毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年3月18日号からの抜粋です)
藪野:2024-25年秋冬のパリコレ特集号では、鋭い感性を持つデザイナーたちが発した“日常”に対するメッセージを中心にまとめました。それとは別に、向さんが「良い!」と感じたコレクションはどれでしたか?
向:強い衝撃を受けたのは「ミュウミュウ(MIU MIU)」でしたね。Y2Kトレンドをけん引して、ショー会場周辺はブルマー姿のインフルエンサーがたくさんいましたが、ランウエイはもう次のステージに進んでいて。マイクロ丈のバランス感覚はあるけれど、肌見せはほとんどなく、60代、70代のモデルたちが登場。Y2Kスタイルでヘルシーに肌を露出するTWICEのMOMOにフロントローでコメントを取った直後に70代のマダムが歩くランウエイをどう解釈していいのか、最初はすごく戸惑いましたが、いろいろ調べていくうちにすごく腑に落ちました。ミウッチャ・プラダ流“少女らしさ”の再解釈です。年齢やジェンダーや人種も関係なく、自分の意志を持ち続ける人は全人類が「ミュウミュウ」ガールになれるという提案。全く同じことを「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」でも感じました。ティーンの女の子のマインドと強い反骨精神こそ両者の魅力です。藪野さんはどうでしたか?
新鮮な提案を続けるジョナサンはスゴい
藪野:僕は今回に限らずですが、「ロエベ(LOEWE)」が良かったです。ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の大胆な思考と探求するクラフトの融合が特に冴えていました。ショー直後の囲みインタビューが毎回楽しみなのですが、今季は階級社会や“由緒”が今の世の中において果たして意味を持つのかを再考。上流階級的なものをモチーフに、ぜいたくな手仕事やユニークなフォルムを生かした提案が印象的でした。ウィットに富んだアイデアはバッグやアクセサリーにも見られ、やはり巧みだなと。「ロエベ」を手掛け始めてから約10年経ちますが、新しいものを見せ続けているのは、本当にスゴいことですよね。
向:就任10年といえば、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)も毎回一生に一度の“卒コレ”のような渾身ぶりで、新しいフォルムの追究をしています。そして、今回はStray Kidsのフィリックスがランウエイに登場。彼が歩くことで、瞬く間にその姿がSNSで拡散され、ショーが終わる前に多くの人が最新のコレクションを目にすることになりました。この流れは来シーズン、さらに広がると思います。