「グッチ(GUCCI)」は6月17日、ミラノ・メンズ・ファッション・ウイークで2025年春夏メンズ・コレクションを発表した。サバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)=クリエイティブ・ディレクターが就任してから初の春夏メンズとなる今季は、ミニマルなアプローチでウィメンズと呼応するスタイルを見せた昨シーズンに比べ、よりリラックス感のあるスタイルを提案。ポップな色柄使いで新たな一面を見せた。
“オープンな空間”である美術館を会場に
会場は、デザインや建築、ファッションなどの展示で知られるミラノ・トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム。その休館日に合わせるためか、今回は初日のスロットから日時を移動。窓から自然光が差し込む開放的な空間にアシッドグリーンの客席を並べ、エントランス前には招待された学生たちが生でショーを見られるスペースを用意した。
5月に2025年クルーズ・コレクション(ウィメンズ)を披露したロンドンのテート・モダンに続いて美術館を会場に選んだのは、「あらゆる波を分け隔てなく受け入れる海辺のように 、美術館もまたそこに引き寄せられる人々を育む、完全にオープンな空間だ」というサバトの考えから。彼自身もよりオープンな姿勢と自由な感覚でコレクション制作に取り組んだ。
キーアイテムは総柄のオーバーサイズシャツと太もも丈のショーツ
スタイルのカギとなるのは、都市と海辺の出会い。精緻なカットと上質な仕立てに支えられたモダンで都会的な新たな「グッチ」のスタイルを大切にしながらも、夏のビーチやリゾートを想起させるリラックス感や開放的なムードを取り入れている。ファーストルックは、アシッドグリーンのボンディングレザーコートに、メッシュ地のポロシャツ、そして今季のキーアイテムとなる太もも丈のテーラードショーツ。コートのベンツは先シーズン同様深めで、モデルはあえて高い位置につけたポケットに手を突っ込みながら歩く。そこからは、サバトのアティチュード(姿勢)までを含めデザインするという考えやシルエットへのこだわりが見て取れる。
なかなか挑戦的な丈のショーツと合わせて今季のムードを強調するのは、ネオンやパステルカラーをミックスした配色が印象的な総柄のオーバーサイズシャツだ。モチーフは、サーファー、イルカ、ハイビスカス、バナナリーフの4種で、デザインはワークジャケットのような3ポケットを配した開襟の長袖と半袖からレギュラーカラーの半袖までをラインアップ。中には、短いビーズフリンジをあしらったものや、総ビーズ刺しゅうで柄を描いたもの、スパンコール刺しゅうでプリントの上にモチーフを重ねたものなどもある。また、ニットのシャツやポロには透明なボールビーズやスパンコールを全面に編み込み、ポロシャツのスポーティーなボーダーは短いビーズフリンジを段状に重ねて表現。そんな技巧を感じる手仕事を加えることで、カジュアルなスタイルをラグジュアリーに昇華している。
一方、昨シーズンはストイックな印象もあったフォーマルルックには、リラックス感をプラス。インナーにメッシュのポロシャツを合わせたり、ボクシーなダブルブレストジャケットやパンツ自体をシャツのようなコットンポプリンで仕立てたりして、軽やかに仕上げているのが特徴だ。
アクセサリーはアイコン要素の再解釈を継続
バッグは、新たなスタイルが豊富だ。アーカイブのラゲージからヒントを得たというブラッシュドレザーのかっちりした小ぶりのバッグは、同素材のAirpodsケースやペンケースなどのパーツを付けて自由にカスタマイズできるのが特徴。ネオンやパステルカラーで彩られたパテントレザーのフラップバッグは、中綿入りでソフトな質感に仕上げている。昨シーズンにラージサイズで提案した“グッチ B”には、レギュラーとマイクロミニサイズが登場。“ジャッキー”の金具を用いた横長のバゲットスタイルや、キャンバス製のカジュアルなバケットショルダーは、ジェンダーを問わず支持されそうだ。
新作シューズは、大きく分けて3種類ある。一つは、先シーズンから続く“ホースビット”ローファーのアレンジ。ポインテッドトーのローファーとショートブーツをラインアップする。そして、スニーカーは、ソールに“インターロッキング G”を立体的にあしらったボリュームのあるスニーカーが新登場。マリンスポーツの際などに履くシューズにヒントを得たスリッポンもある。
そして、アクセサリーも「グッチ」のアイコン的要素をモダンに再解釈。ベルトは“ジャッキー”に使われているようなスナップフックをアレンジして”ホースビット”を模したデザインに。ネックレスやブレスレットは“バンブー”のモチーフを採用している。また、ほぼ全てのルックの仕上げには、スポーティーなストラップが付いたチャンキーなスクエアフレームのサングラスを加えた。