「シャネル(CHANEL)」は、英国王チャールズ3世(King Charles III)が設立したプリンス財団(The Prince’s Foundation)と組み、新たにメティエダール(Metiers d’art)の教育プログラムを開始した。“メティエダール”はフランス語で「手仕事」の意味。同プログラムは、専門的な工芸品や技術を守り新たな世代へと継承することを目的としたもので、「シャネル」傘下の11社から600人以上の職人が集まる複合施設「le19M」や、名門のメゾン ルザージュ刺しゅう学校(Ecole Lesage)、文化施設「ギャルリー・デュ・19M(la Galerie du 19M)」がサポートする。
同プログラムでは、毎年6人の学生を選び奨学金を支給する。イギリスのグロスターシャーにあるチャールズ国王の私邸ハイグローブ(Highgrove)にプリンス財団のトレーニング施設があるが、その一角に「シャネル メティエダール トレーニングアトリエ(Chanel Metiers d’art Training Atelier)」を新設。プログラムに参加する学生は、アトリエの職人による刺しゅうやビーズ細工などの実技クラスのほか、体系的に学べる座学などを受講できる。
初回は1月末にすでにスタート。スキルアップと教養にフォーカスしながら、クリエイティブな実践を積み、刺しゅうの技術を磨く24週間の集中カリキュラムだ。「シャネル メティエダール トレーニングアトリエ」を拠点に、パリの「le19M」で授業を受ける機会もあるという。
伝統的な美術や工芸、園芸、建築、デザインなどの分野で活動する幅広い年齢層の人々に、教育・訓練プログラムを提供しているプリンス財団のエミリー・チェリントン(Emily Cherrington)=ディレクターは、「世界的な業界のリーダーである『シャネル』とのパートナーシップは、チャリティーに関わる全ての人にとって非常に素晴らしい体験になる。私たちのサステナビリティと工芸品への情熱を、『シャネル』と『le19M』の文化や専門知識と結びつけることで、ハイエンドなアトリエでの実践に向けた、クリエイティブで実用的なスキルを幅広く身につけられると期待している」と述べた。
シャネルは2002年から、刺しゅうや羽根飾りなど芸術の域にも達する職人技をふんだんに取り入れたプレタポルテの“メティエダール コレクション”を発表している。ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネルSASプレジデント兼「le19M」プレジデントは、この教育プログラムの取り組みを「期待値の高い教育パートナーシップ」と説明する。「私たちの長年のビジョンは、メティエダールの専門的なスキルを開発および発展させると同時に、若者を採用して育成し、サヴォアフェール(受け継がれる職人技術)を次世代に伝えていくことだ。このプログラムは、伝統的な手仕事が現代に生きていることを伝え、未来の創造性へと続いていくことを確かにする手段の一つであり、職人技、革新、持続的な発展にコミットする当社の姿勢を示すものでもある」と語った。