ジュエリーブランド「リメルリック(REMELRIC)」は、 “都市鉱山”と呼ばれる廃棄された携帯電話やPCなどから採取した金属を精製した“リファインメタル”やデッドストックの石を使用した環境に優しいブランドだ。日本大学大学院生のRENが手掛けるジュエリーは、男性、女性両方が着用できるジェンダーニュートラルなデザイン。カメラマンの川島小鳥が撮影したビジュアルには、ジュエリーを重ね付けした男性が登場している。ブランドのオンラインストアや「エル・ショップ(ELLE SHOP)」の他、ユナイテッドアローズ麻布台ヒルズ店でも販売をスタート。ファッションが大好きというデザイナーのRENは、ジュエリーをはじめ、ネイルやメイクまで日常的に楽しんでいる。Z世代彼に、ブランドやジェンダーに対する意識について聞いた。
年齢、性別を区切ってモノ作りをする時代ではない
WWD:「リメルリック」をジェンダーニュートラルなブランドとしてスタートした理由と目的は?
REN「リメルリック」ブランドディレクター(以下、REN):ファッションには、素材やシルエットなど、ある程度、男女の区分けがあるが、ジュエリーにはない。だから、自然とジェンダーを気にせずデザインしている。ジュエリーは毎日着けるモノなので、日常に溶け込むデザインを意識している。ジェンダーニュートラルなブランドにしたのは、男女、年齢問わず、全ての人に着けてほしいから。今、年齢や性別を区切ってモノ作りをする時代ではない。
WWD:ブランドのコンセプトは?
REN:温故知新。アートやカルチャーが好きで、今流行っているものよりも、アール・デコ、シノワズリ、1990年代のカルチャーなど、過去のものにインスパイアされることが多い。ジュエリーは、受け継いでいくものだから、長く着けてもらいたい。
WWD:ビジュアルに男性モデルを起用したのは?
REN:世の中、ジュエリーのビジュアルに登場するのは、女性がほとんど。女性でもいいが、逆に男性でもいいのではと思った。“女性のためのジュエリー”というジェンダー感を出したくなかった。個人的に川島(小鳥)さんのデジタルではなく、フィルムでスナップ的に撮影した世界観が大好き。その世界観に合う男性モデルが友人にいたのでキャスティングし、アットホームな雰囲気で撮影した。ジュエリーは日々着用するものなので、川島さんの日常の1シーンを切り取る手法は、ピッタリだと思った。
プレイリストを作るようにジュエリーを楽しむ
WWD:ジュエリーを着用し始めたのはいつか?
REN:ファッションが好きで、小学校高学年〜中学生の頃から母親の指輪や「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」のシルバージュエリーなど着けていた。ジュエリーもファッションの一部だと思っていた。ジュエリーを着けると幸せな気持ちになる。「インスタグラム」を始めたのは12歳の時で、ネイルサロンが打ち出したシルバーアクセサリーなどのジュエリーに注目し始めた。当時は、セレクトショップの「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」「キャンディ/フェイクトーキョー(CANDY/FAKE TOKYO)」などが盛り上がっていて、そのようなジュエリーを提案していた。今でもカルチャー発信している「グレイト(GR8)」は、大好きで、一番イケていると思う。
WWD:自分にとってジュエリーとは?どのように楽しむか?
REN:毎日着用するものもあるが、変身アイテムのようなもの。アニメに出てくるステッキやコンパクト、ベルト的な感覚。お守り的な感覚は全くない。その日の気分でファッションの一部として着けたいものを着ける。例えば「リーバイス(LEVI’S)」のデニムに「ヘインズ(HANES)」のTシャツに「アンブッシュ(AMBUSH)」のキラキラジュエリーを着ける。ジュエリーが変化球になり、かわいいと思う。ジュエリーは身につけられるアートといった感覚で、ムードにより着けるものが変わる。ゴールドやシルバーなど、ジュエリーの組み合わせはパズルのように、音楽のプレイリストを作る感覚と同じだ。
“キラキラ”や“ピチピチ”、ヒールも選択肢の一つ
WWD:ファッションにおけるジェンダーを気にするか?
REN:全く気にしない。個人的には、モードもストリートも、クワイエットラグジュアリーも、デコラティブなものも全部好き。「ジャックムス(JACQUEMUS)」や「ガニー(GANNI)」が好きで、「ミュウミュウ(MIU MIU)」や「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のようなファッションもいい。今の気分は、「ジャックムス」のピチピチニットが着たい。ラメなどトレンドのキラキラが好きなので、バッグやシューズに取り入れたい。シューズもヒールがあるものが好き。「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」の足袋ブーツがジェンダーレスの象徴。「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」が好きで、ビジュー付きのシューズを履いてみたい。女性だったら着てみたいのは、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」などのオートクチュール。マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)による「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」など、10年以上前のラグジュアリー・ブランドのウィメンズにも興味がある。
WWD:ジェンダーニュートラルは広がると思うか?
REN:ファッションでは、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」でジェンダーに対する流れが変わったと思う。オーバーサイズがトレンドになり、ムーブメント的にカルチャー感覚で変化した。Y2Kトレンドがジェンダーの壁を薄くしたと思うし、SNS発信により、一般的な見方がフラットになった。これからのY3Kは宇宙っぽい雰囲気で、メタバース感がある。「ディーゼル(DIESEL)」「コペルニ(COPERNI)」「オットリンガー(OTTO LINGER)」などがイケていると思う。また、男性がメイクするのが当たり前の時代になった。韓国コスメやSNSインフルエンサー、広告の影響で男性の間でもビューティが広がっている。ドラァグクイーンなどもファッションの一つのコンテンツとして当然になると思う。
「WWDJAPAN」2024年4月8日号では、ジュエリー中心に広がるジェンダーニュートラルの波を特集している。メンズジュエリーの今のリポートを始め、Z & ミレニアル世代の4人のリアルな声を通して、ファッションにおけるジェンダーの意識を探る。