毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年8月5&12日号からの抜粋です)
利川:最近「フェイラー(FEILER)」や「レスポートサック(LESPORTSAC)」がウェブ記事のアクセスランキングで度々上位にランクインします。どうしてこんなに人気なんだろう?と関心を持ちました。編集会議でその話をすると、他にも人気が再燃しているブランドがあると。そういったブランドの企画やマーケティング戦略に迫ってみたい、読者のビジネスヒントにもなるのではと考えました。
村上:ファッション業界は移り変わりが激しいから、1回ブームを迎えて下火になると、カムバックするのは結構難しいですよね。商材は昔とあまり変わらず、中には手頃な価格の類似品も多かったりするのに、どうして人気が再燃したのか。年月を経て、ファーストブームとその反動を知らない人たちが増えているのも、復活の要因かもしれない。Z世代を引きつけているのが共通点です。
利川:20代の私にとって、「クロックス(CROCS)」は家族みんなではく庶民的なイメージがありましたが、シモーネ・ロシャ(SIMONE ROCHA)とのコラボアイテムは、いい意味でそれを裏切ってくれました。「ディーゼル(DIESEL)」や「クレージュ(COURREGES)」のようにZ世代に向けて刷新したブランドがある一方、「フェイラー」や「レスポートサック」は全方位的。これまでのファンも大事にしつつ、コラボ施策でいろんな層にアプローチしています。
村上:「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」の復活は、K-POPアイドルのアンバサダー効果ととらえられがちですが、47歳の私は、80年代にブルック・シールズ、90年代にケイト・モスを起用してブームを巻き起こした「カルバン・クライン」らしさの復活と分析しています。元来の強みを今っぽく伝えることが大事なんだと思います。
若い世代のブームが上の世代に波及する
利川:変わらぬ強みがあることは必須ですよね。「レスポートサック」は、軽くて丈夫なナイロン生地の良さを打ち出したマーケティング施策が当たったそうです。顧客からの機能性を求める声やコロナ禍での丸洗い需要に応えて、「あくまでも既存品を刷新しただけ」と語っていたのが印象的でした。「フェイラー」もSNSで界隈の盛り上がりを見て、8月12日を“ハイジの日”と決め、“ハイジ”シリーズの人気をさらに高めています。若い世代が「イケてる!」と身に着け始めると、その上の世代にも波及しますよね。
村上:確かに。「若い人が夢中らしい」と伝わると、ヒットになる構図が出来上がりつつあります。SNSの役割は大きいですね。