョン=フェニックス グループ ホールディングス社長兼CEO、アンテプリマジャパン社長だ。キョン社長は、「アンテプリマ」スタート時から生産部門に携わり、2018年に現職に就いた。キョン社長に、20〜30代の間で一気に高まった人気を追い風に、コレクションブランドとしてどのようなポジショニングを目指すのか戦略を聞いた。
WWD:2000年代後半に流行したワイヤーバッグが再び人気を集めている。そもそもワイヤーバッグが生まれた経緯は?
アンソニー・キョン=フェニックス グループ ホールディングス社長兼CEO、アンテプリマジャパン社長(以下、キョン社長):ブランド経営にとってアクセサリーは欠かせない。当時私は生産の立場だったが、アイコニックなバッグを生み出そうと、ほかのデザイナーと協業するなど試行錯誤を繰り返していたのを覚えている。たくさん失敗もした。ワイヤーバッグが出来上がったのは1998年。当時もチームのみんなは自信がなかった。だからお客さんに受け入れやすい価格設定を意識して出したところ当たった。伊勢丹新宿本店などで販売し1週間で売り切れるようだった。そこから「アンテプリマ」のアイコンバッグはこれで行こうとなった。
WWD:2009年頃でブームが終わり、しばらくは低迷していた。原因は?
キョン社長:当時の日本の百貨店は若年層の集客に苦労していて、毎年2%程売り上げが落ちていた。多くのブランドが若年層に向けたセカンドラインを立ち上げ始めた時期だ。私たちもセカンドライン「ミスト」を立ち上げたが、大きな間違いだった。なぜなら商品は若者に向けていても、その層が行くようなルミネやパルコに出店しているブランドと比較するとやはり価格競争力が弱い。結果、若い人たちに広まらずブランドと顧客が一緒に年齢を重ね売り上げは徐々に低迷。ピーク時の半分くらいまで落ちてしまった。
WWD:社長に就任してからはどのようにテコ入れした?
キョン社長:就任当時の顧客層のうち20〜35歳の割合は10%弱。これでは未来がないと思った。最初の1年間は毎月日本に来て市場を勉強した。実際に百貨店に行ってみると、意外と若い人たちでにぎわっている。私たちの商品が若い人に響いていないのだと思った。そこで街の若い人たちを観察していると、みんな片手にアイフォン、もう一方にタピオカティーを持って歩いている。そこで両手をふさがないショルダーバッグタイプの“スタンダード ミニアトゥーラ”を開発した。コロナを経て21年に“スタンダード ミニアトゥーラ”を発売。以降、ワイヤーバッグの売り上げは、22年4月期は前年比23.4%増、23年4月期は同84.4%増、24年4月期は同124.4%増と倍々ゲームで売れている。
WWD:コロナが明けて人々が外出する機運が高まっていた時期でのショルダーの提案、3万円台の買いやすい価格帯、20〜30代のインフルエンサーを起用したマーケティング、全てが当たった。
キョン社長:方向性には自信があったが、まさかここまでの反響になるとは思わなかった。若い人たちが買ってくれるようになると、過去に親しんでくれていたファンの人たちもまた買ってくれるようになり相乗効果だった。商品は全て自社工場で生産しているが、在庫は2週間もたない。今期の売り上げは、15年前のピーク時を超える70億円を目指せるだろう。
1年後には20万円台のハイエンドラインを作る
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