シャネルが2022年12月期決算を発表した。多くのラグジュアリー企業と同様に、急激な回復ぶりを見せた21年と比べると減速しているものの、引き続き2ケタ増と順調に成長している。そうした好業績を背景に、同社では店舗のリニューアルオープンや人員拡充、職人の育成など、長期的な視点で事業戦略を展開。「100年後もアイコニックなメゾンであるため」に前進し続ける同社の最近の動きを、決算情報を中心にまとめた。(この記事は「WWDJAPAN」2023年6月5日号からの抜粋です)
シャネルの2022年12月通期決算の売上高は、前期比17.0%増(現地通貨ベースおよび既存店ベース、以下同)の172億2000万ドル(約2兆4108億円)、営業利益は同5.8%増の57億8000万ドル(約8092億円)、純利益は同14.2%増の46億ドル(約6440億円)だった。
地域別での売上高は、欧州が同29.6%増の47億2000万ドル(約6608億円)、11月ごろから景気が減速している米国市場を含む南北アメリカは同9.5%増の38億6000万ドル(約5404億円)、アジア太平洋地域は同14.3%増の86億5000万ドル(約1兆2110億円)だった。なお、フランス国内における中国人消費者による売り上げはコロナ禍前の19年と比べて90%減だったが、23年は中国人観光客が急激に増加したため、4月には同14%減まで持ち直しているという。
同社は事業別での売り上げを明らかにしなかったが、ファッション部門は特に好調だったレザーグッズとシューズがけん引して業績を伸ばし、ウオッチ&ジュエリー部門もアイコニックなウオッチ“プルミエール”の35周年を記念したオリジナル復刻版の発売などにより堅調。フレグランス&ビューティ部門は免税店などのトラベルリテールが順調に回復し、全ての事業において2ケタ成長だったとしている。
リーナ・ネアー=グローバル最高経営責任者(CEO)は、「素晴らしい業績を上げることができてうれしく思う。これはブランド力の強さ、顧客との良好な関係性、自由なクリエイションのパワーによるものだ。ブランドが持つ力を信じ、顧客とのエンゲージメント強化に尽力し、長期的な視点で事業を育てていけば、業績は自ずとついてくるものと考えている」と語った。
なお、フィリップ・ブロンディオ最高財務責任者(CFO)によれば、売り上げ増加の要因として値上げとボリューム増があり、その割合は半々程度だという。ここ数年、生産コストや人件費の上昇などを受け、ラグジュアリーブランドでハンドバッグの値上げが続いているが、「シャネル」は21年1月から22年2月にかけて米国で29%の値上げをしたモデルがあるほか、22年3月にも定番バッグ4モデルと22年春夏コレクションを値上げした。ブロンディオCFOは22年5月に、「当社では通常、年に2回価格の改定を行う。『シャネル』の製品は最高級の素材、比類のないクリエイティビティー、素晴らしいサヴォアフェール(受け継がれる職人技術)を持って作られており、それらに基づいて値段を決定している。今後も通貨価値の変動やインフレの影響などを踏まえて商品価格を調整する」と述べており、今回の決算発表でも「23年も同様のプライシングをする予定」としている。
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