タペストリーとカプリは2023年8月、本買収について合意している。買収が完了すれば年商120億ドル(約1兆8400億円)の巨大ファッションコングロマリットが誕生すると目されているが、FTCは「この取引が許可されれば、タペストリーとカプリが擁するブランド間の直接的な競争がなくなる。タペストリーが“アクセシブル ラグジュアリー(Accessible luxury)”と呼ぶ、高品質のレザーと職人技を手ごろな価格で提供するハンドバッグ市場を独占することになる」と声明を発表した。
ジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)=タペストリー最高経営責任者(CEO)は、上海から米「WWD」の取材に応じ、本件を前進させるために闘う用意があると話した。「われわれは、この取引のメリットと利点に自信を持っており、法廷で主張するのを楽しみにしている。重要なことは、今年中に取引を完了させるために迅速に進めることだ」とコメントした。
投資家は23年11月にFTCが2度目の情報開示請求を行った後、この取引に異議を唱えるかどうかについて注視していた。専門家によると、政府がいわゆる“アクセシブル ラグジュアリー”ハンドバッグ市場のような、限定的で裁量権の大きい分野について取引を阻止するために独占禁止規制に踏み込むのは異例だという。
クレヴォイセラCEOは、「FTCが市場をどのように定義しているのかは明らかではない」と述べ、「消費者が主導権を握っている。消費者が価値を見出すようなイノベーションをもたらさなければ、消費者には他に選択肢がある。市場には大手がいて、毎日新規参入者がおり、参入障壁はないため、消費者にとって価値があるものを生み出し続けなければ競争に勝つことはできない」と説明した。
他方、FTCはこの取引について全く異なる見解を持っており、「本合併案は、価格や割引、革新性、デザイン、マーケティング、広告などに関するタペストリーとカプリの競争によってもたらされる利益を何百万人ものアメリカの消費者から奪う恐れがある」と声明を発表している。また、ヘンリー・リウ(Henry Liu)=FTC競争局局長は、「コーチ」から発展したタペストリーは「連続的な買収者」となり、「ファッション業界における立場をさらに強固なものにするためにカプリを買収しようとしている。本取引は、消費者から手ごろな価格のハンドバッグ市場の競争を奪い、時間給労働者はより高い賃金と有利な職場環境の恩恵を失う恐れがある」と述べた。